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水準器
空腹時と寝不足時は要注意である。
また遠距離のドライブならいいが、少しそこまでという距離が一番危ない
なぜなら高速を使わないからである。
これは車に乗るときの話だ
運転する方ではない
乗せてもらう方だ。
高速を使うと酔いにくくなる、しかし高速に乗るまでの道のりで信号が多いルートを通るとなると別なのである
どうやら長年の経験から発車時、停車時の前後の揺れや走行時の横の揺れが一番酔いやすいのだとわかっている
上下の縦揺れは海外の悪路で問題ないとわかった。
僕は物心ついた時から車酔いがひどかった
小さい頃はどこに行くにも酔っていたが、だんだんと大きくなるにつれて、酔いやすい状況と酔いにくい状況があることが分かってきた。
それでもいくつになっても駄目だったのがマニュアル車のギアの切り替え時のくッとなる一瞬の身体が引かれる感覚と冬場の暖房の生暖かい風が顔に当たる感じ、それと上に挙げたことだ。
これらは今でも格闘している。
この格闘はこれからも続いていくのだろう。
しかし、車酔いを克服できるかもしれない兆しが一瞬だけ見えたことがある
それは、以前船に乗っていたときのことだ。
もともと船酔いは経験がないのだが、船に乗った経験もそれほどない
それまでに乗ったとすれば地元の瀬戸内の海か、箱根の遊覧船ぐらいだから船の本当の揺れを経験したとは言えないだろう
しかし兆しが見えたのは八重山諸島の島と島を二、三十人乗りの船で渡ったときのことだ
その日はあいにくの雨で海も少し荒れていた
欠航になるほどではないようだったが、少し揺れますのでお気を付けくださいというようなアナウンスがあったと記憶している。
それから船は定刻通り出港し、沖合まで出た
すると船は徐々に揺れが大きくなり、小型の船だから、こちらの恐怖も相まって少し気分が悪くなってきた
そのとき自分の身体に必要以上に力が入り、揺れる船に身体が抵抗しようとしていることに気が付いた
そのときふと波に身体を任せてみようと思い、波の揺られるがままに身体を預けると、徐々に気持ち悪さが消えていくのを感じた。
人間には元々水準器が身体の中に備っていて、その水準が崩れる感覚が酔いを引き起こすのではないか
もしそうであるならばその水準器を思い描き、身体のバランスをとるのではなく、あえてバランスをとらないことによって体内の水準器が保たれるのではないか
そうそのとき思った。
これを車でも試したいと思い乗った時に試みるのだが常に揺れているわけでは無いから急に揺られるとつい抵抗してしまうのである。
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