連載小説 魂の織りなす旅路#21/差異⑵
【差異⑵】
商店街から人気のないひっそりとした横道に入ると、ブルブルブルッとバッグの中のスマホが震えた。スマホを開くと画面上部に「今から会えないかな?」の文字。彩夏(あやか)だ。
私 いいよ
彩夏 相談にのってもらいたいことがあって
彩夏 ゆっくりうちで話したいの
私 了解!
彩夏 大学の正門に着いたらLINEして
私 はーい
彩夏は大学近くのアパートで、一人暮らしをしている。大学では一緒にいることが多いが、アパートを訪ねるのは初めてだ。正門に着いてLINEをすると、彩夏はすぐにやってきた。
「ここからすぐなの。3分くらい。」
大学は閑静な住宅街にある。アパートは噴水の水音が耳に優しい、手入れの行き届いた小さな公園の隣にあった。エントランスと自室の両方がオートロックになっている。ドアを開けた彩夏は照れくさそうに、
「どうぞ、狭いんだけど。」
と私を招き入れた。
彩夏は差異が小さいので、言葉や態度をオブラートに包んで表現する必要がない。こんな風に一緒にいてほとんど疲れない友達は、大学では彩夏だけだ。
「この部屋に友達を入れたのって初めて。」
彩夏は照れくさそうに言いながら、テーブルに置かれたマグカップにコーヒーを注いだ。
「なんかね、耀だったら、こう、もやもやしているものをふわぁって、取り除いてくれるんじゃないかと思って。冴羽さんがね・・・」
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