馬と人のポートレート
私は仕事で撮る写真の他に「自分が撮りたい被写体を撮る」ライフワークの題材として「馬と人のポートレート」を撮影しています。
馬というと競馬を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、私は主に馬術競技の選手やそれに関わる方々を撮影しています。競馬に比べると馬術というキーワードはなかなか出づらいかもしれません。
私が初めて馬術と出会ったのは北京オリンピックでした。当時所属していた会社の仕事で開幕一ヶ月前に急遽馬術担当として現場に入ることが決まったのです。初めてのオリンピック取材が馬術となり、この時初めて「馬術」というフレーズが頭の中に浮かびました。それまではオリンピック種目であることすら忘れていたくらいです。当然先輩カメラマンと共に北京に向かうのだと思っていましたが行き先は香港だと告げられ、頭の中は??状態でした。色々調べて見るとオリンピック種目で唯一動物と出場する馬術は馬の検疫の関係で競馬場のある香港で開催されることを知り、急いで香港行きの準備をしたのを覚えています。
直前に取材が決まったこともあり、国内で練習撮影をすることさえも出来ずに本番をむかえるというドタバタから取材はスタートしました。2週間に及ぶ撮影期間中は毎日がホテルと競技場の往復。それが功を奏したのか黙々と撮影していると段々と日を追うごとに人馬の息遣いが聞こえるようになり、彼らの美しさに魅了され、気がつけば馬術のファンになって帰国しました。
今振り返るとこの出会いは運命だったのかもしれません。
馬術は人馬一体という言葉で表現されるように馬と人の信頼関係がなければ成り立ちません。馬と人(ジョッキーではなくライダーと呼びます)はたくさんの時間を共に過ごしながら意思疎通を図って行きます。何年もの間、同じ時間を過ごしながら彼らはお互いが何を求めているのかを探るように会話をしています。馬は優しい目でこちらを見つめてくれ、人は馬の側に寄り添います。そんな時間と空間がとても好きで私は競技では見られない姿を見るために厩舎へと出かけてはシャッターを切り続けています。
競技中では見ることが出来ない優しく、穏やかな瞬間はいつも私の心を満たしてくれます。私が撮影した写真から彼らの声と体温を感じていただけますと幸いです。
写真はWebサイトでご覧ください。
webサイト https://www.nakanishiyusuke.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/y_nakanishi_photo/
プロフィール https://www.nakanishiyusuke.com/about
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?