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黄金湯の物語:2021~現在

みんなでお風呂を沸かしてみる!

渡辺由起子さんが黄金湯経営を辞める=黄金湯がなくなってしまう。
黄金湯が、人と人とをつなぐ地域の交流拠点としての「黄金湯」になってきたのは、その中心に渡辺さんがいたからこそ。
みんなそれがわかっていたから、「渡辺さんが辞めたら、黄金湯はなくなる。それは仕方ないのかな・・・」と思っていました。

だけど、だからこそ、渡辺さんと周りのみんなによって育てられてきた黄金湯を残したい。
自宅にお風呂がない人もいる、家にお風呂があっても洗うのが大変で、家では入れないお年寄りもいる、お風呂自体は家で入れるけれど、それでは寂しいから銭湯に行くという人もいる。
黄金湯がまだこの町で必要とされているなら、誰も1人で黄金湯を継ぐ力がないなら、町のみんなで黄金湯を運営していけないだろうか・・・。

そうして黄金湯は、2021年11月1日、渡辺さんによる営業終了から約3週間後に、住民団体が運営する銭湯として、2回目の復活に漕ぎつけました。

黄金湯”再”復活を知らせる『新・黄金湯通信』No.1_2021年10月号

営業再開時は、運営団体の名前も何も決まっていない状態でした。
とにかく雪が降り始める前にお湯を沸かし始めないと、お風呂の設備が壊れてしまう。一度壊れれば、もう二度と、黄金湯は沸かせなくなるかもしれない・・・。
まずはお風呂を沸かし始めること。
細かいことは、それからみんなで考えていこうと、見切り発車でスタートした新・黄金湯でした。
その後、「中頓別をあっためる会」という運営団体を立ち上げ、有志の町民で、お風呂掃除から経営管理までを担う銭湯として、現在に至っています。

「みんなでやること」の難しさを感じながらも・・・

「みんなでやること」は、もしかしたら、誰か1人が明確な経営者となってやるよりも、難しいのではないかと思います。
「黄金湯」をきっかけに集まったメンバーでも、元を辿ればみんな他人。育ってきた環境も背景も、考え方も違います。
意思決定がうまくいかなかったり、運営メンバー内ですれ違いが生じたり、しんどいなぁ…と思うことも、正直とても多いです。

それでも、運営ボランティアを募集したら、今までまったくつながりのなかった町の人が手を挙げてくれたり、遠い地域から風呂掃除を手伝うために駆けつけてくれる人がいて、「頑張ってね」と声をかけてくれる地域の人がいます。

『新・黄金湯通信』No.2_2021年12月号
黄金湯運営ボランティア募集のお知らせ

いまの黄金湯の運営のやり方には、良い面も悪い面もあるけれど、
「地域の公衆浴場を住民団体で運営してみる」ということに挑戦させてもらえている。
そのこと自体がとても貴重な体験であって、最終的にどういう結果になったとしても、この町にとっても、関わった一人ひとりにとっても、大事な経験になっていくのではないかと思います。

あと何年、中頓別の黄金湯を沸かしていけるのか、
これから黄金湯はどうなっていくのか。
運営している私たち自身もまだわからない『新しい黄金湯の物語』。
読者のみなさんと一緒に楽しみながら、そのページを少しずつ捲っていけたらなと思っています。