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見え見えの役牌バックに役牌が切れる唯一のタイミング

あなたの脳に

ちょびっとお邪魔します

イメージダイブ

想像してください

大きなタイトルのかかった最終半荘東1局、

優勝ポジションのあなたは北家、

ライバルは東家です。

ライバルが2つ仕掛けてきました。

ライバルの仕掛け

ライバルの河はコレ、

ライバルの河

最終手番のあなた、ついに聴牌を入れることはできませんでした。ツモ4m。

あなたの手牌

こ・こ・で、ダーイブ!

デデデ・デデデ・デデデ・デデデ・デーッ!

マンズ切ってオリたでしょ?

今日のアルパカnoteは、この場面で生牌の發を切った人のお話です。

以下、常体・敬称略で。

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ボクは日本プロ麻雀協会の観戦記を書いてて、今回第22期雀王決定戦でいうと2回戦・6回戦・7回戦・11回戦を担当した。

■第19期雀王矢島亨のメンチンあり、
■第21期雀王でディフェンディング浅井堂岐の逆転倍満あり、
■4度目の決定戦にして悲願の初戴冠を目指す仲林圭の見逃しあり、

記事の中でたくさんの選択を紹介してきた。

しかしその中で、唯一どこにも一文字も書かなかったのが、堀慎吾の選択だった。

いや、堀慎吾が麻雀に対してそうであるように、ボクも文章については一家言ある。だからここは正確にいきたい。「書かなかった」のではなく「書けなかった」のだ。難しすぎて。

堀慎吾の話は須田良規。理由は下の記事を読んでもらえたら分かるだろう。

もひとつ。

ところが今回、幸運にも最後のインタビューのところで、堀慎吾の日本海溝より深いその思考の一部に触れることができたので、この記事で記録として残しておこうと思う。いや、残しておいて、後で自分の勉強用に使おうと考えた。

実際の闘牌に入る前に、ポイント状況を整理しておきたい。全20回戦で争われる雀王決定戦は19回戦までを終え、堀慎吾が+227.6ptで首位、2位の仲林圭は+184.2ptとなっていた。残念ながら、3位の浅井堂岐と4位の矢島亨はほぼ優勝の可能性がない状態だ。

堀と仲林とのポイント差は、43.4pt。これは、堀から見て

■仲林よりも上で終われば堀の勝利
■仲林がトップでも堀が2着ならば3.4pt以内で勝利
■仲林2着・堀4着ならば同じく3.4pt以内で勝利
■仲林2着・堀3着、もしくは仲林3着・堀4着ならば23.4pt以内で勝利
■仲林トップ・堀3着か4着なら敗北

ということになる。

とにかく、仲林との着順差、素点差を気にかけながら戦っていきたい。

ちなみに、座順が確定したあと仲林が頭を抱えたのが、この

■東家スタート・仲林
■北家スタート・堀

という関係で、優勝ポジションの堀が北家スタートなのは既定路線としても、自身が東家スタートになってしまったのは、

■堀が上家になるので、ほしい牌を絞られてしまう
■浅井・矢島が自身の親番がなくなるまでは普通に打ってくる

点で不利にはたらく。ここは西家スタートを引きたかったところだ。

まずは仲林の親を落としておきたい、願わくば高い手をツモ和了して親被りさせたい、大事な大事な東1局。堀の配牌は

このようになっていた。堀はマンズのホンイツを見つつ、ピンズの端牌から手をかけていった。

3巡目にドラ表示牌の8sを打ったのも、あるいは(仲林の手が整ってチーされないように早めに。)という意図が、あったのかもしれないしなかったのかもしれない。

これを仲林がドラを使うカン8sチー発進。見ての通りのダブ東バックだ。しかし、「見ての通り」なのは視聴者だけであって、堀目線は分からない。はずだった。

仲林はカン4pを入れて1歩前進すると、

下家の浅井が捨てた2枚目の2mをポン。

打6mで聴牌を入れた。

こうして、冒頭の場面になる。親の仕掛けが妙であることは、麻雀のルールが分かる方なら一目瞭然であろう。

■タンヤオではない
■トイトイではない
■ホンイツではない

では何か、と考えたら
■役牌(ダブ東・白・發・中)バック
■役牌暗刻
の2つが本線となる。

ところが、ここで第20期雀王渋川難波をもってしても解説しきれない打牌が行われる。

堀が突如、生牌の白を打ったのだ。この白がロンと言われる確率は、ダブ東・白・發・中の4種類に、これらがすでに暗刻の可能性も考慮すると、20%前後くらいか。

■ロンと言われてもだいたい2900だから打ったのか?
■いやいや、それにしてもライバルに直撃されるなんて痛くないか?
■何シャンテンから打ってんだ?
■そもそも自分の手(ホンイツや七対子)にも必要だろうに…

実況解説席を含め、様々な憶測を呼んだが、対局後、穏やかな表情で正解を教えてくれた堀の言葉に、ボクは膝を打った。

堀『役牌バックだとしたら、シャンポンの片割れが7mだって分かったので…』

仲林の聴牌打牌はポン出しの6m

そして、堀が白を打った巡目の、浅井の打牌は以下の通り。

577mにカン6mを引き入れてメンツを完成させ、打7mとしているのが分かる。

実際にはこの7mを矢島が嵌張カンチャンでチーしているので、河にはないわけだが、麻雀のルールではこういった場合、仲林の手番を経過するまでロン和了できないことになっている。

第22期雀王の仲林圭は後に、この場面を振り返る。

シャンポン待ちの片割れを看破し、同巡だけ役牌を打ってくる他家がいたら、そりゃそう思うかもなぁ。ボクは現在雀王戦E1リーグに所属してるんだけど、どのあたりからこういう麻雀になるんだろうか。

この仕掛けに、

レベル1・役牌を打たない
レベル2・手が整ったら役牌を勝負する
だとしたら、堀の選択・仲林が感じ取ったのはこの上
レベル999・シャンポンの片割れが出た同巡だけ役牌を逃がす

このプレイは1度だけにとどまらない。

浅井が堀の5sをポンし、聴牌を入れると、

堀は、この手から生牌の打發。

浅井の河の最後は4sとなっているが、仲林の手番を経過していないため、1つ前の7mも同巡扱いになっている。

どの道ノーテンの堀は、7mが仲林の同巡であることを利用し、『ワンチャン、浅井に当たらないかな、と思って。』と笑顔で答えた。

何食ったらこんな意地悪なこと考えられるようになるんだろう。そして、こんな意地悪な人を逆転して優勝できるようになるんだろう。

堀は最後のインタビューでこの局を指し「東1局の1人ノーテンが流れ悪すぎて」と語った。

いやまあ確かに結果だけ見たらそうなんだけど、そんなふうに言っちゃあサスガに結果だけにフォーカスしすぎなんじゃないかって思うんだよなぁ。

世界一カッコいい1人ノーテンを見せてもらって、視聴者としては大満足だった。

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堀慎吾さん、お疲れ様でした。ありがとうございました。

今から第23期のA1リーグが楽しみです。

最後になりましたが、このインタビュー動画に文字を入れてくださった大浜岳さん、ありがとうございました。

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