農の考察 #11 緑肥後トウモロコシ栽培の施肥量と施肥方法

ここ最近の不耕起と緑肥についての論文を見てみようと思い、google scholarで「no till cover crops」と検索して2023年以降の論文を抽出してみると3000件超の論文が出ていることが分かった。単純計算で一月1000件も論文が提出されてこの分野はそれなりに熱いのかなと感じた。月1000件という数字が多いのか少ないのかわからないのだけれど。
最近話題のAIに関するキーワード「deep learning」で2023年以降の論文を検索してみると17000件超で一桁違ってた笑。

まあ3000件もあるのを全部読み切るのは無理なので、気になる論文をピックアップしてありがたく読ませてもらおうと思う。今回目についたのは、

Corn optimum nitrogen fertilizer rate and application timing when following a rye cover crop
ライムギのカバークロップに続くトウモロコシ栽培の最適窒素施肥量と施肥時期

という論文。abstractとintroductionしか読めないんだけど、まあ問題ないでしょう。abstractを読むと、カバークロップとしてライムギを栽培した後、窒素なしの区では窒素飢餓が起きて収量が20%減少したそう。まあそうなるよね。ライムギは有機物生産能が高いのでそれだけ窒素を吸収して成長するわけだ。この成長に利用された窒素は有機物に固定されて次作のトウモロコシの生育に利用されにくい。そこで別の区で窒素を施肥する試験区(0 – 303 kg N ha−1)も設けて調査をしたみたい。窒素施用区ではthe agronomic optimum nitrogen rate(AONR)とthe economic optimum nitrogen rate(EONR)という施肥量の区についての記述がある。初めて見る用語だ。

ここで二つの用語を見てみると、AONRは最大収量を得るのに必要な窒素肥料の量、EONRは収量と利益を最大化するのに必要な窒素肥料の量と訳せるかなと。どちらも収量を最大化させるという点では同じだが、前者は単純に最大収量を得るための窒素施肥量で、後者は収益性も考慮した施肥量の指標でこちらの方が控えめなのではないかと思われる。
これらの試験区では減収は見られなかったようで、やはり緑肥後のトウモロコシ栽培では窒素施用が必要なことがわかる。

さらにこの論文では作付け前に全量施肥する区と施肥を分割して行う区での試験も行っており、結果としては分割施肥の方が施肥量に対する増収量が大きかったとのことだ。トウモロコシの栽培方法ではだいたい5葉期と雄花が出てきたときが追肥時期とよく見るので、これまでの知識と合っているなというところである。

我が家の不耕起緑肥圃場では

現在私のトウモロコシ畑では不耕起栽培と緑肥を組み合わせる方法を試しているのだが、この論文からするとトウモロコシの前作に緑肥としてライムギを作ると減収するので果実が小さくなることが想定される。これは面白くないので、やはり肥料が必要となるだろう。しかし、肥料分として前作にマメ科の緑肥を組み込むことでこの減収は抑制できないかなとも思う。実際、現時点(2023/3/16)では窒素分を期待してマメ科のヘアリーベッチをイネ科緑肥と組み合わせて生育させている。また、単体の緑肥の場合よりも複数の緑肥を組み合わせることで収量が増加するという論文もどこかで見たので、組み合わせの効果も相まって最終的には無肥料でトウモロコシ出来ないかなと想像を膨らませている。
不耕起にして4年ほど経過している。これまではとにかく有機物を地表に増やそうと思い、有機物生産量の多いイネ科緑肥を中心に種まきしてきたが、ある程度有機物の蓄積ができたと考えると、マメ科緑肥を中心とした緑肥の組成に移行してトウモロコシに窒素を供給することを考えるのもいい時期なのかもしれない。

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