今いくよ・くるよ「女は変わるのよ」

いくよ：淡路島の洲本市へ参りました

くるよ：私、この淡路島へは、高校時代によく来たんですよ

いくよ：なんで高校時代に？

くるよ：と言うのは、私、その当時、渡哲也さんとお付き合いしてたんです

いくよ：はぁ？

くるよ：哲也さんの実家が淡路島にあったもんですから、よく哲也さんに連れられて淡路島に来てたんです

いくよ：・・・出て早々、ようそんな大きなホラ吹けるね

くるよ：どこがホラやと言うのよ

いくよ：そら確かに、くるよちゃんの高校時代は、渡哲也さんの大ファンでしたよ。これは認めよ

くるよ：そやから！お付き合いを・・・

いくよ：してない！何が渡哲也さんとお付き合いよ、くるよちゃんが高校時代にしてたのは、渡哲也さんとのお付き合いと違ごて、渡り廊下でのどつき合いやないの

くるよ：どつき合いて！

いくよ：くるよちゃんは、渡哲也さん会いたさに、淡路島へ来て実家の廻りをウロウロしていたことはあったけどね

くるよ：・・・ほんまにそうですねん。何回も実家の周りをウロウロしに来てたんです

いくよ：偶然実家に帰ってはった渡哲也さんが、ウロウロしてるくるよちゃんを見て、エサを放り投げてくれはりましてね

くるよ：エサて！

いくよ：それを食べたくるよちゃんは「渡哲也さんから、おいしいドッグフードもろた」いうて、無茶苦茶感激しましてね

くるよ：私は野良犬か！

いくよ：高校時代と言えば、今日ここへ来る時、三年生の時の同級生の山本ゆきこさんにバッタリ会ったのよ

くるよ：山本ゆきこさん？

いくよ：ほら、くるよちゃんの斜め右前の席やった子よ

くるよ：ふんふん、言うて悪いけど、あの山本ゆきこさんて、かなりブサイクやったやろ

いくよ：そう、クラスで二番目にブサイクやった子よ

くるよ：・・・ちょっと待ってよ。クラスで二番目なんて言い方したら、お客さんは、ほな一番目にブサイクなんはこの私やと思わはらへんか？

いくよ：それはくるよちゃんの考え過ぎよ

くるよ：そうやろか

いくよ：それよりもびっくりするよ。あの山本ゆきこさんが、今社長夫人になってはるのよ

くるよ：えっ社長夫人に⁉あの山本ゆきこさんて、勉強かてあまり出来へんかったやろ

いくよ：そうよ、クラスで二番目に勉強出来へんかった子よ

くるよ：またそういう言い方する。どう考えても、お客さんは、私が一番勉強できなかったと思わはるの違うか

いくよ：皆さんに言っておきます。くるよちゃんは、クラスで一番ブサイクでも無かったし、クラスで一番勉強が出来なかったわけでもありません

くるよ：その通りです

いくよ：くるよちゃんの名誉回復のために言っておきます。くるよちゃんはクラスで三番目にブサイクで、三番目に勉強ができませんでした

くるよ：・・・それ名誉回復になってるか？

いくよ：でも、人間てわからんもんやね

くるよ：何が？

いくよ：クラスで二番目にブサイクな子が社長夫人になって、クラスで三番目にブサイクと、クラス一番の美人の二人が結婚もできずに漫才してるのよ

くるよ：・・・そのクラス一番の美人て、いくよちゃんのことか？

いくよ：当然でしよう

くるよ：お客さん思わはるやろねぇ、レベルの低いクラスやなぁて

いくよ：人間わからんと言えば、この私自身もそうですわ

くるよ：と言うと？

いくよ：私が漫才師になった時、周りの皆が言わはったもん、「エーッ！・・・あんたが漫才師に？・・・なんで！・・・人間てわからんもんやねぇ」て

くるよ：まあ確かに漫才やる前のいくよちゃんは、無口やったしね

いくよ：くるよちゃんかて漫才師になった時、周りの皆が言わはったんですよ、「エーッ！・・・あんたが漫才師に？・・・やっぱり」

くるよ：やっぱりて！

いくよ：「あんた昔から漫才顔してたもんねぇ」

くるよ：漫才顔てどんな顔やのん！

いくよ：こんな顔やないの（くるよの顎をつまんで顔を見せる）

くるよ：やかましいわ！

いくよ：そやけど、山本ゆきこさんに会うたら、くるよちゃんかて、彼女の変わりようにびっくりするよ

くるよ：どう変わらはったん？

いくよ：昔はブサイクやったけど、今はまあまあの顔になってはるのよ

くるよ：整形手術しはったんやろか？

いくよ：それはしてないと思うよ

くるよ：となると、顔を変えるためには、いくよちゃん方式しか無いね

いくよ：私方式いうと？

くるよ：（顔を叩いて化粧の格好）厚化粧、塗り壁

いくよ：塗り壁て！・・・山本ゆきこさんが変わったんは、顔だけと違うのよ

