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オリンピア第17回WRC弥生杯観戦記

YouTubeの黎明期はいつだったか調べてみたところ、2005年くらいということだった。あれから約20年、この新しい仲間が今も多くの人に親しまれていることは改めて書くまでもないが、一方でチャンネルが乱立して視聴者を奪い合う形になり、さらにはTikTokなどの隆盛もあって1つ1つの動画に対する視聴者数は伸び悩んでいるという側面がある。

 https://youtu.be/Jz7RIRMcY9k

上のオリンピア第17回WRC弥生杯決勝の模様を、見られる人はぜひ今からでも再生ボタンを押して視聴してもらいたい。私は昨日見た。

しかし、日々の雑務に追われてなかなか時間が取れないという方もいるだろう。そういう方は今から書く観戦記を読んでもらえたら。観戦記には動画の切り抜きという面があるのだ。3000文字あるけど、まあ5分もあれば読めるだろう。

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南2局を迎えて、点棒状況は下の通り。

東家・松本さん27100
南家・中谷さん32400
西家・森田さん34900
北家・鳥毛さん25600

ここで北家・鳥毛さんのもとに最高の入り目である9mがやってくる。6巡目ではあるが、前巡、前々巡と1pの対子落としが入っており、平和の好形が予想される怖い立直だ。

これが、最後の親番を手放せない松本さんから出て3900の和了りに。松本さんにとっては、ドラが乗らなかったことは良かったものの、苦しい立場に追い込まれる。

ちなみに、
◆3着目
◆南2局の親番
◆6巡目立直
に対しては、ある程度押した方が得で、これは放銃した松本さんの雀力が高いことを証明している。

南3局は一転して、親番・中谷さんの我慢が効いた。また、トップ目森田さんの手組みと踏み込みも素晴らしかった。しかし、この局を制したのはそのいずれでもなかった。

東家・中谷さん32400
南家・森田さん34900
西家・鳥毛さん29500
北家・松本さん23200

ファースト聴牌は西家の鳥毛さん。フリテン高め一気通貫の147sに受けることもできたが、ここはピンズの好形変化を求めて打9sのダマに構えた。

鳥毛さんはすぐに絶好のツモ6pを引き入れて258pの立直を打つ。そこに南家の森田さんがマンズを埋めて聴牌。4巡目に両面固定した4pが光っている。また、道中ドラ西を重ねた瞬間も鳥肌が立つほど素晴らしかった。

二軒立直に挟まれたのは親番・中谷さん。しかし、ここも確かな手組みで聴牌にこぎつけた。打3pなら5pと7sのシャンポンに、打5pなら嵌4pに取れる。しかし5pは二軒立直の両方に対する当たり牌なのだが……。

打5pはともかく、トップにしか価値のない決勝であることを考慮すれば、打3p立直は有力だった。この3pが当たったら当たったで「しょうがない。聴牌だし。」とボヤくことだってできたし、トップ目の森田さんが前に出てきた瞬間をねらうのは、トップをひっくり返すための常套手段だ。しかし中谷さんは、魂の我慢で打7s。聴牌に甘えず、この二軒立直を制した方と南4局で対決する茨の道を選んだ。

現状トップ目の森田さんが和了れば8000からで、あるいは勝負アリだったかもしれない今局は、鳥毛さんが森田さんの8pをとらえて3900の和了り。トップ目を直撃してついに自身がトップ目に立った。147sのフリテン立直にしていても、8sと7pのシャンポン立直にしていても、いずれもありえない和了りだった。

こうして南4局オーラスの舞台が整った。まずトップ目の鳥毛さんはいわゆる和了りトップ。2着目の中谷さんは、南3局の二軒立直が最高の形で決着した。2000点の出和了りで同点トップとなり、予選1位が利いて優勝をさらえる。3着目の森田さんは2000オールで一躍トップ目に立つものの、親なのでその後連荘する必要がある。4000オールなら次局伏せて優勝、というのが最も目指したい未来か。4着目の松本さんでさえ、12000の出和了りで優勝できる条件だ。ちょっと縦長の展開になれば、倍直とか三倍満ツモとかそういう感じになるものだけど、今決勝戦は上下がギュッと詰まった接戦であると言える。

