夢路いとし・喜味こいし「舞鶴見て歩き」

いとし：大阪からこの舞鶴へ来るのも、便利になりましたねぇ

こいし：便利になったねぇ。福知山まで走っていた舞鶴自動車道が、この四月に、舞鶴まで走るようになりましたからね

いとし：今、君は何を言うた？

こいし：舞鶴自動車道が舞鶴まで走るようになった言うとんねや

いとし：へー、自動車道が走るとはねぇ、私は、自動車道の上を車で走るのやとばっかり思てました

こいし：車が走るねや！！

いとし：舞鶴自動車道のええとこは、何と言ってもアレで走れるとこやね

こいし：アレで走れるて？

いとし：アレやがな、脳イッケツでもなし

こいし：脳イッケツで走ってどないするねん！

いとし：脳ザショウでもなし・・・君の嫁はんの親父、何で亡くなった？

こいし：脳コウソクや

いとし：高速で走れるとこやね

こいし：なめとんのかい！

いとし：舞鶴・大阪間が一時間半で走れるらしいけど、私の車ではちょっとそれは無理ですわ

こいし：なんでや、アクセルを一杯に踏んだら走れるやろ

いとし：そんなことしたら危ないがな、私の車のアクセル、君のお尻の肉と同じやで

こいし：・・・それどういうことや？

いとし：押して離した後、元へ戻るのに二分かかるねん

こいし：アホな！まあしかし、舞鶴と言えば、港が素晴らしいね

いとし：本当、私は舞鶴が懐かしい

こいし：懐かしいて？

いとし：私、漫才やる前、舞鶴の港でマルボシをやってまして

こいし：マルボシ！？

いとし：マルボシやない、マドロスをやってまして

こいし：えらい違いや

いとし：マルボシやってたら、食べられて今頃おらへんがな

こいし：・・・ほな昔、君は舞鶴の港をマドロス姿で歩いてたわけや

いとし：そう、縞々のジャケツに三度笠

こいし：三度笠って、そら股旅や

いとし：パイプ咥えて、口笛吹きながら、よう歩いたもんや

こいし：・・・パイプ咥えて口笛吹けるか！？

いとし：中舞鶴の波止場を歩いてる時に、大きな男とぶち当たりまして

こいし：ホー、君のこっちゃ「ごめんなさい」言うて道を譲ったわけやな

いとし：譲るかいな、その頃の私は海の男やで、海の男は気が荒いねや

こいし：ほな、君、どうしたん？

いとし：「そこをどかんかい、僕は海のオオカミだ！」

こいし：・・・恰好ええなぁ、相手どう言うた？

いとし：「海のオオカミがなんじゃい、わしゃ山のゾウアザラシだ！」

こいし：山のゾウアザラシて！

いとし：それでこわなって、マドロスやめて、君と漫才組んだんや

こいし：ほんまかいな！ところで君、舞鶴という名前はどこから付けられたか知ってるか

いとし：どこから付けられたん？

こいし：この街に、田辺城跡てあるやろ

いとし：ふんふん、公園になってましてね、行きましたけど、良かったね

こいし：どういうとこが良かった？

いとし：あそこで、五百円玉拾てね、それが良かった

こいし：・・・ほかにも良かったとこあるやろ！？

いとし：美しい公園やったね

こいし：その田辺城というのが、当時、鶴の舞うような姿をしてたらしいねん

いとし：なるほど、鶴が舞うから舞鶴

こいし：そう、鶴が舞う姿から舞鶴

いとし：ほな、君とこの嫁はん舞トンやな

こいし：舞トン？

いとし：買い物に行く時、いつも、豚が舞うような姿で歩いてるがな

こいし：ほっとけ！・・・まあ田辺城跡もええけど、舞鶴の中央にある五老岳がまた素晴らしいね

いとし：私も登りましたけど、私は田辺城跡の方が良かったね

こいし：どうして？

いとし：田辺城跡では五百円拾たけど、五老岳では千円落としたんやで

こいし：そんなことええねん！五老岳からの景色は素晴らしかったやろ、近畿百景の第一位に選ばれてるねや

いとし：海岸の景色、浮かぶ島々、私は歌を詠まずにはいられなくなったね

こいし：ホー、五老岳からの景色を見てどんな歌を詠んだん？

いとし：五老岳　ながむる景色　絶景なれど

こいし：五老岳　ながむる景色　絶景なれど

いとし：落とした千円　いまだに惜しい

こいし：忘れい千円ぐらい！

いとし：五老岳からは冠島なんかも見えましたね

こいし：この冠島には、特別天然記念物に指定された、オオミズナギドリが生息してるねや

いとし：オオミズナギドリ

こいし：よっぽど珍しい物しか、特別天然記念物には指定されへんのやぞ

いとし：ほな、もうすぐ君とこの嫁はん、特別天然記念物に指定されるね

こいし：・・・あのな

いとし：家の前に看板立つがな、特別天然記念物、こいっさんの嫁はん生息地って

こいし：生息地て

いとし：私、舞鶴来たからにはぜひ思て、舞鶴引揚記念館に行ってきました

こいし：♪母は来ました　今日もまた♪

いとし：三万円、五万円、七万円！！

こいし：それはもうええねん、古いねん！！・・・（セリフを読むように）また引揚船が帰ってきた・・・この岸壁で帰っているわしの姿が見えんのか・・・港の名前は舞鶴なのに、なぜ飛んできてはくれんのじゃ・・・

いとし：うまいなぁ君

こいし：君は私と漫才やる前、舞鶴でマドロスやってたんやろ

いとし：そうや

こいし：私、岸壁の母やっててん

いとし：もうええわ！