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間の悪い眠り姫
ふと目覚めたとき、あたりはまだ真っ暗で虫と鳥と雑草が大演奏会を行っている最中だった。
手探りで携帯を探す。
それはすぐそばにあった。
1:30
ぼんやりと光る画面にはそう表示されていた。
変な時間に起きた。
昨日は21時に横になったはずだから、4時間半くらいしか経っていないはずのに、目はぱっちり開いていた。
困った。
どうにか二度寝をしようとしても、一度覚醒した脳はいろんな感覚や刺激を受けとり、忙しそうに活動する。
それは目を瞑っても、いや、力強く瞑れば瞑るほど過敏に受け取ってしまうようだった。
仕方なくもう一度、目を開け私は携帯の画面を開く。
1:32
ずいぶん頑張ったつもりが、たった2分しか経過してない。
もうこうなれば二度寝するのは、至難の業だろう。
私は掛け布団を剥ぎ、リビングに向かった。
たまにこうやって変な時間に目覚めることがある。
再び目を閉じてもすぐに眠れないときは、こうやってすぐ寝室から出ることを心がけている。
布団の中にいるときは、なるべく寝ていたほうがいい。
横になるだけでなく、きちんと睡眠活動を行ってなければならない。
そうじゃないと、体がここは寝る場所と学習してくれずに、ダラダラと過ごしやすい場所として認識してしまい、そこから不眠のループがあっという間に形成されてしまう。
だから私は、眠れないと思ったら潔くそこから離れる。
リビングにつき、ポットに適当に水道水をいれ、スイッチを入れる。
その間に棚の中からお気に入りの紅茶の茶葉を棚から取り出す。
今日は、SAKURAにしよう。
もう季節違いの桜の匂いと風味が味わえるこの紅茶は、まだ冷え込む夜中の静かな空間でリラックスするのに、ちょうどいい。
あっという間にお湯は沸いて、私はそれをティーポットの中に入れた。
程なくして桜の甘く爽やかな匂いがティーポットを中心に広がった。
読みかけの本──村上春樹氏著書の「騎士団長殺し・上巻を手に取って、ソファに腰掛ける。
お気に入りの紅茶を淹れた、お気に入りのティーカップ。
熱々のお茶で火傷しないよう慎重に啜りながら、本の世界の扉を開く。
クラッシックなんかかけたりして、私は文字の羅列で構成されたその世界へ意識を溶け込ませる。
桜の香りがほのかに香る空間で、私はのんびり眠り姫を待つことにした。
さて、どのくらい時間が経っただろう。
500mlほど入っていたティーポットはもう既に空になっていて、本は100ページほど進んでいた。
ふと時計を見ると3時半を指している。
瞼はちょうどよく重力に従い、頭はぼーっとし始めた。
やっと来たな、眠り姫。
私は再び布団に入った。
そして気づくとカーテンの隙間から眩しいくらいの朝日が差していて、時計は7時10分をすぎたくらいだった。
もう少し寝てたい。
しかし、出勤の時間が迫ってる。
しょうがないから、眠い目擦って無気力にも布団から体を引き剥がす。
ほんの数時間前まで、あんなに目が冴えていたのに。
なんだか夜中の出来事が遠い昔のように思える。
あぁ、君は本当に、間が悪い奴だ。
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