講演「原発回帰のGX法案を廃案に!」
講演「原発回帰のGX法案を廃案に!」学習会のレジュメ
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2023 年 5 月 27 日国際環境 NGO FoE Japan 満田夏花
原発回帰の GX 法を廃案に
「GX 推進法案」と「GX 脱炭素法案」
①GX 推進法案は 5 月 12 日に可決成立
②GX 脱炭素電源法案(束ね法案)はすでに衆議院で可決。現在、参議院経済産業委員会で審議中。
5 月 23 日経済産業委員会と環境委員会の合同審査。
5 月 25 日参考人質疑。このままでは 5 月 30 日にも委員会採決?
経緯
• 2022 年 7 月 27 日、第1回「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、岸田首相が原発推進方針を打ち出す。
• 8 月 24 日、第2回「GX 実行会議」で、岸田首相は、原発の「7基追加再稼働」や原発の運転期間の延長、次世代革新炉の建設による原発の新増設やリプレースの検討などについて、関係省庁に検討を指示
• 10 月 5 日、原子力規制委員会の山中委員長は、原発の運転期間は「利用」政策であるとし、運転期間上限を定めた原子炉等規制法の規定を削除することを容認。
• 12 月 21 日、原子力規制委員会にて「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案) 」(=運転期間を延長することを前提とした規制の概要)が了承される。
⇒パブコメ(一般からの意見の公募)(1 か月)
パブコメ総数 2016 件 多くが運転延長に反対意見
• 12 月 22 日、GX 実行会議で、「GX 実現に向けた基本方針(案)」が了承される。
⇒パブコメ(1か月)
パブコメ総数 3966 件 多くが原発推進に反対意見
• 2023 年 2 月 8 日、原子力規制委員会において石渡委員が原子炉等規制法から運転期間に関する規定を削除すること、運転期間から停止期間を除外することに反対。この日、原子力規制委員会は、運転期間を延長することを前提とした規制の概要の決定を見送る。
• 2 月 9 日、FoE Japan など、運転期間の延長に反対する署名 75,214 筆を提出
• 2 月 10 日、「GX 実現に向けた基本方針」「GX 推進法案」閣議決定
• 2 月 13 日、原子力規制委は、石渡委員の反対を押し切り、運転期間延長を前提とした規制の概要を決定。
• 2 月 28 日、運転期間延長などを含む「束ね法案」閣議決定
GX 推進法案の問題点
(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案)
1. 原子力産業を官民資金で支援
政府がすでに閣議決定している GX 基本方針の中には、原発の着実な再稼働やそのための理解醸成に国が前面に立つこと、次世代革新炉の開発・開発建設、人材育成成、事業環境整備、核燃料サイクルの促進などが含まれる。「GX 推進法案」はこの GX 基本方針を実現するための法案となっている。「GX 脱炭素電源法案」とあいまって、長期にわたって原子力産業を国が支援し続けることになる。
2. 経済産業省への白紙委任
第 6 条で、「政府は GX 推進戦略を定めなければならない」としており、これに基づき進められる。GX 推進戦略は経済産業省が案を作成し、閣議決定する。
20 兆円規模の「GX 経済移行債」の発行、「GX 推進機構」による金融支援や債務保証などにより、150 兆円規模の官民の GX 投資を生み出すとしている。資金の行先は、「GX 推進戦
略」に基づくため、事実上、経済産業省が巨額の官民の資金の行き先を決める。
「GX 推進機構」は経済産業大臣の認可法人であり、業務計画、財務・会計などは、「経済産業省令」によって定められる。
3. 脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
GX 投資に関して、温室効果ガスの削減効果、環境人権配慮の基準がない。化石燃料由来の水素・アンモニア利用も支援する内容であり、結果的に温室効果ガスの排出量は削減されない。1.5℃目標、グラスゴー合意、G7 コミュニケとの整合性がない。
4. 将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する
大量の GHG 排出を行っている大手電力などを支援する内容となっている。財源は、国債発行
(GX 経済移行債)などで賄われるが、将来的に炭素賦課金などで回収する。最終的には電力
消費者、すなわち国民が広く負担する内容となりかねない。5.資金の流れが不透明
「GX 経済移行債」による資金の使途が経産省への白紙委任になっている。また、「GX 推進機構」がブラックボックス化し、国会によるコントロール、監視、検証ができない。
GX 脱炭素電源法案*の問題点
*「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」という名称で国会にかけられている。
