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アフタヌーンティー 台本

2022年12月27、28日に家劇場にて上演しましたのびる外部公演
「アフタヌーンティー」の台本を有料で公開致します。
途中まで無料で読めますので観劇した方もそうでない方も良かったら
試し読みしてみてください。


※蛇足ですが文末に一応注意?を書いてますので最後まで読む場合は
そちらもあわせて読んでください。お願いします。

「アフタヌーンティー」
 
12月末。夕方という時間は短く、すぐに夜がやってくる。
暗闇で全てが見えにくいその部屋に、二人の声がだんだんと近づいてくる。
 
石川「それさー。めんどくさってならないの?」
山田「ならない。もう習慣だから」
石川「昨日は何書いた?」
山田「えー……何だっけ。昨日、昨日昨日」
石川「え。前前前世みたいな言い方やめて。日記開いて確認しなよ」
山田「持ち歩いてないから。あと日記じゃない。振り返りだから。
  今日を振り返る事で、これにはどんな意味があったとか、前と比べて
  成長があるかって確かめて自分の生活を良くするためにやってるから」
 
      二人、部屋に入ってくる。
 
山田「(部屋)暗いねー」
石川「電気つける。自分のやった事や起こった事ってそんなにちゃんと
   全部意味あるのかな」
山田「あるって」
 
      石川が電気をつけ部屋が明るくなる。
      和室が現れる。
 
山田「あー。すごい。いい感じ」
石川「本当?」
山田「え? 本当だけど?」
石川「山田くんのセンス的に本当?」
山田「俺のセンスって何。俺の意見より石川さんの店なんだから
   石川さんがどうしたいかでしょ」
石川「ふーん……」
 
      山田、置いてある小物を手に取り
 
山田「これとかかっこいい」
石川「え。そうかな」
山田「南米っぽい」
石川「どこが?普通にチャイハネとかだったと思う。
   あとこれ飾ってるんじゃなくて普通に私の私物」
山田「なんだ。ちなみにどこからどこまでが店になるの?」
石川「もう一個部屋があるんだけど、」
山田「うん」
石川「そこは私の部屋兼作業場になるかな」
山田「うん。え。お客さんが入るのはここと?」
石川「うん。ここだけだね」
山田「ほー……。さっきの玄関からここまでがお店って感じね」
石川「そうだね。」
山田「厨房……ていうか台所? とかはお客さんは入らない感じ?
   まあ入んないか。」
石川「そうだね……あんまり見られたくないしお客さん入ってる時は
   既に出来上がったものを台所から出すって感じだしせいぜいお湯
   湧かすくらいになるかな」
山田「なるほどね。まあでもこの感じだったらそんな全方位に飾り付け
   って感じじゃないよね。さりげなく玄関の靴箱の上の壁とか、」
石川「ちょっと待ってね。お茶持ってくる」
山田「お構いなくー」
 
      山田の話に相槌を打ちながらも石川は台所へ行き、
      山田に出すお茶やお茶菓子を用意し始める。
 
石川「他は? 何か案ある?」
山田「あとは廊下の壁とか」
石川「何で壁ばっかなの?」
山田「あ。本当だわ。いや正直俺空間にあわせて云々ってやった事なくて
   てか石川さんのが絶対センスあると思う。人生経験も違うだろうし」
石川「何それ。ないよ別に」
山田「俺パスポートすら持ってないから」
石川「私だって30なって初めてとったよパスポート。
   って話、私、前に山田くんに言ったんだっけ」
山田「いやしてないけど。でもどっちかっていうとあれでしょ?
   お茶のみながら縁側っていうか庭を見る感じが良くない?」
石川「山田くんって植木とか庭いじったりもやれるの?」
山田「いやそれは出来ない」
石川「じゃあ駄目じゃん」
山田「紹介はできるよ」
石川「私は山田くんにお願いしたいんだよ」
山田「あー。それはどうも。でもね、ぶっちゃけそんなちゃんと契約って
   してくれなくてもあれよ? こう、予約が入った日に石川さんが直で
   うちの店来てもらって、相談してもらって、何本か切り花買ってく
   って感じでいいと思うんだよね」
 