東家・森田さん27000
南家・鳥毛さん34400
西家・松本さん23200
北家・中谷さん32400

和了りトップの鳥毛さんが積極的に仕掛ける。ドラドラはおまけだとしても、赤がないWRC大会において、自身の目からドラが2枚見えていることは優位で、他家の打点を安く見積もることができる。455mと厚く持っていたマンズの両面チーから入ってタンヤオと三色を見据えた……かに見えた。

この局もファースト聴牌は鳥毛さん。入り目がタンヤオを消す1sながら、マンズの副露が456mなので、4sなら456の三色で和了ることができる。

しかし次巡ツモ7pで痛恨の打1s。聴牌を崩してしまった。もちろんこうしておけば、上家森田さんから4sが出た時に食い変えナシでチーできるのだが、そもそも1sを捨てなければ4sは和了り牌だ。

実はこの鳥毛さんの打1sの同巡、松本さんからタラレバ牌の4sが放たれる。世が世なら、三色ドラドラの3900でラストだ。

ここからは幻の巡目ということになるが、13巡目に松本さんから立直。これが東1局フラットな状況なら両面の69pに受けてもいいけど、ハネツモを目指して打6pとした。「和了ったけどラスでした。」というわけにはいかない。一発もしくは裏1というのは、かなり現実的な条件と言える。

中谷さんにも優勝の聴牌が入った。メンツ手とトイツ手を天秤にかけた難しい進行だったが、中谷さんは思い切り良く4p3pと外していき、ソーズの下に照準を定める。

中谷さんは腕がいいから上手くやったけど、本当は競っている南4局の七対子はあまりお勧めできない手役で、一向聴の受け入れが狭いし、形式聴牌が取れない。剣で言うところの「上段の構え」で、死なばもろともの選択だった。

しかし中谷さんは、こちらの心配もナンノソノ、2sを重ねてついに聴牌にこぎつけた。聴牌打牌は松本さんの河にもある4sとして3s単騎。立直棒が出ているので、どこから出ても優勝の聴牌だ。

最後は、松本さんのもとにドラ8mは来ず、中谷さんのもとに3sがやってきて終局。麻雀の神様は、鳥毛さんの横をすり抜けて、松本さんに向かって手を振り、中谷さんに微笑んだ。

第2回北陸AMリーグでも大活躍でチームを牽引する中谷さん。最後のツモ3sに破顔一笑というところだった。優勝にも様々な形があるけど、一般的には伏せて優勝や出和了りで優勝というケースが多く、やはりツモ優勝は野球で言うところのサヨナラヒットみたいで、見ている方としても気持ちがいい。

聴牌がおしなべて4者の中で早かった上、優勝も1番最初に手繰り寄せた鳥毛さん。最後はその聴牌を崩して無念の準優勝となったが、きっと麻雀自体が楽しかったのだろう。こちらも笑顔が絶えなかった。あと、手が短くて対面の山になかなか手が届かないところが可愛らしくもあった。

南3局までトップ目、かつその南3局でも最高の手組みを見せてくれた森田さん。ドラの西を1枚手に留めて25pを両面固定し、終盤に西を重ねたシーンは必見だ。立直後につかんだ牌が8pじゃなくて2pなら優勝は森田さんだった。

最後の最後に4着目から逆転優勝の可能性を見せてくれた松本さん。実は南4局立直の一発目のツモが9pで、ドラ8m切りだったら一発ツモなのだが、その場合タンヤオもドラもつかず、優勝のためには裏ドラが3枚必要だった。この動画のインタビューではそこまで深い話ができなかったので、代わりにこの観戦記に残しておく。南2局親番での3900放銃も含め、松本さんもまた勇敢に戦う侍だった。

というわけで、弥生杯優勝は中谷さん。おめでとうございます!


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