見出し画像

「自由」そして「イメージの世界」 No.4 ~ 業績予想に向けて

こちらのnoteは運用チームメンバーが“自由に”リレー形式で書いているものです。
=========================
 
「まさか本当に結界を破壊するとはな。」「なんでこんなことを。。。」
「カンネがかわいそうだったからね。魔法は自由であるべきだ。」
「魔法はイメージの世界だ。水を操る魔法使いに雨の中で勝てるイメージができる?」  # 出典: 葬送のフリーレン 第45話
 
―「魔法」は自由であるべきだ。「魔法」はイメージの世界だ。―
 
今回から、当初予定していた「取材準備シリーズ」を書くつもりで、またまた、大人気連載漫画のこのシーンのセリフをなぞって、ちょっと書き換えてみました。
 
「投資の発想」は自由であるべきだ。「業績予想」はイメージの世界だ。
 
これはこれで座りがよさそうです。
 
調査先の業績が長期的にどのようになっていくか? 言ってみればイメージの世界です。
アナリストに限らず、お仕事をされている個人投資家の方も、ご自身の自由な発想から企業を発掘され、業績がこう伸びるはずとか、この商品やサービスの売上がこう成長するとかイメージをもって、株式投資を楽しんでおられることでしょう。 自分の場合はどうか?

目標や数字より理念や価値を最初に

そもそも対象としている企業に共感できる可能性がありそうかどうかから、取材対象とするかどうかを決めています。 これは準備段階で、ある程度わかります。

取材をするときに、真っ先にお話ししているのは、私たちの会社と運用部についての紹介。なんせ、バリバリのスタートアップ企業ですから。
次に、調査先のどこが素晴らしいと考え、共感しているかについて切り出してから、だいたい対話を始めています。通常の場合、相手に対する共感が最初にきてますから自然にそうなります。
 
同じ文脈で、運用部長の山本が、2024年7月の月次レポートやnoteコラム「なかのアセットといえば、骨太エンゲージメント ~優れた倫理と優れたビジネスは同じもの~」などで、運用部の指針を紹介しております。

Photo by michisora7

”長期投資の対象企業と、共感から始める企業価値の向上を私たちは以下のステップで目指しています。
 
ステップ1  理念や価値感をまず共有する。

ステップ2  共感すべき価値観を友達や知り合いに伝え 共感の和を広げる
ステップ3  理念や価値への共感の総和を増やし、企業価値が向上する。

 
共感できる価値の和を広げて、世の人々の共感の総和を積み上げていくそんな運用部です。”
 
なかのアセットでは企業理念、事業の社会的な意義について、ゆっくりと掘り下げて考えることが求められます。投資先の企業理念に共有できるかどうかが求められます。そして、社会的な意義、企業理念に共感が持てない場合、理念が弱い場合、社会的な意義がいまひとつはっきりしない場合、ポートフォリオには組み入れることはできません。
 
私たちは、「優れた倫理と優れたビジネスは同じ」であると考えています。 その企業の目指しているありたい姿を考える。 今の市場コンセンサスがそうでなくとも、企業価値向上のトリガーが確実に存在し、その共感の和が広がる可能性があるものなのかどうなのか?

相手先の理念や社会的意義に共鳴できるか否かが、最初の大きな試金石になります。

企業の理念と志の高さ

私たちの住む世界には、人類の力だけではどうにもならないことがあります。一方で、その様々な社会的な課題を解決しよう、よりよい社会にしようと多くの人々が働いています。
不可逆的なメガトレンドと呼ばれるものは、そうした関係の中で形成されていくように思います。
 
思いつくままに列挙しても、
①食糧難の解消 ②環境保全・保護 サステナビリティ ③疾病の予防治療 ④新エネルギー ⑤人口動態と所得の変化 ⑥グローバルな地産地消化 ⑦新興国の都市化 ⑧VRやAI ロボット・オートメーションの進展 ・・・ 

など枚挙にいとまがありません。
 
こういう概念について、自由に発想を飛ばして、フローチャートに書いてみようよ! という訓練を継続的にためしたことがありますが、私の場合は習慣として続けられませんでした。 時にメディアから、あるいはなんらかのとっかかりで、自分の知らないところで起きている社会的な課題の存在に気づきを与えられることが多いです。
 
そして、どのような社会課題を解決しようとしているのかという観点から、調査先の企業理念や志の高さを見ていることになります。 その企業の人たちをこのヒトたちどういうヒトたちなの?と問い、統合報告書や会社の説明会資料などを読んだり、財務諸表を見ることから理解しようとします。
 
実際、「共感の総和」の片鱗は時間がかかっても、財務諸表にもすでに反映されはじめていると、私は考えています。 

競争優位性

続いて大切なのは、その企業の競争優位性についての考察です。
利益と成長の源泉はどこにあるのか? 
 
