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メガテン4F全体から感じる開発スタッフの熱量【クリアレビュー】

シリーズファンの中でも名作と名高い真・女神転生4 FINAL。
発売日に買ったもののプレイできず、気がついたらこんなに時間が経ってしまいました。

一念発起でプレイしてみたら、めちゃくちゃ得るものがある作品だと気づいた。

思ったことや気づいたこと、スタッフたちの裏側を妄想しながらのゲームレビューです。

※一部ネタバレ有り。
【評価点】の項目から要注意。

プレイフィール

4からの正統進化であるということ

何がFINALなんだ。

タイトルで損してると思う。頭空っぽにして楽しんでほしい。
4をプレイしていない人は読み飛ばしてください。

4にがっかりした人に向けて、FINALと銘打ったのかもしれない。
洗練されてないシステム周りを見直して、メガテンらしさに寄せたのが4Fだ。下馬評だけ聞きつけてプレイすると「なんでこんなの持ち上げてるんだ」となりかねない。
4Fを推す人の中には一定層「4にがっかりした人」がいると思う。
そういった声も一部紛れていることは、評価を下す上で留意したい。

3DSでメガテンをしている

真3以降のメガテンが3DSに収まってる。この感覚だと思う。

フィールド画面。頑張ってるよね。

大事な要素が削られた……というわけではなく、携帯機でもしっかりと遊べる、というのが触った印象。
「携帯機かぁ」とか思ってると、嬉しい誤算があるかも。

パツパツに詰め込まれた想像力

新機軸で捉え直したんだな、というスタッフの気概を感じた。

真3は変わった切り口から大きなスケールの話を描いていたと思う。
創世というものに真っ向から取り組んだ。いわば、現実味がない創世だった。

ちゃんと創世記してたのよ、実は。

真4は違う切り口から大きな箱庭を描いたんだと思う。
東のミカド、ガイア教団、阿修羅会。
対立構造や勢力を明確化し、複数の組織がぶつかり合う様に悪魔の侵略をぶつけた。
客観的に見ると混沌そのものなんだけど、混沌すぎて全容が掴めない。結構混乱する作り。

登場人物は多め。初回プレイ時は何がなんだかだった記憶。

4Fはわかりやすい共通の敵を置きつつも、そこから展開したお話だから飲み込みやすい。少し難解な展開もあるけれど、でもラスボスのオチは好き。

そういう意味では、別なテイストとか、新しい情報ってものに逃げず、「一神教」に対して腰を据えて考え直してくれた作品ではあった。

もちろん、「一神教に喧嘩を売るのがメガテン」みたいな浅はかな結論は出したくない。
でも、メガテニストの中には、そういった認識を持ってる人がいるはず。

というかメガテンの世界観にどっぷり浸かった人ほど、LAW勢の胡散臭さには笑って付き合いたい人ばかりなはず。心のどこかで馬鹿にしてんのよね。

マンセマットの胡散臭さを笑って許せたら、キミもメガテニストの仲間入りだ。

そういったニッチな需要を絡め取って、満足感のあるプレイ体験を届けてくれたことが、4Fの功績だったんだと思う。現に僕も満足できた。
以下、ネタバレが含まれます。ご注意。

評価点

魅力的なストーリー

4Fを語る上で、忘れてはいけないのが魅力的な設定やストーリーだと思う。
真2に心酔したファンは、やっぱり一神教に対して、四文字に対して、腹に一物持ってると思う。

四文字の悪口を言うと、閣下が味方になってくれる。こんな思考回路で頭混沌な人もいそう。僕のことです。

4FはそういったアンチLAW、アンチ一神教ポジの需要を満たしてくれていた。
それと同時に、一つの疑問も解消してくれた。

「なんで他宗教は黙ってんの?」

アンチLAWの筆頭がルシファー。これは理解できる。
でもそれは、ユダヤキリスト世界での対立に留まるばかり。

これまで散々シヴァ様のお世話になっておきながら、「ヒンドゥー勢力の気持ち」なんか考えたこともなかった。

だからこそ、「多神連合」って話が出てきた時にハッとした。
あ、そっすよね。そりゃ皆様怒ってらっしゃいますよね。

クリシュナを筆頭に、本編ではトリックスターの役割を果たす多神連合。
彼らの動向を追ったり、警戒したりしながらストーリーを進めるのは結構楽しかった。

ギリギリわかる概念バトル

まず宇宙の卵って概念好き。宇宙ごと作り直す概念が好き。

だいたい法の神が悪い。

こんな感じで、そもそも宇宙の大いなる意思がメガテンの黒幕。
他にも「大いなる理」「大宇宙の意志」とか表記ぶれは色々あり。

宇宙の大いなる意思とかいうママ。おぎゃ。

メガテンのラスボス=法の神のイメージが強いけど、実はそうじゃない。
法の神自体も、大いなる宇宙が創った一部でしかない。
それなのにナンバーワンだと思ってる驕りよ。どこからその自信が来るんだ。