原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの。
1. 非民主的・不透明なプロセス
GX 基本方針について、パブリックコメントが行われ、3,966 件が寄せられた。しかし、その内容については GX 実行会議で検討されたわけではない。国民の声が反映されていない。
束ね法案では、個別具体的な審議を行うことができない。
原子力基本法の改正案については、いつ、どのような検討が行われたのか不明。
原子炉等規制法の改正案に関して、本来所掌している原子力規制委員会ではなく、経済産業省が主導して改正案を策定した。経済産業省の担当者と規制庁との事前打ち合わせ
資料に「安全規制が緩んだように見えないことも重要」という記載があった。
2. 原子力基本法:「国の責務」を詳細に書き込み、原子力産業を手厚く支援
改正案では、以下のように「国の責務」(内容的には国による原子力産業への支援)を詳細に書き込んでいる。
第二条の二において、「国は、エネルギーとしての原子力利用に当たっては、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用することによる電気の安定供給の確保、我が国における脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進及びエネルギーの供給に係る自律性の向上に資することができるよう、必要な措置を講ずる責務を有する」とした上で、同第2項において、「原子力施設が立地する地域の住民をはじめとする国民の原子力発電に対する信頼を確保し、その理解を得るために必要な取組及び地域振興(中略)推進する責務を有する」とし、さらに第二条の三において、人材育 成、産業基盤の維持および強化、事業環境整備などを定めている。
「再エネ特措法」など他の関連法において、ここまで詳細に「国の責務」が書かれているものはなく、アンバランスが著しい。「原子力」のみを特別扱い。
本来、原子力事業者が自らの責任で実施すべき内容を、国が肩代わりすることになる。結果的に原子力事業者を救済する内容となる。
「GX 脱炭素電源法」は「原子力産業救済法」!
3. 原子炉等規制法の運転期間に関する現行規定を削除する理由がない
原子炉等規制法の改定において、現行の運転期間を原則 40 年にするという規定(第四十三条の三の三十二)を削除しようとしている。
2012年当時、運転期間上限に関する定めは、「規制」の一環として原子炉等規制法に盛り込まれた。このことは、今国会において岸田首相も答弁している。その後、運転期間の上限を撤廃する理由となる、新たな事実が生じたわけではない。
政府は、運転期間の上限について「利用側の政策」として整理したと説明し、その根拠として、原子力規制委員会の令和2年7月 29 日の文書をあげている。しかし、この文書の主旨は、運転期間から長期停止期間を除外することに否定的な見解をまとめたもので
あり、策定過程において、運転期間の上限の撤廃の可否について委員の間で議論が行われたものではない。
4. 運転期間の認可を規制委から経産省へ移す:安全規制の緩和
運転期間の上限に関する規定を原子炉等規制法から電気事業法に移す。原発の運転期間の延長については、経済産業大臣が認可を行う。利用上の観点からの判断となる。
政府は、原子炉等規制法に 30 年を超える原発の劣化評価を規定することにより、規制は強化されるとしている。しかし、従来から、30 年超の原発に対する 10 年ごとの劣化評価は、高経年化技術評価として行われてきた。今回、これを法律に格上げすることになるが、基本的には、従来の制度の延長線上。
老朽原発の劣化評価についての具体的な審査手法や、岸田首相の求めた国民への「わかりやすい説明」の内容は、現在原子力規制委員会で議論されているが、60 年を超える原発の実運転データは存在しないこと、「設計の古さ」への対応は困難であることなど、課題が山積。
5. 「運転停止期間の除外」は合理性がない
今回、電気事業法に運転期間の延長に関する認可が移されるが、①関連法令の制定・変更に対応するため(新規制基準による審査など)、②行政処分、③行政指導、④裁判所による仮処分命令、⑤その他事業者が予見しがたい事由――によって運転停止を行っていた期間については運転期間に上積みできることになる。
運転停止が事業者にとって予見できない事由に起因するものであったとしても、経年劣化は進行する。上記の期間を運転期間に上積みできるという合理的な理由はない。
#原発 GX 法を廃案に! 参議院前連続行動に結集を!
5 月 29 日(月)18:30-19:30
5 月 30 日(火)18:30-19:30 場所:参議院議員会館前
主催:国際環境 NGO FoE Japan、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室、さようなら
原発 1000 万人アクション、許すな!憲法改悪・市民連絡会、Fridays For Future Tokyo