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【偏愛音楽館1】太田裕美「さらばシベリア鉄道」

太田裕美さんといえば、ぼくが1975年に生まれて間もない頃、アパートの下の階から「木綿のハンカチーフ」が延々リピートされていたという話を親から聞かされていました。

そうすると、本人的には記憶になくても、どこか親近感を持つわけですが、アップルミュージックやSpotifyのおかげで過去の音楽にもアクセスしやすくなったおかげで、太田裕美さんの曲もよく聴くようになりました。

はっきり言って、CDの時代だったらそういうことはなかっただろうと思います。

楽曲を聴いていると、太田裕美さんというのは、中性的というか少年っぽい歌い方をされるなと思います。

「木綿のハンカチーフ」でもそうなのですが、特にそれが際立つのが今回ご紹介する「さらばシベリア鉄道」だと思います。


「さらばシベリア鉄道」は、1981年にリリースされた大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』の中の一曲です。

100万枚を超えるセールスを記録したこのアルバムにあって、ぼくはこの曲はいいなぁと思っていました。

古びたところを感じさせず、何回でも聴いていられるのだけど、その大瀧詠一ヴァージョンに慣れた耳で、太田裕美さんのカバーを聴くと、これがまた輪をかけていいのです。

曲も歌手も、良くなっている。(ちょっとおおげさか)

矢野顕子さんが人の曲をたくさんカバーされていて、それに感化されてぼくもカバー曲をあれこれ聴くようになったのですが、カバー曲とかライブ音源もオリジナルに負けないくらいいいものですよ?

なにがいいって、まだうまく言えないのだけど、ひょっとしたら新しい発見があるからなのかなぁとか思っています。


実は、「木綿のハンカチーフ」と「さらばシベリア鉄道」は、心がうまく通わなくなった二人が、手紙を通してお互いの心情をのぞかせるという共通したテーマがあります。

はっきりした結論はどちらにもありません。

ただ「木綿のハンカチーフ」が、最後に別れを予感させるのに対し、「さらばシベリア鉄道」は、いまは遠くロシアを旅する女性と、いつまでも待っているという男性がいて、手紙の使い方や場所や季節や時間を使った二人の距離感覚は、作詞家の松本隆さんらしいなと思ってしまいます。

ちなみに「さらばシベリア鉄道」では、女性が明日もわからぬ悲愴な旅に出ているのに、男性はこの期に及んで「照れて」とかのたまっています。(あかんやーーん)

でも、松本隆さんの雪とか冬という言葉の中には、寒さの中にある温かさをほのめかしているそうなので、やはり「いついつまでも待っている」という男は、優しさのかたまりなんだろうなと思います。

いまでは手紙を使ったやり取りは、なかなか見ることができないのですが、決して古びないのは、古典のような感じで想像できるからじゃないかと思います。

ある種の普遍性をもつということですね。

大瀧詠一さんのヴァージョンでは、メロディーに気を取られるせいか、歌詞の意味までしっかり把握できていなかったのですが、太田裕美さんの歌だとよく理解できました。

「木綿のハンカチーフ」を思い出したからかもしれません。

別の切り口から曲を聴くことができるカバーならではなのかなとも思います。

先ほど中性的で少年っぽいと書きましたが、そういう声や歌い方が、この「さらばシベリア鉄道」にハマったんじゃないかという気がします。

少女漫画や宝塚歌劇を思い出すんですね。

女を演じる男よりも、男を演じる女の方が、理解や共感を得やすいという法則でもあるんでしょうか。

そうでもないか。


とりとめもなくてすみません。



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