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■Eさん、研究員、40代 ■記述者:八坂亜樹 Eさんは小学生の頃、クラスで苛めにあっていたことがある。苛められていた友人のRを庇ったことで、代わりに標的にされたのだ。そのRがEさんを苛める側に回ったのが、何より辛かった。 家族に気づかれたくなくて、放課後はまっすぐ家に帰らず、裏山の廃神社で時間を潰すようになった。昼間でも暗く気味が悪いが、誰も来ない場所なので安心できた。 ある日、社殿の前に古い木箱が置かれていた。 上に丸穴があり、側面に「御籤」と書いてある。中には
■話者:Nさん、大学生、20代 ■記述者:八坂亜樹 Nさんの実家は、山岳信仰の残る山奥の集落にある。 集落には屋敷神を祀る家が多く、N家にも「ミ様」と呼ばれる祠があった。「ミ」というのは頭文字らしく、正式な名前はNさんも知らないという。祠はいつも鉄の扉で閉ざされていて、中を見たことはなかった。 Nさんには年の離れた二人の兄と二つ下の弟がいて、全員の名前に漢数字が入っている。それ自体は珍しくないが、長男から一、二と昇順になっているわけでなく、バラバラな数字が与えられて
■話者:Nさん、研究員、40代 ■記述者:八坂亜樹 小学生の頃、Nさんは物置のように狭く粗末なアパートに住んでいた。 父はなく、母と二人の生活はいつも苦しかった。ただ同然の家賃も払えず、隣の一軒家に住む大家の嫌味に頭を下げて耐える、そんな母の姿が今も忘れられないそうだ。 ある日、Nさんは白い子犬を見つけた。子犬は側溝の中で屁泥に埋まり、小さな体を震わせてヒィヒィと鳴いていた。アパートは犬猫禁止で、もとより飼える余裕はない。しかしNさんは子犬を連れ帰った。惨めな姿が自分
■話者:Aさん、中学生、10代 ■記述者:火野水鳥 Aさんの中学で霊現象が多発した時期があった。 霊を見る、声を聞く、憑かれる、怪我をするなど現象は多岐に渡り、目撃される霊も、血塗れの子供、赤い目の女、首がない地蔵などバリエーション豊かだった。今までも、どこそこのトイレの個室で子供の霊を見たといった話が流行ったことがある。しかし今回は体験者の数が桁違いだった。普段は幽霊を小馬鹿にしている生徒まで霊を目撃するに至って、「これは本当かもしれない」というざわついた空気が学校
■話者:Eさん、家業手伝い、30代 ■記述者:黒崎朱音 旧市街に住む、Eさんの話。 中学生のころ、Eさんはよく旧市街にある公園で時間を潰していた。母親が勉強しろと煩く、家にいたくなかったからだ。 ある日、公園の前で友人のNさんに会った。そのNさんが妙なことを言った。夕方にヒトガタを持ってこの辺りを歩くと、変な場所に迷い込むことがあるという。 「ヒトガタってなんなん?」 そう聞くと、Nさんは折り紙で折った妙な形の人形を渡してきた。Eさんは馬鹿らしいと思いながらも、
■話者:Rさん、会社員、30代 ■記述者:黒崎朱音 「ここで集合写真を撮らないでください」 みたま市にある火葬場の待合室には、そう書かれた一風変わった張り紙がある。理由は不明だが、この場所で集合写真を撮ると、知らない人物が映り込んでしまうという噂があった。 Rさんは高校生のときに、葬儀のためにこの火葬場を訪れたことがある。大叔母が亡くなったからだ。100歳近くになってからの逝去で、大往生と言ってもよかった。そのせいか葬儀も暗い雰囲気はなく、集まった親類が思い出話に花
