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ノアノオモチャバコ『ノア版 野鴨』〜予告状…〜ー2023.09.18

演劇イベント「ぽけふぇす!」

中野区で開催されていた「ぽけふぇす!」に行ってきました。

ぽけふぇすとは、「ポケットスクエア」(ザ・ポケット、劇場MOMO、テアトルBONBON、劇場HOPE)で開催されている演劇フェスです。

こちらの記事でも紹介しました。

小劇場はコロナ禍をどう乗り越えたのか? 「エンタメ不要不急」と言われた3年間 Vol.2

14の団体が参加する一大イベントです。
記事にも書きましたが、コロナ禍で元気のなくなった演劇界に風を送りたいということで、ポケットスクエア支配人の寺戸さんが企画されました。

せっかくならと、支配人の寺戸さんが主催されている劇団「ノアノオモチャバコ」の作品『ノア版 野鴨』を観てきました。

場所は劇場HOPE。

観劇当日は生憎の雨でした。しかし、客席はほぼ満席。

『野鴨』の原作は、イプセンの同名戯曲です。

(あらすじ)
人間はどれだけ「真実」に耐え得るのか。
うそ偽りの上に幸福は築けないと考えるグレーゲルスは、ささやかながら平穏な生活をおくるエクダル家に「真実」をつきつける。一家の幸せは揺らぎ、一人娘ヘドヴィクは父の愛を取り戻そうと大切にしているノガモを犠牲にする決意をする。

イプセンは『人形の家』は読んだことがありましたが、『野鴨』はタイトルを知ってたくらい。こんな話だったんですね。

『ノア版 野鴨』は、イプセンの野鴨を、現代に置き換えた脚本と演出ということです。
ちなみに今回はなんのトラブルもなく、時間に余裕をもって劇場に到着することができました\(^o^)/

あれ? なんか噛み合わないな

物語は、とある缶詰会社の社員寮が舞台。

主人公の狐塚(キツネヅカ)は、社長とは昔からの知り合い。再会をきっかけに入社することに。特別に恋人と一緒に社員寮に住むことになった。
寮には癖の強い同僚たちが住んでおり、プライベートに踏み込んでくる住人たちに狐塚はうんざり。
ついには「恋人に合わせろ」と無理やり家に押しかけられ……。

この狐塚の恋人が、物語の重要なカギになります。
観客が観ている狐塚の恋人と、同僚たちが見ている恋人は別人、というちょっとしたトリックがあるのです。

観えているものと、役者が話していることが噛み合わないので、「あれ?」という気持ちになります。その後あるタイミングで秘密が明かされ、物語は一気に加速していくわけです。

じつは狐塚には、強盗事件に加わり逮捕されたという過去がありました。
そして缶詰工場の社長もその事件の犯人の一人。

秘密を共有する二人は、そんな過去なんてなかったように普通に暮らしています。

しかし、狐塚だけは自らの過ちを受け入れることができていませんでした。強盗事件に巻き込んで殺してしまった女性を自分の恋人だと思い込むことで、罪をなかったことにしようとするわけです。病んでます。

追い込まれていった狐塚は、やがて大暴走し、社員寮を巻き込む大事件を起こしてしまうという……。

こうしてあらすじにすると結構暗いストーリーに思えますが、脚本も演出も明るいので、とても楽しいお芝居に仕上がっていました。

私が特に好きだったのが冒頭のシーン。狐塚の入寮祝いに、みんなで何回も乾杯するところが良かったです。音楽がバンバン流れて、ダンスもあったりで、狂気を感じた。

狐塚が追い込まれていく様子も見応えがありました。
社長は真実を受け入れ、次に進もうとしているのに対し、狐塚は真実を受け入れることができず精神崩壊します。
どこまでもワンパクでのんきな社長と、繊細な狐塚。二人の対比も良かったです。

ラストは、解散目前だった漫才コンビの男女が、これからも漫才を続けていこうと和解するシーンで終わります。

だめそうに思えても、頑張る気持ちがあればなんとかなる……というメッセージだったのかな? あるいは、ものすごい事件が起きても、関係ない人にとってはどこまでも他人事であるというふうにも受け取れました。
最後については観る人によって解釈が変わりそうです。

観劇後、私が真実を突きつけられるとしたらなんだろう……と考えました。
小学校のとき『怪盗セイントテール』に憧れて、放課後の教室にしのびこみ、黒板に予告状を書いたことですかね。わはは!

はじめて観る劇団でしたが、お芝居も役者さんたちの雰囲気もとても好みで楽しかったです。
「ノアノオモチャバコ」の次回公演は来年4月だそうで! また観に行きたいなと思いました。

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