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昭和の話~恐るべし1円詐欺

ふと思い出した事。
私がまだ小さい頃の話。

ご近所さんの家で「1円バザー」という催し物が行われるということで、みんなが集められた。
多分、20人以上は集まったと思う。
家の中はぎゅうぎゅう詰めで、子供は中に入れて貰えなかった。
他の子供達はすぐに諦めて居なくなってしまったが、好奇心旺盛な私は窓から家の中をずっと見ていた。
たわし、タオル、小鍋…色んな商品らしき物が沢山並んでいた。
中央に居るおじさんが
「これ、欲しい人~!」
と商品を持った手を上に上げると
「は~い!」
とみんなが手を上げている。
「じゃあこれ、どうぞ。」
とその中の何人かに配る。
お金は払ってないようだ。
1円バザーって言ってたけど、0円バザーじゃん!って私は思いながら見ていた。
タダで貰えるんだ~すごいなぁ。
そんな事が何度も繰り返され、みんなの手元にはたくさんの商品が。
みんなはすごく楽しそうでめっちゃ笑顔。
でも私はその家の家主のおばさんの表情を見て、子供ながらにちょっとゾッとした。
あんなにわかりやすい、しめしめの顔をテレビ以外で初めて見たからだ。
何か企んでる!?

私の母もその中に居た。
沢山の商品を手に入れて満足げだ。
その時、中央のおじさんが何やらデカい商品を取り出した。
今までにないデカさ。
それも沢山!
「これ、欲しい人~!」
「は~い!!」「は~い!!」
我先にと前のめりになって手を上げるみんな。
端に居る人から順番に配られ始めた。
そのデカい商品は、ほとんどの人の手に渡った。
しかし、うちの母はなぜか貰えなかった…。
必死に手を上げ続ける母。
商品は無くなってしまった。
「なんだ~、お母さんは貰えなかったじゃん。ガラクタばっかり貰ってさ。」
と残念に思ってたら、母が血相を変えて飛び出して来た。
「帰るよ!」
と言ってなぜか2人で走って帰った。
「どうしたん?何でそんな慌てて帰るん??」

家に着いてから母に聞いた話によると、最後に配ったのは電化製品で(確か電気座布団??とかだったと思う)保証書付きだから住所と電話番号と氏名を記入してね~って紙を渡され、みんなサインをしたらしい。
だがその紙は保証書なんかではなく、何十万円もする商品の契約書だったようだ。
商品を貰えなかった母は契約書にサインをすることもなく、気付いて怖くなって逃げ出したようだ。
母曰く、あの中で自分だけ若かったからお金が無いと思って意図的に配らなかったんじゃないかって。
後、お年寄りの方が泣き寝入りすると思われたんじゃないかって。
その後はどうなったのかわかりません。
ただ、噂であの家の家主のおばちゃんは詐欺師達とグルで礼金を沢山貰ったらしいと聞きました。
あの時のしめしめの顔の意味がわかり、子供ながらに妙に納得したのを覚えています。

 ご近所付き合いの少ない、令和の今ではあまり考えられないやり方かも知れません。
古き良き昭和の時代だからこそ、成り立った詐欺かな?

ふと思い出した話でした。

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