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美しい彼〜エターナル〜

酒井麻衣氏監督作品、萩原利久氏、八木勇征氏W主演の「美しい彼〜エタナール〜」を見てきた。

映画の予告の映像が本当に綺麗すぎて、「あ、これみたいかも」と思っていた今作。
ドラマ版を母から勧められてシーズン1、2と視聴し、念願の映画へ。

原作が「流浪の月」の凪良ゆう氏ということもあり、きっと感情表現が美しいのだろうなと期待を高めながらシートに座る。

あらすじ

「何度だって俺は君を探して、何度だって恋をする。それが俺の……永遠だ」
高校生の時に一目惚れして以降、ずっと憧れの対象だったキングこと清居奏と、晴れて恋人となれた平良一成。
平良の家で同棲までするラブラブカップルの2人だが、平良は清居に対しての崇拝思考が抜けず、ちょくちょく清居のことを傷つけてしまう。 
自分のことが好きすぎるが故に、無神経な平良に振り回されっぱなしの清居は、事務所の先輩であり、ドラマの共演者である杏奈と内緒の恋バナ中。
そんな時、杏奈が人気アイドルの1人と熱愛というスキャンダルが世間に公表されてしまう。
彼女を心配する清居と平良だったが、2人も大きな事件に巻き込まれていく。

以下ネタバレあり感想


とにかく美しい映像

予告の段階から思っていた「この映画綺麗だなー」という感想は、結果的にいうとドンピシャで当たっていた。

冒頭の平良と清居がベットに寝ているシーンからすごく綺麗。
青の透かしのあるサラサラした布(母が布の名前を言っていたけど忘れた。バーガンディ?これは色か)が2人を包んでいて、そこに綺麗な顔を2人が横たわっている。

これだけでもう十分満足できるくらい美しい。
美しい彼って題名だけど、もう美しい“彼ら“だよね。うん。

お風呂で2人で入ってるシーンとか、布団の中で事に及びそうになるシーンとか、あと最後の2人の濃厚キスシーンとか、そういう性をモロに現すシーンは、鑑賞者の目を釘付けにして離さない官能さと、魅惑さが入り混じっていて、すごく美しかった。

ちょっと恥ずかしくなって、思わず手で顔を覆う(でも指の間はしっかり開いてる)くらいの、エッ‼︎なシーン。
でも、変に生々しさとか、男性同士の恋愛に対しての偏見とかは全く感じられず、平和で爽やかな描かれ方をしている。
(この間みたエゴイストとはいい意味で真反対の性描写がされていた)

エッ‼︎なシーン以外も、例えば杏奈が写真を撮るシーンとか、2人が高校の校舎に侵入して、最後水浴びをするシーンも、エモさと美しさが融合していて、キラキラした映像にとても感動した。

柔らかくてキラキラしていて爽やかな印象のある映像。
なんとなくだけど、すごく女性的な印象を受けた。

禁断の恋

この映画というか、物語を通して「禁断の恋」っていうのが裏テーマにあるんじゃないかなーと私は密かに思っている。

男性同士の恋愛だったり、人気アイドルと女優の熱愛だったり。

以前読んだことのある凪良ゆう氏の「流浪の月」も犯罪者と加害者(本当は違うけど、便宜上こう表現する)の禁断の関係性を描いているし、元々BL作家さんだし、こういうまだまだ周りからは受け入れられ難い関係性を描く事に長けてる人なんだろうか?

以前書いた「流浪の月」レビュー↓

さて、ではこの禁断の恋という話だけど、私のスタンスとしては、どの恋も人様に迷惑をかけてないのにどうして隠さなきゃいけないのかなーといつも思っている。

こんなことを言うと、芸能人の方々は、ファンに夢を売ってる職業だからーとか言う輩がいる。

でも、あくまで夢見てるのはファンが一方的にみてるのであって、芸能人の方々は自分の「芸」を提供してるだけだと思っている。

歌にしろ、演技にしろ、表現にしろ、何かしらの芸を提供してる仕事の人ってだけで、プライベートはその人となにも何の関わりも無いけど……と常々考えているのだけど、どうなんだろう?良い子ちゃんすぎ?

また男性同士の恋愛についても、なぜここまで受け入れられないのかよく分からない。
背が低い人、高い人、可愛い人、綺麗な人、スタイルがいい人、グラマラスな人、年上年下タメ、人それぞれ好みがあるうちの一つとしてカウントされるだけで良いのでは無いだろうか?と思っている。

むしろ自分が今恋愛感情というものにかなり疎遠だから、相手が誰であれ、誰かを好きと言える状態が素敵だなぁとすら思う。

もっと自由に誰かを想い、想い合える時代が来れば良いのになーと映画を通して感じた。

「同じ紙の裏表」

「自信がないのも、ありすぎるのも肥大した自意識という点では、同じ紙の表と裏なんだよ」

「美しい彼〜エターナル〜」/野口大海のセリフ

この台詞がこの映画の中で印象に残った。
記憶の中のセリフを思い出して書いたものだから、曖昧だけどおおよそこんな台詞だったと思う。

これが凪良ゆう氏の書いた台詞かどうか、まだ原作を未読なのでわからないけれど、もしそうだとしたら、凪良氏は人間の本質を捉えるのが本当に上手いなぁと思う。

しかもそれをたった一言ほどで表現してしまうのだから天才としか言いようがない。

あ〜早く原作が読みたい!!!

さて、そんなセリフを言われた平良だけど、これは確かにそう。

清居のこととんでもなく好きで好きで仕方ないんだけど、実際の清居のことは振り回してばっかり。
清居に尽くしてるのは、尽くしてるんだけど、平気で清居が傷つくような言葉を悪気もなく言うところは本当に自己中心的。
結局のところ清居を1人の人間として好きってよりかは、神格化した自分の中の清居が好きなんだと思う。

だけど、清居が過激な杏奈のファンに拉致られた時に助けにいって犯人フルボッコにしたり、映画の最後の方で純粋な恋と愛の形を見て、一皮向けた平良。
それからようやく清居をちゃんと好きな人としてカメラのレンズを向けるって展開はすごく良かった。
最後のキスシーンにもちゃんと重みあったし、一気に男になった感じ。

ナヨナヨしていてか弱そうように見えて、実はすごく自分勝手で漢らしい平良の性格を的確に言い表していたセリフだった。

「好きだから」という何よりも強い力

好きって気持ちが、結局1番強い。
そして、怖い。

好きだから、不安になる。
好きだから、ムカつく。
好きだから、我を忘れてしまう。

杏奈のことが好きで好きで仕方ない設楽は、杏奈と清居の熱愛報道をみて、清居を誘拐してしまう。
そんな清居を助けたい一心で、平良はとことん設楽をボコボコに殴る。

始まりは好きというポジティブな感情なはずなのに、それぞれ暴力的な行動に出てしまうのは、好きと言う感情のコントロールの不能さが成すところ。

破壊的で、暴力的で、莫大なエネルギーを秘めている好きと言う気持ち。
持ち主である自分ですらコントロール出来ない好きという気持ちが、結局美しい。

最後に

この作品の題名の英訳が「MY BEAUTIFUL MAN」ってあって、ちょっと違和感があった。

美しい彼なら、MYではなくTHEではないだろうかと。
平良目線で清居のことを言ってるのだとばっかり思っていたから。

でもドラマから映画まで見て、2人が晴れて恋人になったことで「あ、この美しい彼はお互いのことを想い、お互いが相手の美しい彼と思ってるんだなー」と感じた。

だからMYなんだなと。

美しい映像と、美しい愛の形を堪能したい貴方に、是非。

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