『生き方』稲盛和夫
経営者なら誰もが知っている名著を読んでみた。
環境が変わってあまり上手くいってないときに読むのがよいと思う。
上手くいっていてチヤホヤされているときに読んで身に沁みて理解できる人は人格が優れているのだと思う。
これは私の感想・解釈だが、他者からいかに認められるかという承認欲求ではなく、自己理解と自己統合、そして自立をせねばいつまでも幸せにはなれない。そんな風に言われているように感じた。
意外にも、自分の意志で生きていると思っている人が承認欲求でがんじがらめの人造人間になっていたりする。
特に嫉妬や憎悪、義憤が原動力になってきた人は読んでみてほしい。名著と言われるだけあってヒントを得られるはず。(4章、5章は私ごときだとピンとこなかったのでまだまだ未熟なのだろう)
①思いを実現させる
自分の心が強く求めたものだけが実現できる。
何か事をなそうと思ったら、まずこうなりたい、こうあるべきだと思うこと。
誰よりも強く、身が焦げるほどの熱意をもって、そうありたいと願望することが何より大切になる。
きっかけはパナソニックの松下幸之助の公演だったという。
ダム式経営の重要性を説いたところ、
ダムの作り方を具体的に教えてくれと不満を言われたことに対して、
「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけども、ダムを作ろうと思わんとあきませんなあ」
稲森和夫は重要な真理を突き付けられたようで電流が走ったという。
思うことの大切さ。
ただし、願望を成就させるために並ではダメ。すさまじく思うことが大切。
狂っているほどに強い思いとすさまじい願望を持続させ、潜在意識にまでしみ込ませなくてはならない。
「完成形からプロセスまでを細部までカラーでリアルに思い描け」
思いを実現させるのは強烈な願望である。
完成形がカラーで見えてくれば、強烈に願望しているといえる。
もう少し詳細に道筋を説明すると、こうなればいいということを強く思い、さらに実現までのプロセスを頭の中で真剣に、こうしてああしてと幾度も考え、シミュレーションを繰り返す。何万通りも考えるように何度も何度も達成への過程を模擬演習し、うまくいかない部分は練り直してみる。このように思い、考え、練っていくことをしつように繰り返していると成功への道筋があたかも一度通った道であるかのように見えてくる。
ただし、白黒で見えるうちは不十分。イメージを濃縮した現実の結晶として、カラーで見えてくるようになるまで物事を強く思い、深く考え、真剣に取り組まなくては、創造的な仕事や人生での成功はおぼつかない。
簡単にいうと、見えるものはできるし、見えないものはできない。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」
有名なフレーズ。
アイデアや構想を描くときは大胆で楽観的に広げるべきというのは、自分の中に完成形がカラーで見えていて、できる確信があってこその考え。
計画を立てる際にはあらゆるリスクを想定し、慎重かつ細心の注意を払って厳密にプランを練っていく。
そして、計画を実行する段階になったら、再び楽観論に従い、思い切って行動する。
臆病さ、慎重さ、細心さに裏打ちされていない勇気は単なる蛮勇にすぎない。
逆にいうならば、否定的なことを考える心が、否定的な現実を引き寄せる。
人の力では抗えない宿命ではなく、運命は心のありようによっていかようにも変えられる。
東洋思想ではこれを立命と表現している。
新しいこと成し遂げられる人は、自分の可能性をまっすぐに信じることができる人。
自分の可能性を信じて、現在の能力水準よりも高いハードルを自分に課し、未来の一点で達成すべく全力を傾ける。常に思いの火を絶やさずに燃やし続けることが必要になってくる。
経営の本やセミナーはこのような方法論を説いているが、最も重要なのは完成形からプロセスまでを細部までカラーでリアルに思い描くことではないだろうか。
大多数の人がこう言うのが聞こえてくる。
「そんな夢見がちな…思っただけでできるなら苦労しないよ、それより何をどうすればいいか教えて。誰でもわかるようにシンプルにわかりやすく」
だから、いつまで経ってもできないのではないだろうか。
もちろん方法論は絶えずアップデートしていくし、誰よりも実践していく前提だが。
②原理原則から考える
経営とは「人間として何が正しいのか」という原理原則に従う
経営は実はシンプルである。
「人間として何が正しいのか」極めてシンプルな判断基準。
つまり、嘘をつくな、正直であれ、欲張るな、人に迷惑をかけるな、人には親切にせよといった子どものころから教えられてきた人間として守るべきルールといった当たり前の規範に従うべき。
経営だからといって何か特殊な魔法があるわけではなく、人間が人間に行うことなのだから、人間としての古来の原理原則に外れたものではないってことですね
事業の原理原則は、会社の私益やメンツにあるのではなく、社会や人の役に立つことにある。
例え損をしようが確固たる哲学に基づいて起こした行動は決して損にはならない。長期的にみれば、一時的な損でも必ず利となって戻ってくる。例に出ていたのは、不動産バブルの話。