だから、本当の意味で「自由」とか「解放」を求めるとなると、宇宙単位で世界を作り変える他ない。大いなる宇宙の意志すら拒絶する必要があるから。

「せや、宇宙の卵で作り直したろ!」

誰がわかるんだよこんなん。

どうしても「宇宙=科学」のイメージがあると首を傾げたくなるけど、でも、「宇宙=魔界」みたいに解釈すると理解しやすいかも。よくわからん未開の地っていう認識で。

このスケール感が嫌いじゃない。
真2で法の神を倒すシナリオまで作ってしまったら、それ以上はないのよね。あとは本当に大宇宙の意志を引っ張ってくるか。誰が想像できるんだよ、そんな高度抽象概念。
その中で打ち出した考え方としてはすごく好き。宇宙を作る発想とか。

ダグサの思惑とかもかなり好き。
「人に定義される」=「神格が下がる」はおもろい。
確かに自然のままの方が強いよね、君たち。
人猿如きの想像力に貶められたら可哀想。なるほど、悪魔や神性を何通りも解釈しようとしたから出てくる発想だ。

あとは神殺しの発想。
これは4F独自の設定なのかもしれないけど、結構納得した。
「神同士の戦争が封印で決着」→「人を使って本当に殺そう」
うん、人が介入する意味が生まれてくるよね。確かに。

スケールが大きくなるにつれて、人間が介入できる余地が小さくなってくると思う。
極端な話、「ルシファーとメルカバーの戦いに人間如きが何もできないじゃん」は一般人の感想。本当にそう思う。作中でもモブが言ってるし。
だから、「観測」っていう概念で人を介入させたのは面白かった。
でもきっと、こんなの面白がってるの僕だけだと思う。その自覚は大いにある。

皆殺しルートの価値

久しぶりに震えた。プレイできてよかった。

メガテンの看板使わないとできないことだよね。
本当にこのカタルシスをみんなに味わってもらいたい。

真4は人間のエグみを押し出した作品だと思う。
汚らしさ、狡さ、醜さ、そういうのをあぶり出していた。
でも、そういった要素はサブクエストにとどまっていたように思える。
つまり能動的にアクセスしないと辿り着けない場所に用意されていた。赤玉は別だけど。

4Fはそれをど真ん中に持ってきてくれた。
だから、感想が収束するんだと思う。皆殺しルートはえぐいって。

このルートの名前を聞いた時、4Fへのプレイ意欲が湧いた。めっちゃ湧いた。というか、皆殺しルートが気になりすぎて4Fをやった。

その上で思った。胸が痛すぎる。

皆殺しルートやるためにプレイしてるのに、そのルートから逃げたくなるってどんな心境?
なんだか久しぶりに揺さぶられました。P4のルート選択ばりに揺れる。
裏切る選択肢をした後に、一人ずつ手にかけなきゃいけないのがさらに胸にくる。キャラに愛着がなかった僕でも思うところがあった。

これをいつかペルソナでやってくれたら……って思うとゾッとする。
ゾッとしてにっこりする。絶対やらないと思うけど。やってくれてもいいよアトラス。

こういう体験がRole Playing Gameなんだと思う。

あの時の僕は、まさにダグサのコマとして人類に仇なす存在に成り果てていた。選択の重さが没入感を決める。最後の最後でこんなの選ばせんな。最高かよ。

そして最後に待ち構えるのは……

お前だ。

安心したよアトラス。この路線でたくさんやってくれ。

個人的には第二形態が好き。
観測の力でのしあがった法の神が、観測の力によって弱体化する展開。

ここは綺麗だよね。
神性の限界っていうか、アトラスの人間讃歌を感じる。

ぶっちゃけ、道中は退屈な部分もあると思う。
でもラストで全部持っていってくれた。
すごい楽しいゲーム体験だった。

だからこそ、以下不満点です。

不満点

全体的な迫力不足

これに尽きる。別に3DSで出す必要はなかったでしょうと。
ここを残念に思ったから、僕はきっと真5に満足してる。

まずはバトルの迫力に欠けること。

バトルに迫力がないのよ。物足りないのよ。

真3、アバチュと遊んできた身としては、プレスターンなら3Dバトルがいい。
これは僕のわがまま。だから気にならない人は気にならないと思う。

バトル画面が紙芝居だと、仲魔への愛着も薄れる。

比べるもんじゃないけどね。でも、満足感が違うよ。

真4でも言われていた批判だけど、仲魔がただの数値に見えてしまう。
4Fで個性づけがなされたとはいえ、僕にとっては根本的な変革ではなかった。

僕はきっと、メガテンのどこかに「ポケモンっぽさ」を求めているんだと思う。
そういったユーザーのニーズは満たされなかった。これが残念。
逆にいえば、SFC三部作とかDSJの方が好きな人は気にならないかも?

