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ふたつの旅展

久留米市美術館でやってた「ふたつの旅展」に行ってきた。

久留米出身の画家、青木繁とその親友坂本繁二郎の作品を、2人の歩んできた人生と共に振り返るというもの。

もともとこの2人の画家は知っていた。
以前同じ久留米市美術館であった大地の力という展覧会でも2人の作品は出てたし、何だってあの山田五郎氏のYouTubeに青木繁が紹介されていたから。

山田五郎の大人の教養講座↓

それに今回は、あの国の重要文化財の【海の幸】さらには、個人的に青木繁最高傑作だと思っている【わだつみのいろこの宮】までくるというのだから、行かないわけにはいかない。

というわけで中に入る。

以下展覧会感想


青木繁と坂本繁二郎

さて、展覧会では坂本と青木の出会った頃から2人の明暗が別れ、そして非業の死を遂げた青木と、青木の死後も精力的に活動した坂本晩年の作品が贅沢に飾られてあった。

まず1人ずつ見ていこう。
まず青木の作品。
“海の幸“を私は初めて生で見たわけだが「思ったより小さい」と言うのが最初の印象だった。
決して「小さい絵」と言う訳ではないけれど、その絵の迫力とタッチから等身大以上にもっと大きなキャンバスに描かれてると私は思い込んでいた。
ということは、実際の何十倍何百倍のパワーを持ってしてそこに存在しているというわけで、青木の当時のイケイケぶりが伝わってきた。
そして、心待ちにしてた“わだつみのいろこの宮“
水が透き通る感じ、登場人物の美しさ、光の描き方、それぞれが巧みに重なり合っていた。
神秘的な心癒される作品で、夏目漱石が絶賛したのも頷ける作品だった。
誰かさんが三等末席扱いしたのは何故?
その他、恋人のたねの描き方も実に可愛らしく、繊細に描かれていて本当に好きだったんだなーと当時の青木の恋心に想いを馳せてみる。

さてお次は、坂本繁二郎
青木に比べて、坂本に対する印象はそこまで強くなく、なんとなく「絵が上手い人」って印象だった。
それは実際に絵を見てても、そんなに変わらなかったけど、最後の馬の絵を前に足が止まる。
その独特の淡い色使いが、可愛らしく漠然と好きな絵だなと思った。
感想が薄っぺらく恐縮なのだけど、それは直感的に感じたのだから仕方がない。
それと、坂本が奥さんをモデルに描いた絵も、なんだか良かった。
それは日常の何気ない質素な暮らしの場面だったけど、見ているとちょっとワクワクするような作品だった。
何故かは分からない。
なんか好きだった。

圧倒的に印象に残ったのは、青木の作品だけど今こうしてふと思い出してみると真っ先に思い浮かぶのは坂本の馬の絵。

インパクトの青木と、ジワジワくる坂本
まるで2人の人生みたいだ。

青木繁、最期の言葉

最後に青木の遺言とも言えるこの言葉に触れておく。


「骨灰は、ついでのときに高良山の奥のケシケシ山の松樹の根に埋めてください。 小生はあの山のさみしい頂より、思い出多い筑紫平野をながめて、この世の怨恨と憤懣と呪詛とを捨てて、 静かに永遠の平安な眠りに就きたいと思います」
青木繁が友に託した遺言

何故青木が最後、放浪の旅の末に結核という病気で野垂れ死んでしまったのか。
なぜたねと愛する我が子を置いていってしまったのか、真相は分からない。
でも最期のこの青木の言葉をみて、青木は凡人には計り知れない数々の思いや、価値観を背負って生きていて、いろんな感情に支配されて生きた人なんだと思った。
そんな孤高の彼だからこそ、未完でも重要文化財になり得る大作を描けたのだと、同情しつつも羨ましさもちょっぴり。

時に自分を高め、時に自分を切り刻んでしまう恐ろしい剣、それが才能なのだとしたら、それは本当に神様からのプレゼントなのだろうか?


展覧会もう終わってるけど↓

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