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Не Знаю...(小沼潔)


はじめまして。小沼潔と申します。不定期ではありますが、作品を投稿していこうかと思います。何卒宜しくお願い致します。


 たぶん、この世界の誰に聞いても、あの年は暗黒時代の始まりだっていうんだろう。僕も間違いなくその一人であって、どうにかして別世界に行ければいいなと思うことも少なくなかった。かといってタイムマシンが作れるわけでもないし、まして時間を司る論理なんてのを知っているわけでもない。物理学は最も僕の知識欲からかけ離れた存在領域だ。

 しがない大学生、っていうのが僕の肩書で、妬んでなのかどうなのか知らないけど、辛うじて僕を知っている人は高等遊民なんて呼ぶことがある。たしかに僕はバイトなんかしなくても一定のお金が入ってくるし、その金額も少ないわけじゃない。行きたいところに向かう旅費なんかも余裕をもって用意できる。学費や光熱費はおのずと解決されている問題だし、そのおかげで生活水準は並の大学生以上なのかもしれない。かもしれない、っていうのは、他の人の事情を知らないからだ。自他共に認める、友人を作れない体質なのだ。人と喋るのは嫌いじゃないんだが、人付合いの何たるかを一切理解できず二十数年を生きてきてしまった。大学に入ったらそれなりに自分と肌が合う人に出会えるって言われていたのに、大半の大学生活を一人で送ってきた。周りのみんなはノートの共有だとかそういうことをして期末考査やらなんやら凌いでいるらしいけど、僕にその手立てはない。といっても、欠席する理由も無いから困ることは無かった。ぼちぼちの成績を修め、別に親に迷惑をかけることも無く大学生活が過ぎていった。

 ただ、こんな中で「災禍」が起こった。生活に支障こそないけど、僕はあれ以降さまざまな「人間的文化」が失われた気がしている。人間たちが、人間でいられなくなる瀬戸際に立たされた気がしていた。実際、経済のために働く理性的人間だけが表出し、感覚や本能に基づく動物的・文化的人間の喪われた時代に陥ってしまった。

 僕自身はというと、別に経済的問題に立たされることは無かった。というもの、僕の金銭的基盤である両親の職に何ら影響はなかったのである。県の職員とテクニカルなコールセンターの管理職の下に生まれたおかげで職を失うどころか、給与の変化すら皆無だった。別に生活に困ることは無かった。
ただ問題は、文化を失ったという意味での被害を被ったことである。別にこのことは被らなかった人がいないことは紛れもない事実である。だけど被害者であることに変わりはなかった。遠出はおろか、近場の居酒屋に行って飲むことすらままならなくなった。精神の死を感じ始めたのはこの頃だった。
最初の数か月はさまざまな出来事すらも家の中で済ませ、家中で長らく過ごすという「特殊な」環境に面白みを抱いていた。しかしそれは所詮理性的人間であるが故の興趣であったのであり、結局本能的人間の側面を抑え込まれては生きていくことが恐ろしいほど難しくなったのである。

 僕のその昇華活動は、もっぱら自慰行為であった。回数は以前の倍になり、R-18サイトを除く時間は飛躍的に向上した。ティッシュの消費量が夥しくなり、ベッドや座椅子周りにもの悲しい丸まったティッシュがぼろぼろと転がった部屋になっていった。

 性的嗜好の内容、というか求める水準が高くなっていったのは、たぶん一度の刺激の度合いを高めたかったからなのかもしれない。最初は以前見ていたような内容でも事足りたのだが、段々と描写のエグい内容のものを求めていった。Twitter民で分かりやすいように言うなら、「性癖偏差値が異常に上がった」とでも言えばわかるだろうか。そういうことである。

 酒を飲む量も日に日に増していった。一日で一缶か二缶程度で済んでいたのに、度数の高い缶チューハイ、たとえばストゼロとか濃いめハイボールとかをバカみたいな本数飲むようになっていった。そうやってぼくもわざわざ炭酸水を買ってきてバカみたいなハイボールを煽るんだ。ゲロることも多くなり、胃酸の味も舌に残るようになった。ばかだよな、と思いつつ、かといってこの「災禍」を生き残ろうとするには必要な行動だと思って飲み続けた。
 そんな中、大学の授業もそれなりにこなしていたある日の事だった。僕の部屋の呼び鈴が鳴った。
「○○便でーす。お届け物でーす」
 もろもろの用事がある中だったが、なんとかサインなどを済ませて受け取った。厳重なガムテープの封を破ると、その中には。

A1. 注射器と薬液、連絡先があった。
A2. 「偽メシア」とある硬質のカードが入っていた。


さて、読者であるあなたにはここで選択を委ねたいと思います。主人公の「僕」が受け取ったものは、読者であるあなたの意思によって変化いたします。コメントにてどうぞ選択ください。コメントには感想などを付けていただければ幸いです。

解答の方法はシンプルです。
コメント欄に「A1.希望」または「A2.希望」のいずれかを書いていただくだけ。これで「僕」の意思はあなたのものです。

※注意※
本投稿につきましては、HP外の外部団体にも読んでいただいたうえで意思が決定いたします。本投稿に付随するコメントのみが反映されるわけではないことをご了承ください。

あ、最後に各選択肢のヒントというかなんというかそういう言葉を残しておきます。
A1. p.h.
A2. 願い

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