      石川、テーブルにお茶とお茶菓子を置く。
 
石川「どうぞ」
山田「どうも。熱そう」
石川「熱いよ」」
山田「あ。でもうまい」
石川「何か警戒されてる? 気のせい?」
山田「別に警戒してないから。俺契約取る為に良いと思って無い事で
   金取るのが好きじゃないだけ。「皆を幸せにする花屋」って言う
   コンセプトを本気で守ってるだけだから」
石川「へー」
山田「やめて。冷めた目で見ないで」
石川「見てないよ。一緒だよ、私も。自分がしんどかった時に、こういうの
   あれば良かったのにって思って、だからあの時の自分を救う気持ちで
   ひとを幸せにするカフェがやりたいなって思って」
山田「いいと思う。和カフェって足も崩せるし、本当の意味でリラックス
   できると思う。畳の感じとかもやっぱり懐かしいって思うし」
石川「ありがとう。でも普通警戒するんじゃないの? 
   だいたい何年も会ってない、いやもう何十年か。
   そんな何十年も会ってない同級生が急に親しくしてくるのって 
   マルチとか投資とか宗教だし。最近だとスピリチュアルとか」
山田「へー。そうなんだ。あんまりそういうのなかったから。久しぶり」
石川「それはもうやったでしょ」
山田「いやそうだけど。ほらこないだはあんなとこだし
   ちゃんと喋れなかったし」
石川「私あれサクラだったんだよね」
山田「え?」
石川「だから婚活はしてないの、本当は」
山田「まあいいんじゃない」
石川「ごめんね。真剣に相手探してるのに」
山田「別にいいよ」
石川「山田君は結婚したいのか」
山田「したいっていうか、もうそろそろしなきゃじゃない?」
石川「そうなの?」
山田「だって俺らもう30超えたよ?」
石川「最近は晩婚だっていうし大丈夫なんじゃないの」
山田「いや、だから、今すでに、晩婚だからね。今から結婚しても」
石川「そうなんだ」
山田「俺弟二人いるんだけどさ」
石川「ああ。双子の」
山田「そう。よく覚えてるね」
石川「だって一緒に登校してたから」
山田「それ。まじきつかった。俺小6の、友達と学校行きたい盛りにさ、
   小学校入りたての弟二人と登校だったから」
石川「えらいよね」
山田「で、その弟が一人は一昨年結婚してさ、まだ25とかなのに。
   で、来年もう一人の方も結婚すんの。そんでそんくらいから
   何か親も弟も俺に彼女いるのかとか婚活しろよとか言わなくなって
   きてさ、あー。これは逆にもう笑えなくなってんだなと。
   これ以上心配かけるのやめようって」
石川「そんで婚活始めたの?」
山田「うん」
石川「親の為に?」
山田「親の為っていうか、まあ結婚してやっと一人前だと思うし、
   まあもちろん親が安心するならそっちのがいいし」
石川「ふーん。アプリとかはやらないの?」
山田「やった方がいいよなーって思ってるんだけど……
   まだやってない。実際男は金かかるらしいし大変だって聞くし」
石川「ああいうパーティーのが多いの?」
山田「いやあれが初めて」
石川「そうなんだ」
山田「いや俺結構言い訳多いよな。ちゃんとやる。
   とりあえず来年はちゃんと」
石川「今年はやらないの?」
山田「年末だし。年末って皆実家帰ってるだろうし
   あんまり出会いなさそうじゃない?いやこれも言い訳?」
石川「婚活パーティーにいた女の人たちさ、実は全員サクラなんだよね」
山田「え?」
石川「ひと集まらなくて、女も男も。だから開催やめようと思ったら
   たった一人申し込みがあってね」
山田「それが俺?」
石川「うん。だからあの日いた女の人たちだけじゃなくって、
   山田くん以外の人全員がサクラ」
山田「そんなトゥルーマンショーみたいな事ある?」
 
      石川、笑う。
 
山田「あー。これ石川ジョークじゃん。思い出した」
石川「え?」
山田「学級新聞のさ、漫画。石川さん新聞係りだったでしょ?
   だいたいこういうちょっと怖い話みたいな感じのネタ入れてたよね」
石川「全然ウケなかったけどね」
山田「いや俺面白かったけど。ああでもほら、なんだっけあれ。
   冬休みの前さ、四コマ漫画総選挙でさ、一位とったよね」
石川「うん」
山田「逆に俺あの一位とったネタいまいちだったわ」
石川「山田くんは大竹さんに票入れたんだよね」
山田「そう! え? 覚えてんの?」
石川「うん」
山田「あれさー、何で一位取ったのかいまだによくわからんわ」
石川「私はわかるよ」
 
      石川、お茶菓子をほおばる。
      ほおばりながら喋るので、山田には何て言っているのか
      いまいちわからない。
 
石川「あの時さ、一位になった人がサッカー部の事取材して漫画にするって
   流れだったのね」
山田「え? 何て言ってる?」
石川「畠山くんっていたでしょ。サッカー部の。あのえらそうな奴。
   私好かれてたの。畠山がこの漫画がいいって言ったらそうなるの」
山田「あのさ、悪いけどぜんっぜんわかんないから食べ終わってから言って?」
 