3DSというハード

いまやると結構きつい部分がある。
というか、携帯機としてのSwitchの完成度に驚く。あれ、すごく操作しやすいのね。

加えてオンラインサービスも終了しつつある。
ハードごとオススメはしにくい。「4Fやるためだけに3DS買った!」は現実的じゃない。

加えて、売上もあまり芳しくなかった。

中古の流通本数も少ないし、ネットショップは2023年3月に閉鎖。
入手難易度は跳ね上がる一方。きっとリメイク移植も絶望的。
なぜ3DSで出したんだ。いつか3DS難民を救ってくれ、任天堂。

結局のところ、「3DSとしては」という評価に落ち着く。
「携帯機のメガテンなら」も同様。枕詞は常に付きまとう。

発売当時なら別にいいと思う。売れるハードで出すべきだし、売れたもん勝ちだ。会社的には。

でも、時間が経った後でやりたいプレイヤーとしてはそんなの関係ない。
4Fの出来映えを聞きつけて「やってみたい!」と思った人に共通する感情がある。

「3DSかぁ」

ここは明確な不満点だ。
これは僕らのわがままだ。ゲーマーの悪いところだと思う。売れなきゃ始まらないんだから。
4Fの出来がいいからこそ思う。残念。悔しい。4F難民を救ってくれ任天堂。

癖の強い人間キャラ


アサヒちゃんが可愛い。あとは、うん。

真4系の特徴として、人間キャラに存在感がある。

結構出番がある。というか人間模様に揺られてストーリーが展開する。
それをどう思うかで終盤までの評価が分かれる。

僕は鬱陶しかった派。
そんなに好きになれるキャラもおらず、強いていえばダグサが好きだったぐらい。
きっとガストンとかハレルヤとかは人気なんだろうなぁ、と思いつつも愛着が持てなかった。

日常パートは退屈に感じたし、中途半端なラノベ感に嫌悪感。この人間模様が面白くなくて興味が持てない。
やるならもっと突き抜けたキャラでもよかった。それかアサヒと二人きりでもよかった。
キャラに対する評価はこんな感じ。それでも胸抉られる皆殺しEDとは。

連戦

細かい不満点。
バトルは結構辛め。メガテンだから当たり前かもだけど。

個人的に許したくないのは連戦の多さ。

歴代と比べても連戦がきつかった記憶がある。特にイナンナとミロク。お前ら許さんからな。初回なら楽園(無料DLC)でもいいかも。
今日日、わざわざ旬じゃないゲームを高難易度でやる意味なんてないしね。

※追記
一番ムカついたの書き忘れた。
渋谷のキウン。お前のことは絶対に許さない。
絶対にだ。怪電波とかいうクソ技を許すな。絶対に許すな。

閣下の扱い

別にあなたが嫌いなわけじゃないんですけどね。

メガテン作品の中で、真4は唯一閣下の名前が出ても嬉しくない。
デザインがどうのじゃない。変えないでほしい。そのままにしてくれ。わがままで害悪ファンな自覚はある。でもやめてくれ。本当に。

フジワラ、メルカバー、ルシファーで会議とかどんなネタ?
想像したら笑っちゃった。もっと万魔殿の中でどっしり構えて欲しかった。
使い魔に任せるとかあったはず。真2はゴモリーとかいたじゃん。
歴代の中でも真4系は威厳がなかったような印象。閣下LOVEな僕としては残念。

総評

全体を通して、スタッフの想像力の底力を感じた。
「面白いものを作ろう」っていう気概はあちこちに感じた。
言語化できないんだけど、プレイしてて伝わるものがある。多分4Fを遊んだ人ならわかるはず。
その熱量がネットでの声の大きさに繋がってると思う。僕は結構捻くれてる方だけど、「4Fいいよね」って言われたら素直に頷ける。

ここまでたくさん語っておいてなんだけど、僕は4Fがそこまで好きじゃない。
これは完全に好み。主観だからどうにもできない。というか真4系列に思うところがある。それでも4Fのファンの気持ちはわかるし、4Fのよかった点は理解してるつもり。

「ガッツリディープで手を出しやすいメガテン」として、4Fは金字塔になり得ると思う。実際、僕も友人に勧める。おもろいよって。
4Fを遊んだことで、僕がメガテンに求めていたものがわかった気がする。

いやー。
ファン商売って大変ですよね、アトラスさん。
めんどくさくてごめんなさい。みんなその自覚あると思います。
今後ともよろしく。

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