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■話者:Sさん、農業、80代 ■記述者:火野水鳥 昭和のはじめ頃に、Sさんが体験した話。 Sさんの家は農業を営んでおり、山にいくつか畑を持っていた。当時小学生だったSさんは、祖父の手伝いで山に入ることが多かった。 その日は台風が近づいているせいで、朝から強い風が吹いていた。山の畑に収穫待ちの野菜があったので、台風で痛む前にと、祖父とSさんは急いで山に向かった。 吹き付ける風の中を、祖父の後について山を登る。明け方の雨のせいで、足元はぬかるんでいた。足を取られな
■話者:Mさん、大学生、20代 ■記述者:黒崎朱音 Mさんが、高校生の時に体験した話。 みたま市には『首吊り屋敷』という、いかにもな名称の心霊スポットがある。ここでは過去に父親が家族を殺害後、首を吊って死んだらしい。 ……という話になっているが、実際にここで一家心中や自殺が発生した記録はない。『らしい』という噂だけが流れて、何でもない場所が心霊スポットになってしまっているのだ。 だが、若者の間では怖い噂の的になっていて、他にも、二階の窓から赤い目の人が覗
■話者:Aさん、無職、80代 ■記述者:黒崎朱音 異縄(いなわ)地区に住むAさんの、子供の頃の話。 異縄地区の北端には三珠山へ登る石段があり、登った先に「異縄神社」という古神社がある。その裏に、何を祀っているかわからない古い社があった。誰かが拝むところを見たことはなかったが、社の前にはいつも新しい野花が供えられていた。 戦後まもなくで、物がない時代。遊びの場はもっぱら山だった。その日もAさんは友人たちと、異縄神社でかくれんぼをして遊んでいた。 神社の敷地は狭く