農の考察 #9 菌ちゃん農法は高炭素の有機物分解を促す環境づくりをしている

木質(リグニン)の分解

木質を分解・利用するのは腐朽菌と呼ばれる仲間の微生物だ。木質の成分はリグニンと呼ばれる硬いもので、これを分解するのはなかなか大変なこと。リグニンの分解には微生物の機能的な概念に基づいて白色腐朽、褐色腐朽、軟腐朽とに分けられる。菌ちゃん農法における糸状菌とは白色腐朽菌が作用して分解する白色腐朽だと思われるので、以降は白色腐朽についてみていくものとする。

菌ちゃん農法の畝づくり

セルロースを分解する微生物は多く、好気的にも嫌気的にも分解される。しかし白色腐朽型のリグニン分解には好気性の微生物が不可欠だそう。このことからも白色腐朽菌が増えやすい環境を整えることが重要とわかる。リグニンを完全に分解できるのは少数の菌類と好気性細菌類に限られるということで、菌ちゃん農法で行う高畝にしてマルチを張り水につからずに空気が入る環境づくりは理にかなっているといえる。
また、有機物の分解に伴って窒素濃度が上昇すると、リグニンの分解が抑制されることがあるので、無肥料栽培ができるとしている菌ちゃん農法を試してはいるが、米ぬかや油粕といった有機肥料もリグニン分解の観点からするとむしろ与えない方が良いのかもしれない。窒素を加えない一方で毎年おかわりのおがくず(炭素源)を畝上に積んでいくことでも、窒素濃度が低い状態を維持するのに役立つだろう。おがくずを加えるときには既存のおがくずに新しいものを混ぜ込むのではなく、あくまで上面に積んでいく形をとるのがいいと考える。せっかく畝の中で形成した菌糸ネットワークを破壊することになるからだ。なるべく土の撹乱は避けるべき。

窒素はどこからくる?

ここで一つ疑問がある。炭素高めの有機物を分解しながら菌が繁殖して菌糸を張り巡らせ、作物と繋がりいろんな栄養素を交換する。ここはオッケー。わかる。その中で窒素成分はどこからやってくるのか。菌ちゃん農法では窒素固定菌とも繋がり窒素を供給すると言っていたように思うが、マルチを張ってしまうと根粒菌の活動を期待してマメ科の緑肥を植えることもできないのでどうなのだろうか。根粒菌以外にも窒素固定する微生物がいても不思議ではないので、それらの微生物によるものだと言われれば納得はできる。しかし不勉強でこれというものがすぐには思い浮かばない。ちょっと調べてみようと思う。
また、木質分解が進むに連れて窒素濃度が上昇するので、この窒素で作物が生育できる分の窒素を賄うことができるということだろうか。


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