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あかい蝶

短歌 中西まさこ

硝子ガラスの内側にあかい蝶がとまっている 戸を開けた隙に入ったか

人間の命をまもる窓の硝子の一枚が 野生の命をめている

蝶を外へと放してやりたいのに この窓は嵌め殺しハメゴロシ窓 ひらかない

ハメゴロシ窓を「ピクチャーウィンドウ」と呼んでいた設計士

窓枠が額縁がくぶちとなった森の絵の中 とらわれた蝶が羽根を打つ

窓から近い戸を開けて手箒てぼうきでそうっと蝶を促す うまくいかない

手箒に乗せようとしても蝶は拒む 硝子ガラス面をはたはたと滑っている

蝶の背後に立つ私の心を蝶は知らない お前を救ってあげたい私の

窓硝子に逃げ惑う蝶が動きを止めた一瞬に指でつまむ 戸の外へ森へ放つ

この窓の内側に囚われた蝶が私なら 背後に立ち私を放してくれるのは誰

初出:『未来山脈』2014年9月号

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