      石川、もごもごと食べ続けているが全然食べ終わらない。
      手持無沙汰になっている山田。
 
山田「お茶飲む?」
 
     石川、首を横に振る。石川が食べ終わるまでやる事のない山田は
     何となくお茶を飲む。しばらくして、食べ終わり
 
石川「というわけで、あれは私の漫画が良かったんじゃなくて政治的なやつ」
山田「え? 政治とかあったの?」
石川「そう」
山田「肝心の所全然聞き取れてないんだけど」
石川「あんまり聞いて欲しくなかったから」
山田「だから食べながら喋るって発想になるかな」
石川「なったね」
 
      石川、もうひとつお菓子の袋をあける。
      今度はさきほどのような食べ方はしない。
      何を言うか考えながら咀嚼しているような様子。
 
石川「あのさ、私さ、資金繰りとかもまだまだ大変で、サクラのバイトとか
  試験監督とか、時間あればとにかくバイト入れるようにしてたん
  だけど、そこに私の感情とかはなくって、何かただこなすだけって
  感じで、意味とかなくて……えー。うまく言えない」
山田「……」
石川「いや山田くん何とか言ってよ」
山田「え。何で俺が」
石川「ちょっと恥ずかしいんだけどさ、
   山田くんと会えたから意味あったなって思って」
山田「あー……え?」
石川「サクラのバイトやって良かった」
山田「え。何。普通に怖い」
石川「怖くないよ」
山田「石川さん、そんな事言う人じゃないでしょ。え。何。本当」
石川「あのね、もし山田くんさえ良かったら何だけど……」
 
      山田、次の言葉を待つ。
      山田を見つめる石川はなかなか次の言葉を言わない
 
山田「告白っぽいフリやめて」
石川「どうする? 本当に告白だったら」
山田「石川さんは面白いし良い人だけど」
石川「うん」
山田「結婚ってなるとちょっと違うかなと思うし、友達をそういう目で
   見るの俺ちょっと嫌かな」
石川「山田くん、女の友達多そうだもんね」
山田「わかんない。多いっていうかまあ男女比半々くらいじゃない?
   大学卒業してからそんな皆ともしょっちゅうは会えてないけど」
石川「そんなに女がたくさん周りにいても結婚できないのは皆友達
   だからか。ねえ山田くんって女の子と付き合った事ないの?」
山田「あるけど。話それてるよ」
石川「え。こっちのが気になってきた。誰?」
山田「テニス部の時の後輩と、あと大学のサークルの時の後輩」
石川「年下が好きなの?」
山田「別にそういうわけじゃないしどっちもすぐ別れたし」
石川「へー。でね、私の告白なんだけどさ、山田くんに私の
   ビジネスパートナーになってもらえないかなって」
山田「え? いやそれはさっきから言ってるけど、役立ちそうなら手伝うし
   でも資金繰りも大変とかっていうなら無理せず花入れるとかは追い追い」
石川「山田くんの土地を借りたり出来ないかな。その、茶葉も自分で
   育てたいなって思ってて。あー。やっと言えた緊張した」
山田「いやそれも聞いたし最初に。でも畑はいま正直空いてないだろうな。
   あと畑やってるのは俺じゃなくて親父と弟たちね。何か最近は
   インドカレー屋に卸すスパイス系のハーブ始めたら
   結構需要あったみたいで。いや一応聞いとくけど」
石川「山田くん名義の、使ってない土地があるよね」
山田「え? ああ、婚活パーティーの時に書いたからか……
   使ってないけど正直使えないから俺名義でとりあえず持ってるって
   感じで場所も悪いし、ていうか山だし」
石川「全然大丈夫。見てきたけど問題なかった」
山田「え。何で場所知ってるの?」
石川「たいした事じゃないよ。名前とだいたいの場所が分かれば法務局で
   教えてもらえるから」
山田「正直そんな最適な場所って言えないと思うんだよね……
   どっか他に出来そうな所聞いてみようか?」
石川「信用できる人から借りたいの」
山田「わかった。まあそんな変な知り合いいないけど」
石川「じゃなくて、山田くんが信用できるし山田くんから借りたいって事。
   て、言うのが何か照れくさくて告白っぽくなっちゃった」
山田「別になってないよ」
石川「えー」
山田「土地かぁ……ていうか茶葉ってそんな山とかで育てられるもんなの?」

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