ホロライブID - 「インドネシア民謡メドレー」の歌の翻訳と意味
こんにちは。作編曲家の中迫です。
2021年08月17日にホロライブ・インドネシアがアップした動画「インドネシア民謡メドレー ‐ ホロライブID 【6名で歌ってみた】」(原題:Virtual Medley Lagu Daerah - hololive ID [Cover])の各曲の解説とちゃんとした和訳が欲しかったので、インドネシア人の友人に協力してもらい、まとめました。
Lagu Daerah(地域の歌)について
インドネシアは日本人が想像するよりも多民族国家で、300以上民族があると言われており、数え方によっては1340という数字もあります。
それぞれの民族が独自の言語と文化を持っており、地域の歌もWikipediaには439挙がっています。
そこから特に有名な5曲をメドレーにしたのが、ホロライブIDのこの動画です。(インドネシア人の友人の家族にも聞きましたが、全員口ずさめる感じでした)
この動画は当初は日本語字幕もありませんでしたし、現状の日本語字幕も若干翻訳が怪しいので、それぞれの歌の訳と解説を載せました。
1. Sik Sik Sibatumanikam (さあさあ踊ろう)
地域:北スマトラ
言語:バタク語 (バタク・トバ語)
無尽講(アリサン arisan)とは、主婦が10数人集まり決まった額を払い、そこでくじ引きをして当たった人が全額貰えるという集まりのことを指します。日本だと沖縄などの一部の地域にまだ残っている文化です。
インドネシアではこの無尽講が広く行われています。
この曲は早口言葉のような遊び方があり、どんどんテンポを上げていくと楽しいです。また、現代ではファンキーなアレンジも見られます。
2. Kicir Kicir (キチル・キチル)
地域:ジャカルタ
言語:ブタウィ語
「キチル・キチル」そのものの意味は分かりませんでした。
この詩はマレーの4行詩パントゥン Pantun の形式に基づいている韻文です。上の詩で言うと、4行のパントゥンが2つです。パントゥンの面白い所は、前半2行では状況や自然のことを述べ、後半2行で本編を述べることです。つまり、ジャカルタの歌であることや、ハトが飛ぶことは、歌の本編とは深い関係はありません。
"ya tuan"(ご主人様)の登場回数がやたら多い!
この歌のブタウィ語はインドネシア語にかなり近いため、インドネシア語かマレー語が分かれば意味は分かるはずです。
音楽的に見ると、フレーズ最後のシがシbになっていて曲が終わった感じがしないことです。メドレーの方では近代的な伴奏を使って上手いこと処理しています。
3. Cublak Cublak Suweng (宝石箱)
地域:中央ジャワ等
言語:ジャワ語
これは子供の遊びのための歌です。
・ホンピンパ Hompimpa(日本で言う「うーらおーもて!」)で這いつくばる子 Pak Empong を1人決める
・残りの子の誰かが石を片手に持つ
・歌いながら石を他の人の手か自分のもう一つの手に移動させる
・Sapa ngguyu ndelikakeの行を歌い割ったら石を手の中に隠す
・最後のSir-sir pong dele kopongの行が終わったら這いつくばった子が立つ
・石がどこにあるか当てる
・当たったら石を持っている子が次の這いつくばる子 Pak Empong になる
ジャワの歌なので、ガムランによる演奏を載せておきます。
4. Bungong Jeumpa (銀厚朴)
地域:アチェ
言語:アチェ語
熱帯アジア原産モクレン属のギンコウボク(銀厚朴)について歌った歌です。
アチェ州はマラッカ海峡に面しているため、この言語もうっすらとインドネシア語やマレー語に似ており、分かるようで分からないもやもやを感じることが出来ます。
5. Apuse (おじいさん おばあさん)
地域:パプア
言語:パプア語
専門的になりますが、この言語のみ上の4つと違いマレー・ポリネシア語族ではありません。
情報も非常に少なく、詳細は特に書くことがありません。
アレンジと歌唱について
すごいの一言ですね。
作曲家としての意見になってしまいますが、民謡のアレンジって結構難しいですよ。それを見事に現代的な和声と伴奏でまとめ上げているFarhan Sarasinさんには感服です。
また、上にも書いたとおり、この歌は5言語です。みんなよく頑張って歌った!
以上、インドネシア好きから見たホロライブIDの新曲でした!
謝辞
Abul Fadhl
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