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ヤマオーはオレが倒す!by天才・桜木!

2022年の年末から2023年始にかけて全国各地で映画「THE  FIRST SLAM  DUNK」が上映されており、SNSにもたくさんの感想が寄せられて注目度の高さをうかがわせている。かく言うボクも、劇場で涙を流した数多の観客の中の1人だ。

スラムダンクには、たくさんの物語が内包されてる。

◆バスケ初心者の桜木花道が、ドリブル・レイアップ・ジャンプシュートなど1つ1つのテーマを克服し、成長していく物語。

◆前年度、前々年度インターハイ神奈川県大会1回戦敗退だった湘北高校に、紆余曲折を経てたくさんの個性が集結し、1戦1戦勝ち抜く度に強くなっていく物語。

◆日本を出て世界へ羽ばたいていこうとする流川楓に対し、まずは日本で足場を固めるべく教育者として道標を示す安西先生との師弟二人三脚の物語。

2023年1月8日(日)、日本プロ麻雀協会から2人の若武者が、スリアロスタジオの決勝卓に姿を現した。

小野遼介。19期後期入会。このスリアロCSは9月に優勝を果たし、グランドチャンピオンシップ準決勝A卓では、雑賀真紀子・吉田健一郎を下し、第44期最高位坂本大志とともに通過した。

プロ歴は短いものの、アマチュア時代から競技麻雀に没頭し、数多くの先輩プロたちと同卓してきた。最近では最高位戦の成田裕和とのYouTubeチャンネル「なりたま屋」を開設し、知名度のアップを図る。また健康麻雀教室講師としての顔も持っており、麻雀の普及にも注力している。スラムダンクでいうと、中学バスケで話題になった三井寿や鳴り物入りで湘北高校に入った流川楓のような才能型のルーキーだ。

長沼圭一。20期後期入会。スリアロCSは6月に優勝し、その時の準決勝までの快進撃と息詰まる決勝卓の様子はこのアルパカnoteで取り上げている。

グランドチャンピオンシップ準決勝B卓では、最高位戦の吉田昇平・協会先輩の大川冬馬を退け、最高位戦の稲脇大地とともに決勝進出の切符を手に入れた。

この記事を書くに当たり長沼の横顔を調べてみたところ、ウィキペディアに「山口県出身のサッカー選手。ポジションはMF。」とあって、こわくて泣いちゃった。ポジションていうのは、東家とか西家とかそういうことじゃないのかな。スラムダンクでいうと、今回は決勝2回戦南4局オーラスに赤木剛憲のような勝利への強烈な意志を示す。

vs.

その2人を迎え撃つのは、第44期最高位坂本大志。今さら詳しい紹介をする必要がないレベルの大人物だが、最近プロになったばかりでよく分からないという人は下の記事を参照してほしい。

上のリンクを読めば、この記事でボクが坂本を常勝・山王工業役に指名したのもうなずいてもらえると思う。

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1回戦の南4局オーラスは、坂本が長沼を2100リードする形で迎えた。長沼は、いわゆる「ツモ直条件」と言われる立直のみ(4−7m8m待ち)を果敢に打って攻めると、立直後にツモ切った5mが幸いし、坂本から対子で持っていた8mを引き出すことに成功。たったの1300だが、直撃すると倍の2600点差が返る。

1300直撃で逆転

こうして長沼は1回戦を制し、坂本に対しウマ(+15pt)オカ(+20pt)合わせて+30.5ptのリードを得た。

しかしこのことが、スラムダンク同様、山王工業(坂本)のゾーンプレス(猛攻)を呼ぶ。

2回戦は南2局2本場の時点で長沼が34000のトップ目であるのに対し、坂本は6000のラス目。この勝負がこのまま終わったなら、ボクもワザワザ映画スラムダンクを引き合いに出して、頼まれてもない観戦記を書いたりはしない。

「まだあわてる時間じゃない」って言ったのは確か仙道彰だったはず

南2局2本場、坂本は出和了りの利かない聴牌の手替わりを待ってダマに構えると、一気通貫がつく絶好の4pを引いてくる。打7sとすれば1−4−7pにも取れるが、坂本はあえて一気通貫を確定させる打7pで7s単騎を選択。稲脇の第1打が9s、長沼の第3打が8sだった今局、この7s単騎が3枚丸々山に眠っていた。

山3の7s単騎

他家が対応に苦慮する中、坂本はこの7sを悠々とツモり上げて2000/4000は2200/4200を手にし、反撃の狼煙を上げる。

南4局オーラス、優勝まであと1局と迫った長沼も必死に聴牌を組むものの、役満ツモや長沼への倍満直撃が条件になる稲脇・小野が混一色や清一色、四暗刻などの大物手に向かうのを横目に、親番の坂本は細かく和了りを重ねて長沼をとらえる。

逆転の瞬間は南4局オーラス4本場、坂本はずっと孤立していたドラの9sを中盤に重ねて1mと雀頭を振り替えると、場に高いソーズの2−5−8sを引き入れて4−7m待ちの平和聴牌をダマに構える。ここに小野が飛び込んで5800は7000。供託1本も合わせてゲットし、続く5本場は伏せてもOKな状態に。

逆転の5800は7000

逆に条件を突きつけられた長沼だが、麻雀の神様は最後に粋なシナリオを用意していた。

まず長沼の再逆転条件から見ていこう。1回戦を坂本と500点差の1着2着で終えている長沼はこの2回戦、坂本がトップだとしても400点差以内の2着なら優勝できる。現状4700差だから、まず小野や稲脇からなら4300点以上の和了りが必要だ。しかしここに5本場1500点があるから、差し引き2800点でOK。立直・白なら一発や裏ドラが1枚必要な計算になる。

運命の聴牌

しかし、これがツモ和了りや坂本からの直撃となると必要な点数はグッと少なくなる。まずツモだが、500/1000は1000/1500で逆転優勝に手が届く。ツモ・白でいいわけだから、立直の必要がない。

また、坂本からの直撃ならどうだろう。1300は2800となるので、2800×2=5600点返り逆転優勝となる。上のツモの場合と同じく白のみで条件を満たすので、これまた立直は不要となる。

立直か。

ダマか。

麻雀というゲームが始まって以来、連綿と繰り返されてきた問答が、今長沼に突きつけられる。

長沼の選択は立直。分かりやすく勝ちに行ったと見てもいいし、坂本に5本積まれて冷静な判断ができなかったと考えることもできる。長沼渾身のスラムダンクは、ゴールをとらえることができなかった。

長沼の立直を受けた直後、役なしながら既に聴牌を入れている下家坂本のツモは8m。坂本はこの8mを仕舞い込み、流局によって優勝を手繰り寄せた。

これは決して打牌批判などではなくあくまでも一視聴者としての疑問だが、仮に長沼がダマを選択していた場合、坂本はこの8m放銃を回避できただろうか。

左手は添えるだけ…。

スリアロチャンピオンシップ2022グランドチャンピオン大会優勝の坂本大志プロ、おめでとうございます。バスケやサッカーなどとは異なり、タイムアップのないゲームの面白さを再確認させてもらえました。

長沼さん、小野さん、お疲れ様でした。手に汗握る熱戦をありがとうございました。かっこよかったです。今回小野さんの手組みや選択についてはあまり触れませんでしたが、なりたま屋を視聴して勉強させてもらおうと思います。

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