これを理解するうえで必要なのは、業界動向や競合状況、その企業の立ち位置を考察します。遠い未来については、大胆な仮説が必要となるケースもあることでしょう。
 
何がその企業の競争優位性を生んでいるのか? 
それは再現性をもって、持続していく仕組みが構築できているのか?
ひとつに限らず、参入障壁が何だと特定できるのか? また、その壁を高く強くするビジネスモデルはどうなっていて、経営陣は、技術力、マーケティングやディストリビューションの観点からそれに整合した戦略を考え、きちんと実行・機能しているのか?
 
もちろん、完璧なヒトもいないように、完璧な企業もまずは存在しません。
足りないとしたら解決すべき課題として、そこはどのように認識されているのか?

サービスと製品技術力

順序が前後しましたが、圧倒的な競争優位性、利益と成長の源泉を生むサービスや製品の技術力についての理解を深めるために、知財を含めた、専門的な見識はどこかしこで必要になります。 そこが、どういうものか言葉にしてわからなければ、アナリストとしては1mmも動きようがない体験をすることが何度となくあります。 大いに勉強と努力が求められるところです。
 

フランチャイズ・バリューが成長を生む

こうした企業の競争優位性が、固有のフランチャイズ・バリューをもたらします。
内部でずっと続けてきた企業変革がフランチャイズ・バリューを築きあげ、参入障壁を高める結果となり、高められたフランチャイズ・バリューが成長ステージを一気に創り出すこともあります。
 
逆に、あそこが儲かりそうだと競合目白押しの成長市場に新規参入しただけで、競争優位性やフランチャイズ・バリューが出来上がることはほぼありません。
そこで、どうしても大切なのは、その企業の絶対的な、あるいは相対的な競争優位性についての考察になるわけです。

ガバナンスと財務評価


現場に権限をもたせ スピード感をもって 収益力と成長力を向上させる方向で組織が動いているかどうか。前述の、壁を高くする戦略の遂行と重なるところです。
 
有価証券報告書や統合報告書(アニュアルレポート)に記載されている、過去の情報も非常に重要です。 企業の沿革や超長期の財務諸表データの系列から、思わぬ変化が見えてきたりすることはよくあることです。 「共感の総和」が数字になって反映され出しているという話はここです。財務の安定性についてはいうまでもありません。
 
有価証券報告書を読むと、実にいろいろなことが書かれています。
経営陣の情報だったり、設備や流通経路の説明があったり、見込み生産だと思い込んでいた製造業が実は、リードタイムの短い受注生産だったり、はたまた、思わぬステークホルダーがわかったり。
 

「業績予想」はイメージの世界


 今後、事前の取材準備の具体例をいくつかnoteの運用部だよりにも、あげていこうかと思っています。
 
以上のような枠組みの考察を通じ、いくつかの仮説をたて、実際に企業を取材した後に妄想ではなく、蓋然性の高い「イメージの世界」を描ければ嬉しくなります。
 
業績が今の数倍に今後の10年以内になることが想定される状況にあるのかどうか? そしてその確度が高いものなのかどうか?
 
ひとつありがたいことに競争優位性のある企業、フランチャイズ・バリューを有する事業の方が、そうではない事業よりも、アナリストとして業績のイメージがつくりやすくなります。長期投資が優位な所以でもあります。
 
絶対的あるいは相対的な競争優位性を有する事業や企業であれば、業績予想のイメージを具体的な数字の形で表現していくことに自信がもてるからです。
 
(つづけます) シニアポートフォリオマネージャー 菅 淑郎 CFA

この記事は情報提供を目的として、なかのアセットマネジメント株式会社によって作成された資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
投資信託は値動きのある有価証券等に投資しますので基準価額は変動します。その結果、購入時の価額を下回ることもあります。
また、投資信託は銘柄ごとに設定された信託報酬等の費用がかかります。各投資信託のリスク、費用については投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
商号:なかのアセットマネジメント株式会社(設定・運用を行います)
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第3406号
加入協会:一般社団法人投資信託協会