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【天と繋がる数時間】

4年前、引っ越しを終えて1人アパートに残るとき、不安そうな顔をしていた長男は、卒業式では素晴らしい仲間に囲まれ今までの人生で一番とも言える笑顔で自信に満ちていた

母子家庭で子ども3人を育てるのはなかなか甘くない現実もあり、たいした支援も殆ど出来ない中、自分の力で生きていくことに向き合わされた大学生活であっと思う

しかし、大学の先生方、仲間たち、
祖父母など親戚などの助けを得て、
コロナ禍であっても過酷な中、自分に向き合い続けた4年間だったのだと思う

私自身は、大学生のとき、入学はしたものの自分がわからず決して幸せとは言えない葛藤の4年間だった
勉強、学歴があっても必ずしも幸せにはなれない、それが大学卒業のときの私の感想だった

一体、何が足りないんだろう
私が欲しいものはなんなのか?

その答えを探して自己啓発に辿り着き
今に至る

本当に大切なのは自分に向き合うこと
自分の軸でしっかりと生きていくことだとわかったのは40才を過ぎた頃だった

子どもたちには同じ思いはさせたくない

その思いを胸に子育てをしてきた

自分軸で生きられる子にするコツはシンプルである
自分で選んで自分で決める、そこに責任を持たせる
その積み重ねをするだけ
そこに関しては妥協をしないこと

長男と私は意見がぶつかることが多く
つい先月も喧嘩になり、下の子たちに愚痴っていたところだった

しかし、「我を折れ、自分から頭を下げろ」という恩師の教えの元、自分が怒り続けることは違うなと態度を改めることにした

式の後、ゼミの集まりがあるからと
大学の門まで私を送ってきた長男は
「ありがとう、今度、新しいアパートに遊びに来てよ」と今までに見せたことのない笑顔で言った
一緒に食事をしても殆ど喋ることもない長男がこんなことを言ったのは初めて聞いた
「わかった、卒業、おめでとう」

不覚にも泣きそうになった私は、長男に
言葉を返すと足早に駅に向かった

次男の前では平気で泣く私だが
何故か長男の前では泣けないのだ

駅に向かう途中、空を見上げたとき
夫のことが頭を過った

「パパ、あのとき1年生だった子が、ここまで育ったよ」

雨予報の中、卒業式の時間だけ晴れていた空は、やがてまた雨空に変わっていった

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