2016年 68冊目 雑誌『POSSE』同一労働同一賃金の特集
まず言葉の定義
同一労働同一賃金
職務内容が同一または同等の労働者に対して同一の賃金を支払うべきと言う考え方。もともとはヨーロッパで男女の権利問題意識から生まれた。
同一価値労働同一賃金
ヨーロッパで、同一労働同一賃金が始まったが、男性が多い職種の賃金が高く、女性が多い職種の賃金が低いという事が起こった。職種が異なっても価値を比較し、価値が同じであれば同一賃金にすると言う考え方。
日本でもかつては、この同一価値労働同一賃金の議論がされていた。一部改善が見られたが、今回は、非正規社員の待遇改善に絞って「同一労働同一賃金」として議論されている。
同一労働同一賃金の議論のきっかけ
2016年1月 安倍首相は施政方針演説の「ニッポン1億総活躍プラン」で「同一労働同一賃金に踏み込む考えだ」と発表。
非正規雇用が4割を占め、処遇改善に向けた取り組みとして同一労働同一賃金が必要
正社員に比べて約6割の賃金を欧州並みの8割まで引き上げる(ただし米国は3割)
2015年月額平均 正社員32万1100円 非正規社員20万5100円
2016年現在の議論
日本一億総活躍プラン
正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国にそん色のない水準を目指す。
同一労働同一賃金に向けて、我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める。労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるかまた不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する。
我が国の雇用慣行では、年功賃金が基本の正社員と雇用形態が基準の非正規社員とで賃金形態が異なるため、そのままでは同一労働同一賃金の実現は困難
関連法案
実は、今迄も様々な取組がきちんと総合的に対応されていた。しかし、まだ効果は限定的。
○パートタイム労働法
1職務内容が正社員と同一
2人材活用の仕組み(異動の有無や範囲)
1,2が同じ場合は、差別的取り扱いが禁止(均等待遇)されている
ただし940万人中32万人が対象
均等待遇:仕事の内容や経験、責任、人材活用の仕組みなどの諸条件が同じであれば同一の待遇を保証する事
均衡待遇:同じ仕事におして責任の程度を考慮したうえで不合理な待遇と認められるものであってはいけないと言う原則:賃金が低くても合理的!
○労働契約法 20条
有期雇用労働者に関しての取り扱いで、不合理な待遇・労働条件の禁止を規定
同一労働同一賃金法(14年)
派遣労働者の派遣先での均等な待遇および均等のとれた待遇の実現をはかる
派遣労働者の待遇を3年以内に法制上の措置を講じる
○改正労働契約法:20条
雇用形態の違いのいをもって合理性のない処遇格差をつけるのは禁止
○労働基準法 第1条第1項
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない
○ILO100号条約(同一価値労働同一賃金)
1951年に採択 日本は67年に批准
同一労働同一賃金を実現したヨーロッパでは、男女が従事する業種や職種の格差が解消されなかった。その反省のもと、労働の社会的価値と言う要素を考慮に入れ、男女間の不当な差別や格差を縮めて行こうと努力をした。
・関係者の意見
○自民党
これまでは非正規社員を正社員にすることが政策の中心でした
現在は、非正規社員であっても、働いている以上は生活できるようにすべき
○公明党
全労働者の4割を占める非正規社員の待遇改善。現状の6割を8割程度に。
ほとんどは、まだ各論になっていない
長時間労働はEUのインターバル規制(11時間)などを取り入れたい
○民進党
本来目指すべきは同一価値労働同一賃金
均衡ではなく均等待遇の原則の実現が必須
処遇が不当に低いのは非正規だけではなく、正規にもいる
○生活の党と山本太郎となかまたち
現状把握→基準作り
今の経済状況では、企業に捻出させるのが難しい
成長産業を後押しして、経済の立て直しをする。税金の取り方とその配分を変える
○日本共産党
均等待遇に加えて、雇用保障、有給休暇、福利厚生も均等と法律に明記
企業内にとどめず、社会全体に広げる
最低賃金は今すぐ1000円、さらには1500円を目指そう
・同一労働同一賃金につながりうる画期的判決
定年後の再雇用のトラック運転手の賃金が低いのは違法であると判決:5月13日
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