成功できるかどうか、本物の生き方ができるかどうかの分水嶺は、損をしてでも守るべき哲学、苦を承知で引き受けられる覚悟が自分の中にあるかどうかになる。
ただ何事も「言うは易く行うは難し」であって、貫いてこそ意味がある。慣れてきたら些細なことであれば原理原則に反したことをしてしまうのが人間の弱さ。原理原則は正しさや強さの源泉である一方、絶えず戒めていないと忘れがちなもろいものである。だからこそ常に自分の行いを自省自戒することさえも、生きる原理原則に組み入れていくことが大切。
人生の方程式:人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
考え方というファクターがもっとも重要。
仕事が嫌で嫌でしかたがなくても、もう少し頑張ってみる。
そのときは自分に打ち勝つことが重要。利己的な欲望を抑えること。自分を甘やかそうという心をいさめること。
何事も成し遂げることはできない。
③心を磨き高める
日本人が失ってしまった美徳の一つに謙虚さがある。
謙虚さをいつも失わないでいることは凡人には至難の業である。
努力し、実績を積み上げてきたのだから、有頂天になり、慢心が心の隅に顔を出してくるが、
私が有している能力、私が果たしている役割が私だけの所有物である必然性はない。
たまたま私に与えられたものであり、私はそれを磨く努力をしたにすぎない。
天からの授かり物、いや借り物でしかないと内省自戒をする。
したがって、どんなに優れた才も私のために使うものでありません。
おのれの才を公に向けて使うことを第一義とし、私のために使うのは第二義とする。
能力に恵まれた人たちがなぜ不祥事や汚職を起こすのか。
才を私物化しているからである。
「徳高き者には高き位を、功績多き者には報奨を」by西郷隆盛
リーダーの選び方は才覚や能力ではなく、人格で選ぶ。
考え方=生きる姿勢、つまり哲学や思想、倫理観などをすべて包含した人格
心を磨くための六つの精進
1.誰にも負けない努力をする
人よりも多く研鑽して、継続する。
2.謙虚にして驕らず
謙虚な心が幸福を呼び、魂を浄化させる。
3.反省ある日々を送る
日々の自分の行動や心のありようを点検して、利己的になっていないか自省自戒する
4.生きていることに感謝する
生きているだけで幸せと考え、どんな小さなことにも感謝をする
5.善行、利他業を積む
善を行い、他を利する。思いやりのある言動を心がける。善行を積めばよい報いがある。
6.感性的な悩みをしない
不平不満をいうヒマがあれば、後悔しないように取り組む。
この本には書いてないが、1985年に日本電信電話公社が民営化し、現KDDIの前身である第二電電ができたときに稲森和夫がトップになったのだが、立ち上げ構想の初期(正確には2回目の会食)から参加していたリクルート創業者の江副浩正を「江副くんはまだ早いんじゃないか」と幹部から外したという。江副の危うさを感じたというが、まさに当時、土地高騰のバブル絶頂でリクルートコスモスが土地を買い漁っていた。また、AmazonのAWSやGoogleと同じ構想を海の向こうの彼らがやってのけた10年も前に江副は考えていた。こういったことから、稲盛は得体のしれぬ不気味さを感じていたのだろうが、偉人に対して恐れ多いが、江副の才能を活かそうと大所高所から助言する師となろうとするような器ではなかったのかとも思う。日本が世界から遅れをとったのは一つここからなのかもしれない。
④利他の心で生きる
ビジネスの原点も他を利するところにある。
私欲はほどほどにして、人のために生きなさい。
人としてよい生き方をしなさいってこと。
仏教的教えがもとになっている。
私利私欲にまみれている私にはまだよくわからない。
⑤宇宙の流れと調和する
素粒子から原子、分子と善き方向へ向かわせようとしている。
森羅万象あらゆるものを発展させよう、生きとし生けるものを善の方向へ導こうとする宇宙の意志に調和する。
上手くいっていてウハウハなときはこんな考えになるんだが、正直意味不明である。私が未熟なのだろう。
ただ一つ予想するのは、この道で生きると決めて専門性を尖らせていけばいつのまにか周りに敵はいなくなればこんな考えにいたるはず。
<まとめ>
とはいえね、稲森和夫さんが聖人君子だから、その弟子も聖人君子かといえばそうではない。盛和塾という稲盛さんの教えを学びたい経営者の会があるのだが、ここの会員の経営者が利他の心を都合よく解釈し、自社の利益しか考えてないような行動を取っているということも耳にする。現場を直接見たわけではないのだが、誰かに憧れたり、教えを請うのは悪いことではないが、自覚のない深層心理のドロドロしたところに「楽をしたい」欲求があったら、とたんに悪性なものに変わってしまうのだろう。結局は、誰かの教え、有名な企業に所属、ブランドなどでは人は変われない。突き抜けたかったら徹底的に自分と向き合い甘えをなくすことなのだろう。
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