くるよ：と言うと？

いくよ：話し方かて、自分には教養があることを見せびらかすような話し方をしはるのよ

くるよ：へー、あの勉強のできなかった山本さんがか？

いくよ：「あらー、まさ子さんお久しぶり、高校以来だわね」

くるよ：いくよちゃんの本名はまさ子です

いくよ：「まさ子さん、あなた今漫才してはるそうね。私今社長夫人よ、だからお金がいっぱいアルキメデスの法則なの」

くるよ：アルキメデスの法則！？

いくよ：学校で習うようなことを言葉に入れて、教養を見せびらかそとしはるのよ

くるよ：そこまで教養を見せびらかすか

いくよ：「社長夫人といっても、うちの主人は大会社の社長だから、関西の財界人とは深い関係代名詞よ」

くるよ：関係代名詞！？

いくよ：「ですから、財界人とのお付き合いは、毎日のように連日方程式よ」

くるよ：・・・それ連立方程式違うの？

いくよ：人間てほんまに変わりますね

くるよ：特に女性は変わりますね

いくよ：女性が変わるきっかけは、まず結婚で変わるでしょ

くるよ：山本さんがそうやもん

いくよ：逆に失恋した時も、女性て変わりますね

くるよ：失恋した時に？

いくよ：自分で変わろ思て、失恋した時に、それまでの長い髪の毛をバサッと切ってしまったりする人いたやろ

くるよ：いますね、でも私は、失恋しても髪の毛を切ったことありませんよ

いくよ：そらそやろ、くるよちゃんが失恋するたびに髪の毛切ってたら、丸坊主にならないかんやないの

くるよ：ほな私は失恋ばっかりをしてるんか！・・・私は失恋した時は、髪の毛の代わりに、それまで長く伸ばしていた鼻毛を切ることにしてるんです

いくよ：鼻毛て！鼻毛なんか伸ばしてるから失恋するのと違うんかいな

くるよ：あっそうか、ええとこに気が付いてくれたね

いくよ：・・・それから、ある程度歳をとると女性は変わりますね

くるよ：おばちゃんになりますからね

いくよ：私らでも、今は皆から若くてかわいいと言われてますけど、あと二十年も経ったらおばちゃんになるのよ

くるよ：・・・いくよちゃん、それ余りにも自分がわかってないのと違うか
いくよ：自分がわかってないて？

くるよ：私らのほんまの歳から考えたら、二十年経ったらおばちゃんと違ごて・・・二十年戻ってもおばちゃん違うか

いくよ：・・・そこまで正直に言う必要ないのよ！

くるよ：ほんまにいくよちゃんて、あつかまし過ぎますわ

いくよ：そやけど、女は変わる言うても、同じ変わるのなら魅力のある女性に変わりたいですね。嫌なタイプの女性にだけは変わりたくないね

くるよ：嫌なタイプの女性というと？

いくよ：まず、人の悪口を言いまくる女性

くるよ：人の悪口言う人嫌やねぇ、昔私のマネージャーをやってた高橋さんがそれやねん。人の悪口ばっかり言うてたやろ

いくよ：そやったかなぁ

くるよ：言うてたやないの。それでいて、自分は時間にルーズやし、男ぐせが悪いし、金遣いが荒いし・・・人の悪口言う人嫌いやわぁ

いくよ：高橋さんてそんな悪い人やったか？

くるよ：悪い悪い、嘘はつくし、手癖も悪いし、ええとこ一つも無しよ、それでいて人の悪口をいうのよ。人の悪口言う人て嫌いやわぁ

いくよ：くるよちゃんが一番人の悪口言うてるやないの・・・それから、嫌な女性のタイプは、人の私生活をなんでも詮索したがる女性

くるよ：いるいる、人の私生活まで細かく尋ねたがる人。確かに嫌やねこういうタイプの女性

いくよ：私の友達の吉田さんが、そういうタイプの女性なのよ

くるよ：吉田さんが？でも吉田さんて何歳？

いくよ：確か四十三歳やったかなぁ

くるよ：ご主人いるの？

いくよ：五年前に別れはりました

くるよ：子供は？

いくよ：男の子が二人

くるよ：へー、そんな人が人の私生活を詮索したがらはるの？

いくよ：そうなのよ

くるよ：詮索したがる人て嫌やねぇ、で、その吉田さん仕事は？

いくよ：ブティックで働いてはるよ

くるよ：給料は？

いくよ：二十五万ぐらいかなぁ

くるよ：今、男関係は？

いくよ：奥さんのある人と付き合うてはるみたいよ

くるよ：へぇ、相手の奥さんはそのことを？

いくよ：知らはらへんみたいよ

くるよ：嫌やねぇ、人の私生活を詮索したがる女性て

いくよ：一番詮索してるのくるよちゃんや！ほんまに自分のことは全然わかってへんのやから

くるよ：すみません

いくよ：あと、嫌なタイプの女性というと、女性でありながら、男と変わらんような生き方をする人ね

