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和歌山県西牟婁郡でのドローンと可視光による農地センシング

今回は、修士1年生 近藤さんが、和歌山県西牟婁郡 井戸本農園さんにご協力頂いて行った実験について紹介します。
(上記写真 (左)修士1年生近藤さん、(中央)井戸本農園 井戸本さん、
(右)学部4年生山田さん)

前回の記事と同じスマート農業に関わる研究ではありますが、山田さんの研究とどう違うのでしょうか。

近藤さんは、主にどんな研究をされているのですか?

私は、農地からのセンサデータ収集方法に焦点を当てた研究を行っています。ドローンを活用し、農場の状態をきめ細かく、準リアルタイムで把握するシステムを研究中です。私の研究では、農地にセンサデバイスを設置し、ドローンを用いて農地の温度や湿度などのデータを収集します。どのようにしたら効率よく信頼性のあるデータを収集出来るのか?どんな環境でもデータを収集する事が出来るのか?に焦点を当てて研究を行っています。

前回の山田さんの研究は、センサデバイスから収集したデータを、どのように可視化・表現するか?という課題に着目しています。私の研究はその前段階として、センサデータの取得方法に焦点を当てています。

現状のスマート農業では、1つの畝や農地に対して、1~2個のセンサデバイスの配置が普通です。なるべく多くのセンサデバイスを設置して、作物の生育状態をきめ細かく確認することも考えられます。ただ、それが一般的でない理由の一つが、センサデータを送信するための通信モジュールや回線費用が高価であることです。

今は電波を使った無線通信を活用したセンサデバイスが主流ですが、私の研究では、可視光通信(OCC)を活用したセンサデバイスを使用します。
(OCCとは?→https://note.com/nakayama_lab/n/n9a40f09728db
OCCでは、データ送信に安価なLEDパネルを使用するため、電波を使った無線通信に比べて、全体的なコストを下げる事ができます。その結果として、たくさんのセンサデバイスの設置が可能になり、よりセンシングの密度を高めることができます。あくまで通信手段を開発しているため、センサの種類は問わず利用できる点もメリットです。温度、湿度、土壌水分量、照度など、作物や環境に合わせたセンサを適用できます。

また私の研究では、センサデバイスから送出された信号を、ドローンによって受け取ります。農業用ドローンによる空撮や薬剤散布などの取り組みが広がっていますが、これをセンサデータ収集にも活用してしまう、という考え方です。OCCの通信距離は、電波などと比べると短いのですが、ドローンが飛び回って撮影・収集することで、広範囲のデータを集めることができます。従来よりも多くのセンサデバイスを活用する事で、今までと比べて高密度なモニタリングが可能になります。そうしたモニタリングに基づいて、より適切な管理を実現できれば、生産効率向上に寄与できると考えています。

実験でドローンを使用している風景

この研究は、将来どんなことに役立つと考えていますか?

まず1つ目は、農地での高密度なデータを収集できる事です。
高密度なデータとは、多数のセンサデバイスを設置することで、取得できる多くの細かなセンサデータを表します。それにより、生産性が向上し、品質の高い作物を育てられる可能性が広がります。
2つ目は、センサデバイスの活用により、農家の方々は空いた時間に他の作業に集中出来るようになります。センサデバイスの活用方法次第では、農業が副業として出来る可能性もあるのかもしれない、と考えています。

研究のことをお話してくれる近藤さん

スマート農業の研究を通して学んだことは何ですか?

私は農業の一般的な流れは家族での継承だと思っていましたが、井戸本農園さんでは法人化を視野に入れており、家族以外でも引き継ぎやすくなる経営を検討されています。農業就業人口の減少理由の1つに、若い人の農家継承意欲の低下が理由としてあげられているのは知っていましたが、法人化することで血縁関係なく引き継げるメリットがあるということを教えて頂きました。法人化を実現するためには安定した利益が必要になるので、井戸本農園さんでは年中作物を育てています。現状では農家は個人事業主が多く、農業を始めるのは難しいと感じる人が多いと思いますが、法人化が成功すれば農業も一般の職業としての選択肢になる可能性があるということも教えて頂きました。日本の農業の現状を変えるためには、井戸本農園さんが行っているような様々な工夫を行っていく必要があるということを肌で感じました。そして研究をする上で忘れてはいけないのは、スマート農業のシステムを使うのは農家さんであるという事です。システムの開発では、実際に使って頂く農家さんの視点になって考える事が何より大切で、実際に伺ってお話を聞く、現場を知る大切さを痛感しました。

今回実験にご協力頂いた井戸本農園さんでは、主にお米・レタス・枝豆・高菜を栽培されています

スマート農業の研究は、農家さんのご協力が無ければ成立しません。
今回の実験では、井戸本農園さんにたくさんのご協力とご支援を賜りました。

和歌山県西牟婁郡! おすすめグルメ!

実証実験では、井戸本農園の井戸本さんをはじめ、
周りの農家の方やJAの方々に、大変お世話になりました。
通常、他の地域の学生が、農家の方に実験を協力していただけること自体、とても珍しくありがたいのですが、食事に連れて行っていただけるなど、
たくさんのおもてなしをして頂きました。

和歌山県西牟婁郡で頂いた美味しかったものをご紹介させて頂きます。

① おおみや(〒649-2103 和歌山県西牟婁郡上富田町生馬 3115-1)
https://sobaoomiya.net/shop

山奥の方にあるお店で、近くにとてもきれいな川がありました
おそばと一緒に、めはり寿司という高菜を使ったお寿司をいただきました
井戸本さんが作った高菜ではなかったのですが、上富田町の名産らしく、とても美味しかったです

②  酒菜処 Sushi hide(〒646-0031 和歌山県田辺市湊9−15)

とても新鮮なお魚ばかりでとても美味しかったです

③    口熊野食堂(〒649-2103 和歌山県西牟婁郡上富田町生馬748−3)
https://www.kuchikumano-shokudo.jp/

見た目はこってりしていそうなのですが、とてもあっさりしていて食べやすかったです

④ 炉ばた処 とっくり(〒646-0031 和歌山県田辺市湊11−23)

お刺身が新鮮で、今まで食べた海鮮の中で一番美味しかったと言っても過言ではないくらいでした食感は もちっとしていました。お酒も美味しく、最高でした

最後に「中山研究室の魅力とは?」

多くの研究室に見られるのは、1つの研究内容を、皆で取り組むというパターンです。しかし中山研究室が他の研究室と異なる所は、たくさんの研究の幹があるという所です。
研究を進めるにあたって、困る事、躓く事はたくさんありますが、違った分野を研究している仲間がいるからこそ、違う知見が得られ、そこから解決策のヒントをもらえるという事は多くあります。

また中山研究室では、大学外での活動にも積極的に参加できます。今回私の研究に協力して下さった井戸本農園の方をご紹介して下さったのも、幕張での展示会でご縁を頂いた方々です。中山研究室では、様々な分野の方が、私達学生の研究に携わり、サポートして下さっています。このような方々と日々関われ、研究を進められるという点は、中山研究室ならではの魅力だと感じています。

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