[感想メモ]違国日記 ※ネタバレ含む

※ネタバレを含みます



新垣結衣さんが主演の映画であること、コミュニケーションの苦手な小説家であること。
最低限の情報だけで、見てみたい、という気持ちになってチケットを購入した。
前回の経験が忘れられず、なるべく情報を入れずに鑑賞。

↑前回の経験

起承転結のはっきりした物語というよりは、地続きになっている、誰かの人生の一部を切り取ったような映画だった。
まず、それぞれの登場人物の余白、というか、明示的に描かれていない面が多い印象を受けた。
映画の中では、ポスターにも写っている主人公である槙生と、姉の娘である朝の2人が中心となっている。彼女たちを含め、出てくる人達は、それぞれ悩みを抱えている。その悩みや、出てくるキーワードは今時の「多様性」を想起させるものが多いけど、実際のところ、どうなのかはすべては分からない。
あくまでキーワードや発言から、「そういうものなのかも」と私が推測しているだけで、本人の口から出た言葉じゃないと、分からないよね。
分かった気になって、勝手に解釈していることって多そうだなと改めて感じた。
槙生が朝をはじめとした、他人と関わる時のスタンスとして、「自分の感情は自分だけのものである」「誰かに変えられるものではない」「他人のことは理解できるものではない」というニュアンスのものがある。一見冷たく、壁を感じるような言い方だけど、作品を見終わった後だととても腑に落ちた。
そういうものだし、それでもいいよね、と思えた。

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朝の目線で見ると、学生時代の「柔らかな年頃」に、だめな大人と関わる経験が私も欲しかったなあ。色んな仕事や生き方があると分かっていても、それを情報として知っているのと、経験として知っているのはまた違う。
狭いコミュニティのなかで、親や先生はまるで自分がなり得る大人の代表のように見えるんだろうな。どんなに情報に溢れていても。

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わたしにとって、とても好きな映画だった。
「良い」ではなく、「好き」だと表現したくなるものだった。コミュニケーションが苦手でも、相手のことが理解できなくても、自分なりに人と関わってみたいと思えた。