くるよ：というと？

いくよ：例えば、食堂で食事をする時でも、平気で丼飯を三杯も食べながら、タクワンをボリボリボリボリ音を出して食べる人とか

くるよ：・・・

いくよ：楽屋で昼寝した時に、大イビキはかくわ、歯ぎしりするわ、寝言はいうわ、その寝言が「男が欲しい！」とか

くるよ：・・・

いくよ：そして、女性でありながら平気で男物のパンツはいて、家ではラクダのシャツとパッチと毛糸の腹巻きとか・・・どうしたん、くるよちゃん急に静かになったやないの

くるよ：・・・その話はこのへんで終わりにしましょ

いくよ：それから、嫌なタイプなのが、すぐに見栄を張りたがる女性いるでしょ。こういうタイプの女性にも変わりたくないね

くるよ：見栄を張りたがる女性同士の会話て、アホらして聞いてられへん時ありますね

いくよ：「あら、酒井さんの奥さん」

くるよ：「まあ、里谷さんの奥さん」

いくよ：「どこかへお出かけですか？」

くるよ：「ええ、ちょっと香港までシューマイ買いに」

いくよ：「シューマイ買うのに香港まで！？」

くるよ：「うちでは、本場のものしか食べないことにしてますのよ、ところで奥さんはどこへお出かけ？」

いくよ：「ええ、ちょっとローマまでマカロニサラダを買いに・・・あなた香港、私はローマよ」

くるよ：「そう言えば、新聞の折り込み広告に入ってましたわね」

いくよ：「新聞の折り込み広告？」

くるよ：「はい。スーパーマーケットローマの広告に、マカロニサラダが特売でワンパック五十円て出てましたわねぇ」

いくよ：「・・・いらんこと知ってる奥さんやねぇ。あら、奥さんの持っておられるバッグ、私どこかで見たことのあるバッグだわ」

くるよ：「このバッグは、私の誕生日に主人がプレゼントしてくれたの」

いくよ：「ご主人からの誕生日プレゼントですか？」

くるよ：「主人言ってたね、これはブランド物のバッグだよって」

いくよ：「それ、奥さんの聞き間違いだと思いますよ」

くるよ：「聞き間違いと言うと？」

いくよ：「ブランド物じゃなくて、グランド物の間違いですよ」

くるよ：「グランド物？」

いくよ：「はい。お宅のご主人が、大阪の長居公園のグランドに落ちてたバッグを拾て帰らはるとこ、私みてたのよ」

くるよ：「いらんところ見る人やねぇ」

いくよ：「誕生日プレゼントといえば、私のこのネックレスは主人からのプレゼントですのよ」

くるよ：「そのネックレスが？」

いくよ：「ええ、今日が私の誕生日で、昨日の晩、主人が店で一生懸命選んでくれて、店で一番高いのを買ってきたと言ってましたわ」

くるよ：「そう言えば昨日の晩、ご主人の姿を店でお見かけしましたわ」

いくよ：「あらそう？どこの宝石店でした？」

くるよ：「宝石店と違ごて、百円ショップでしたよ」

いくよ：「・・・いらんとこ見てる女やねぇ」

くるよ：「そう、今日は奥さんの誕生日でしたの？」

いくよ：「はい、ですから今夜は、最高級の百グラム三千円のお肉で、すき焼き誕生パーティーをしてもらえるんですよ」

くるよ：「百グラム三千円といえば、間違いなく、霜降り肉ですね」

いくよ：「霜降り肉てそんないい肉なんですか？」

くるよ：「霜降りはいい肉ですよ」

いくよ：「それで、奥さんの体のお肉も霜降り肉なんですね」

くるよ：「・・・いらんこと言う奥さんやねぇ。それはそうと、奥さんの今の洋服、センスいいわねぇ」

いくよ：「実はこれ、有名女優さんに、無理を言って譲ってもらったのよ」
くるよ：「有名女優さんに？」

いくよ：「はい、本人は譲るの嫌だと言ったのを、無理やり頼んで、今年の二月に譲ってもらったのよ」

くるよ：「その有名女優というと？」

いくよ：「オードリー・ヘップバーンさん」

くるよ：「死んでるわ！オードリー・ヘップバーンはとっくに死んでるわ」

いくよ：「だからその遺族の方に」

くるよ：「それならわかります」

いくよ：「奥さんのその衣装は？」

くるよ：「これも有名女優さんに、無理を言って譲ってもらったのよ」

いくよ：「私と一緒ですね」

くるよ：「でもその女優さんは、オードリーヘップバーンよりもかわいくて美人よ」

いくよ：「それって誰？」

くるよ：「今くるよさん」

いくよ：「・・・やっぱりそうでしたか」

くるよ：「やっぱりて、私のいうことわかってくれはったの？」

いくよ：「はい、今時、こんなド派手で下品な衣装着るの、今くるよさん以外におらんでしょ」

くるよ：もうええわ！