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雑感64 詩を書く

 「こんなものは、詩じゃない。詩というものは……」
 大阪文学学校の詩の講座に、初めて参加したときに言われた言葉だ。詩が何を表現し、どんなものかもわからずに書いた詩を、評された日を今でもよく覚えている。
 この評をもらって、また詩を書いてみようと思うまでに一年。コロナ禍が広がって、でもまだコロナウィルスが非日常だと思われていた時期だった。もう一度詩を提出してみようと思ったのは、最初の評をくれた人に直接会わなくても済みそうだからだった。
 その時の講座は開かれず、作品への講評が載ったプリントが送られてきた。わたしの作品には、「ポエジーで良い。もっと工夫を」
 そこから、いくつか書くようになった。何とか及第点のものも、箸にも棒にも掛からぬものも。評をくれた人とは冗談を言えるようになった。
 
 「ハートのねぎ」も、詩の講座に出したものである。いくつかの課題はあるが、何とか読めるレベルにはあるらしい。

  この詩に出てくるシーンは、なに一つ事実はない。ねぎを切りながら、空想で作った詩である。現実にあったことを詩に綴っただろうと思われているが、父から料理を出してもらったことはない。
 間違った解釈でいいのかと問われれば、わたしはそれでいい。本当にあったことだと思われるほどに自然な形なのであれば、小説を書く者としてはうれしいことだから。

 最初の評から二年半。詩の世界を、少し深く探ってみたい春がくる。

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