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「自由」そして「イメージの世界」~ 個人投資家宣言のこと (2)

こちらのNoteは運用チームメンバーが“自由に”リレー形式で書いているものです。
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前回は、大人気アニメの魔法学校卒業生 少女カンネを引き合いに挙げ、魔法と同じで投資方法は自由。ただ、フリー、フェア、そしてグローバルな市場は、公のプラットフォームに違いないが、時に、巨大な激流が巻き起こったり、あるいは意図的な相場操縦をしかける輩まで潜んでいることも含めて、血も涙もない世界という側面があることにも触れました。
 
時間の経過に堪える投資の技術面についていうと、アニメの世界の魔法同様、生き残り大きな成果を上げるためには経験が必要。それこそ千本ノックのような訓練の積み重ねで身に着くはずであって、「これだけ」とか「簡単」などという謳い文句の対極にあるものだと述べました。
 一方で「投資においてさらに重要なのは、技術以上にものの考え方にある」と私は思っています。ものの考え方が違えば、人生や社会の見え方が違ってくると信じているからです。

そこで、”人生や社会を豊かにするのはものの考え方だ” ということを基調に、2003年に「理念と実践と交流」を三本柱で立ち上がったインベストライフという月刊誌の存在に改めて触れました。
 
さらに、クラブ・インベストライフが主催した<生活者の長期投資元年>「投資ルネッサンス2007」と、東京・銀座のブロッサムに集まった400人弱の個人投資家の皆さんと 「個人投資家宣言」 の採択に至ったことをご紹介いたしました。

個人投資家宣言のこと


ここからは、記録(月刊誌 インベストライフ 2007年2月号)に残っている編集委員たちの当日の言葉もあわせて紹介させていただこうと思います。 
 
起草当時、長い時間をかけて、編集主幹の伊藤宏一先生、岡本さんや澤上さん、村山さん、ファンドマネージャーの平山さん、速水さんをはじめとする編集委員同士でいろいろと議論したことは現在でも記憶しております。
 
これは制定法の世界でもよくあることだと思いますが、面白いことに、文章にまとめられ採択された後は、言葉は言霊をもちえます。
社会が変わり、時間がたつ中で、当時の編集委員たちの思いとは、ひょっとしたら異なった意味や意義が生まれている可能性もあるということです。 

さて、リーマンショック前の「個人投資家宣言」は、2024年の今にどう映ることでしょう。
 
たとえば、この原稿を書くにあたって、資料を読み直したのですが、当時の伊藤主幹が、「私は、明治元年の「五箇条の御誓文」を起草した由利公正を念頭に議論に参加した」と寄稿されていたことなど、私はすっかり忘れておりました。それでも、「個人投資家宣言」 は言霊をもって残っております。
 
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まずは前文です。

前文


 私たちは、幸福で自立的な生活と持続可能な良い社会づくりのため、
クラブ・インベストライフの呼びかけのもと、本日、全国から東京に集い、熱心な議論を行った。
その結果、自立的な生活者の長期投資が、日本と世界の未来を切り拓く、
「あるべき投資の本流であり大河」であることを確信し、
熱き心と高き志を持って、次の五箇条を高らかに宣言する。

 
 2007年1月14日 岡本和久さんは前文をこのように紹介されています。
 
― 私たち、編集委員は、個人投資家が投資を行う際の基準というか、基本的な理念について過去、数か月にわたって議論してきました。それぞれの投資家が異なった投資目的をもち、また、異なった投資手法、異なった証券市場の前提を持ちわけですが、投資行動が「健全」であるためにはどのような点を守るべきかを考えてきたわけです。
 
今の私なりに解釈すれば、「投資は自由であるべきだ」を認めつつ、その投資行動が「健全」であるために大切な五箇条を選んだとおっしゃったのです。
 
ちなみに、現在、インベストライフは、特定非営利活動法人 みんなのお金のアドバイザー FIWA通信となって、どなたも読めるものとなっております。 https://fiwa.or.jp/investlife/

   バブル崩壊から2000年代にかけて、Barclays Global Investors - BGI(合併によりBlack Rock に看板が変わりました。)は日本の年金運用業界でグングンと運用残高を増やし、トップに上りつめます。
  岡本さんといえば、そのBGIの日本法人をいちから作りあげた日本における年金運用業界の歴史的重鎮です。(BGIの作ったETFがi-Shareです)
 岡本さんは、現在もみんなのお金のアドバイザー FIWAの代表理事会長で活躍されており、直近のインベストライフVol. 257 ~今月のひとこと~ でも、大変興味深いお話をされています。

 この個人投資家宣言が採択されたしばらく後に、リーマンショックが来るわけですが、それを乗り越えた方々の「長期投資のための思いも寄らない秘訣」です。 
ぜひ、こちらもお読みいただくとよろしいかと思います。
https://fiwa.or.jp/investlife/archives/8001

第一条
「私たちは、生活の一部として、長期投資を学び実践する」


ありがとう投信のファウンダーでもある 村山甲三郎さんがこれを朗読され、3つのキーワードがあることを指摘されました。 
 
― 生活、 学ぶ、 実践するー

ー 投資とは「大切なおカネを投ずる」、「おカネに働いてもらう」ことです。それから返ってきたリターンを「ありがたいなぁ~」と思っていただく。 それが我々の生活を支えるわけです。
また、投資先の企業も、我々の生活のなかにあるわけです。つまり、投資は生活の一部なのです。
 企業のオーナーになって、一緒に汗を流すつもりで投資をする。それが長期投資です。 しかし、投資はただやみくもにおカネを投ずればいいわけではありません。
  いくつかの基本的なルールとか原則があります。それを学ばないと長期投資のパワーを享受できません。
  そして、最後が実践。いくら学んでも実践がなければ何の意味もありません。


改めて、この第一条を読んで私はこう思いました。 
・ 生活者として、自分のもっているおカネにも働いてもらう。
・ オーナーシップをもって企業と同じ船に乗る。
・ 複利で価値を創造できる企業を選びぬき、それらを組み入れた株式のポートフォリオにより、収益の複利効果を得ていく。
・ 猪突猛進ではなく、自分のとれるリスク許容度を理解したうえで、投資を実践していく  
 
村山さんの言葉をヒントに、おひとりおひとりがご自分の言葉で言い換え、考えてみてはいかがでしょう。 (つづく)
 
運用部 シニアポートフォリオマネージャー  菅 淑郎  CFA
 
 
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本文で触れた「個人投資家宣言」 に関するイベントが催されます
 
6月30日 このような記念イベントも、当社近くのFinGATE KAYABAにて、 当社の中野社長もパネルディスカッションで登壇予定です。
 

この記事は情報提供を目的として、なかのアセットマネジメント株式会社によって作成された資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
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