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なかのアセット 晴れ、ときどき台風 (第三回) 「株価の中身を理解する」 居林 通

前回のコラムでは、株価は(一部の)他人が決めるもの、ということを強調してお話ししまた。

しかし、株価は他人が決める、と言っても何も根拠がなくて株価が偶発的に決まっている訳ではありません。では、株価は何に基づいて決まるのでしょうか?

筆者は株価の決まり方には3つのパターンがあると思っています。
 
1) 株価が(近い将来の)利益によって決まっているパターン、 
2) 株価が企業の純資産(資産から負債を引いた残り)に基づいている場合、 
3) 株価が「遠い将来」の期待値を織り込んでいる場合
 

の3つです。

1)の株価が(近い将来の)利益によって決まっているパターンは、株価と業績予想がきれいにリンクします。 業績予想は12か月先のものを使っていますが、例えば、ローム(6963)のケースを見るとこんな感じになります。 

多くの株価は業績の動向と株価の動向がラグタイムはあるものの、連携するものです。 しかし、その連携がなぜか、一時的にほどけることがあります。 その時こそ、企業調査の出番です。 その株価と業績のリンクがほどけたのが、なぜか、それは戻るのか? それとも、もどらないのか? この判断は、その企業の事業内容に対する深い理解と株式市場の動きの理解の両方を必要としますが、投資家としての腕の見せ所でもあります。 

一つ例を挙げてみましょう。 下のグラフはイビデンです。 2021年から2022年まで業績は横ばいで居したが、株価は大きく下落しました。 新しい投資が発表されたことやアメリカのパソコン・サーバー向け半導体の需要が落ちつつあることを懸念した株式市場は業績はピークに近いと考えたのでしょう。 実際、業績(青い線)はその後低下を続けました。 しかし、株価はその前に4000円近くから9000円まで上昇しました。 さて、皆さんはどうしますか? なかなか、難しいパターンですよね。

この場面で私が大事にしていることは、確信が持てるまで調査し考え続ける、ということです。 希望的観測で投資に踏み切るのは良くないことだと思います。 わからない、という結論も当然あり得ます。 この「わからない」ということを認めるのも投資の重要なプロセスの一つなのだと思います。 正直10銘柄調べて、一つもこれはいける、という確信の持てないことはよくあることです。 それならば、それらの銘柄をもっと深く調べるか、ほかの銘柄に移動する必要があります。

さて、次に移りましょう。 

2)株価がその企業の純資産(資産から負債を引いた残り)で決まるケース、は投資判断としては、割合シンプルだと思います。 配当利回りやPBR(株価の純資産に対する割合)を見て判断してゆきます。 仮に高い配当利回りであったとしても油断は禁物です。配当利回りは、配当性向や自己資本比率なども見ないとその高い配当利回りが将来も続くのか判断できません。 PBRは低い方が株価は割安ということになりますが、業績が大きな赤字を出しているような企業ではPBRが1倍を割っている場合でも、安直に割安であるとも言えません。 

とはいえ、企業分析と株価分析の観点からは、この辺りは入門編と言えるでしょう。 PBRが0.9倍以下、配当利回りが3%以上、ROEが6%以上などの条件でスクリーニングをかけてみると面白い銘柄が浮かび上がってくるかもしれません。 かつての日本の商社もそうでした。 商社がその企業行動を大きく変化させ、ウォーレンバフェット氏が大幅に買いに入るまで商社のPBRとPERは非常に低いものでした。 割安だが、会社の経営陣が自社の経営を大きく変えると対外的に話している、もしくは業界構造が変化しそうな業種を探してみるとよいでしょう。

最後は、
3) 株価が「遠い将来」の期待値を織り込んでいる場合、です。
これは、特に赤字が続いていたり、非常に低い利益しか出ていない企業に当てはまります。 特に、売上は急速に伸びているのに投資先行型で利益が出ていない企業は、足元の利益は赤字であったり、低水準なことがあります。 だとしても、今後の売り上げが大きく伸びれが利益も大きく伸びるということが考えられます。 

創業期からしばらくのAmazon.comも赤字が続いたのは有名な話です。 この場合には、その企業の売り上げが伸び続ければ、いつかの時点で利益が上がりだし、その利益率は急速に上昇するというビジネスモデルになってる必要があると思います。 売り上げが伸びても、利益率が低水準であるというのであれば、遠い将来の期待値を織り込んだ株価にあまり魅力はないはずだからです。

つまり、足元は何からの理由で(広告宣伝費などが先行しているなど)で赤字であっても、売り上げは大きく伸びており、これからもその売り上げの伸びが続くことが見通せる企業の将来を買うという投資になります。 

このように、株価と業績の関係は一概には語れませんが、それでも関係があると思います。その関係をつかむことが、アクティブ投資家の第一歩だと私は信じて疑いません。

次回は、為替のお話を少しさせていただきます。 こうご期待!

(第三回)

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