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ピンクの試練

5月20日から5月21日はPayPayドームにて、“ピンクフルデー“が開催されている。

文字通り、この日はPayPayドーム内のありとあらゆるものがピンク色に染まる。
食べ物、飲み物は当たり前で、選手が着るユニフォームもダイアモンドのベースも、ひいてはコカコーラシートのヘルメットまで、全てがピンク色だった。

それでそんなピンクフルデーでは、そのピンクに染め上がったピンクユニが来場者全員にプレゼントされる。

ほとんどこのユニフォーム目的でいった私は、「とりあえず席はどこでもいいや〜」と適当に4000円くらいの席をとった。

それがホークス応援シートで、応援団がすぐそばにいる応援ガチ勢の席ということを忘れて──。

☆☆☆
 

ご飯と飲み物を買って、席についた私は一回の表、西武ライオンズの攻撃を見ながらのんびり観戦していた。
ピッチャーが東浜巨選手で「ノーノーいったれ!」なんて呑気に思ってた。
そして、0点で終えた一回表。
次はホークスの攻撃ってところでみんな立ち始める。

え?
なんで?

そこからが試練の始まりだった。

先に言っておくと、これは私が完全に勉強不足であり(今までホークス応援シートに座ったことはあるけど、コロナ禍で立って応援したり、大声での応援が規制されてたから知らなかった)私が自分でこの席を選んだ訳だから、勿論この応援スタイルのことを否定、批判するつもりはない。
むしろ、応援を盛り上げてくれるありがたい方々だ。
私が不甲斐なかっただけ。

つまり、私はあまりにも野球の応援というもの舐めていた。

応援団の代表が拡声器で応援の音頭をとり、それに合わせて観客は立って、手拍子をして大きな声で選手の応援歌を歌ったり、掛け声をかけたりと忙しない。
しかも、応援によって手拍子じゃない時がある。
これが厄介。
例を挙げてホームランコールのは「ホームラン!ホームラン〇〇!(選手名)」と言いながら手をくるくるさせるし、もってこいコールの時は「もってこい!もってこい!〇〇!(選手名」といいながら両手を胸元までゆっくり仰ぐ。

そして、その応援は本当にコロコロ、コロコロ変わる。
だから、あーやっとコツ掴んだわーと思って慣れ始めた時に全然違う応援に切り替わったりする。
だからよく間違う。

これまだ誰かと一緒に来てたら「いや間違ってるし〜」って笑ったり楽しめたり出来るけど、私1人なんよ。
しかも、初心者。てか、初めて!
応援に集中すると、今度は試合に集中出来ない。
それで試合に集中すると、今度は応援についていけない。

私、ニツノ事、同時ニヤルノ無理ネ。


応援初心者オブ初心者かつ、ぼっちでインキャのか弱い乙女のメンタルは、ホークスの攻撃が始まるたびに荒波に削られた海岸のようにすり減っていき、「こんな事なら多少高くても普通の内野席をとっとけばよかった……、帰りたい……」という気持ちをすくすく育てていった。

それでもまだ、推しの栗原陵矢選手の活躍が見れたし、彼が画面に映る度に「てかカッコ良すぎるて」とハッピータイムに入れたから良かった。負けたけど。

それでようやく、試合が終わった。
というか終わる前に美容室の予約の時間が迫ってる事を良いことに、逃げるようにして帰った。

野球観戦はもちろん好きだし、熱い応援も好きなんだけど、1人であそこに挑むには、私のレベルはあまりにも低すぎた。
初期装備で魔王城にいって勝てる勇者がいないように、まずはありとあらゆるミッションやダンジョンをクリアしないと、あそこには挑んではいけない。

☆☆☆

これが、ピンクフルデーにあまりにも無惨に散った、1人のボッチの話であった。

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