■話者:Nさん、自営業、40代 ■記述者:八坂亜樹 Nさんが大学生のときに体験した話。 当時、Nさんは県外の大学に進学していたが、長く病床に伏せていた祖父が亡くなり、葬儀のためにみたま市に戻ってきた。 生前の祖父にまつわる良い思い出はあまりない。一代で会社を興し、一線を退いてからもなお会社の運営に深く関わっていた祖父は、盆や正月などの家族が顔を合わせる行事にも現れないことが多く、幼かった頃からどこか近寄りがたい印象があった。しかし、治る望みのない病気が発覚してから
■話者:Sさん、農業、80代 ■記述者:火野水鳥 昭和のはじめ頃に、Sさんが体験した話。 Sさんの家は農業を営んでおり、山にいくつか畑を持っていた。当時小学生だったSさんは、祖父の手伝いで山に入ることが多かった。 その日は台風が近づいているせいで、朝から強い風が吹いていた。山の畑に収穫待ちの野菜があったので、台風で痛む前にと、祖父とSさんは急いで山に向かった。 吹き付ける風の中を、祖父の後について山を登る。明け方の雨のせいで、足元はぬかるんでいた。足を取られな
■話者:Cさん、自営業、30代 ■記述者:火野水鳥 Cさんが通っていた小学校でクロネコ様が大流行したことがあった。 クロネコ様というのは、いわゆるこっくりさんで、みたま市では『クロネコ様』という名称で行われることが多い。休み時間になると誰もが仲間内で集まって、他愛のないことを質問したものだった。 その頃、Cさんはある女子グループに属していた。そのグループのリーダーはMちゃんと言って、街で大きな商店を経営する両親と、小学生にしては大人びた容姿を持った、クラスの女王
■話者:Mさん、大学生、20代 ■記述者:黒崎朱音 Mさんが、高校生の時に体験した話。 みたま市には『首吊り屋敷』という、いかにもな名称の心霊スポットがある。ここでは過去に父親が家族を殺害後、首を吊って死んだらしい。 ……という話になっているが、実際にここで一家心中や自殺が発生した記録はない。『らしい』という噂だけが流れて、何でもない場所が心霊スポットになってしまっているのだ。 だが、若者の間では怖い噂の的になっていて、他にも、二階の窓から赤い目の人が覗
■話者:Yさん、会社員、30代 ■記述者:八坂亜樹 湯田沼に住むYさんの体験談。 Yさんは両親から相続した一軒家に一人で暮らしている。複数の部屋を使うと掃除が面倒なので、Yさんは家にいるときの大半を一階の居間で過ごしていた。 居間は狭い庭に面していて、垣根越しに隣家の縁側と和室が見えた。和室は隣家に住むおばあさんの部屋のようで、縁側に座って繕い物をするおばあさんの姿を何度か見た。隣家はおばあさんとその息子夫婦の三人暮らしで、日中はおばあさんが一人で留守番をしてい
■話者:Nさん、大学生、20代 ■記述者:火野水鳥 Nさんが中学生の頃に体験した話。 三珠山の麓の森の中に、それほど大きくない湖がある。Nさんの通っていた小学校で、この湖に関する噂が流行ったことがあった。 湖の中央には人が数人立てる程度の小さな島があって、木でできた小さな祠が建てられている。湖の岸からその祠に向かって願い事を叫ぶと願いが叶う、というのが噂の内容だった。 ただし、いつも叶うというわけではない。祠の陰から誰かが顔を出すことがあって、そのときに
■話者:Aさん、無職、80代 ■記述者:黒崎朱音 異縄(いなわ)地区に住むAさんの、子供の頃の話。 異縄地区の北端には三珠山へ登る石段があり、登った先に「異縄神社」という古神社がある。その裏に、何を祀っているかわからない古い社があった。誰かが拝むところを見たことはなかったが、社の前にはいつも新しい野花が供えられていた。 戦後まもなくで、物がない時代。遊びの場はもっぱら山だった。その日もAさんは友人たちと、異縄神社でかくれんぼをして遊んでいた。 神社の敷地は狭く