政木和三2

政木和三は大阪大学で、戦前から戦後にかけて40年以上研究者として生活してきた。基本的に科学一辺倒の人間である。「どんな物事も科学理論と技術で挑めば解明できないことはない」と信じていたし、それ以外の価値観を認めなかった。そんな彼の人生観を根本から覆す出来事が二つあった。ひとつはテレビ番組のスプーン曲げ対決、もうひとつは、中村公隆和尚との出会いである。
1970年代、日本は空前の超能力ブームに沸いていた。世界的に有名なユリ・ゲラーが来日し、出演するテレビなどは、軒並み高視聴率を記録した。学校では子供たちが「スプーン曲げ」に熱中した。
政木はこうしたブームを苦々しく思っていた。たまたま、いわゆる「超能力者」が出演しスプーン曲げを披露するテレビ番組を見て、ついに堪忍袋の緒が切れた。
テレビ局に抗議の電話をした。自分の名前と立場を名乗り、怒りを伝えた。
「私は科学と真理を追究する立場です。このような非科学的なテレビ番組が公共の電波を使って全国に放送されていることが許せません。それは科学に対する愚弄です」
電話を受けたプロデューサーは、実にしたたかだった。
「先生のお怒りは十分承知しました。そこで、ひとつ、提案なのですが、先生がスタジオにおいでになって、スプーン曲げなど科学的にあり得ないことを証明されてはいかがでしょう?」逆に政木に鉾先を向けた格好である。
政木としては、望むところだった。彼には、自身の発明した「金属ひずみ測定器」(ストレーンメーター)という切り札がある。ごくわずかな曲がり(10万分の1まで)をも検出可能な優れものだ。その超能力とやらでスプーンを曲げてみればいい。このストレーンメーターで、少しでもひずみが検出されれば負けを認めよう
ただし、対決の条件として「本当に超能力でスプーンを曲げることが可能というのであれば、手に触れることなく曲げて欲しい」と注文した。
また、トリックがないように、実験に使われるスプーンは事前に測定し、ストレーンメーターの上に乗せることも条件につけた。これだけの条件がそろえば、トリックは絶対にできない。
さて、いよいよ本番。超能力者は念を発し続けた。しかし、ストレーンメーターの上のスプーンはピクリともしない。時間が刻々と過ぎた。番組のスタッフのあいだにも、あきらめの空気が漂った。
やがて超能力者は念を発するのをやめた。政木は勝利を確信して、
「どうです、みなさん。そもそも超能力などというのは、物理学の基本法則に反しているのです」と宣言した。
しかし、そのとき、ストレーンメーターに目を向けると、なんと、ストレーンメーターのモニターは1万分の3ほど曲がっていることを示していた。
決して、誤差ではありえないひずみである。認めなければいけない。確かに、スプーンは何らかの形で曲がったのだ。物理的な力が加わることなく物体にひずみが生じたことは、彼にとって驚天動地の出来事だった。
それでも、やはり、信じられない。
そこで、今度は、政木のほうから勝負を申し込んだ。政木の作成した装置(銅線で渦巻き状にしたものを両端につけたヤジロベー)を使って、超能力者が物体を動かすことができるかどうか、挑んだ。すると、超能力者が手を近づけて、「近づけ」と念じると銅線は指に近づき、「まわれ」と念じると回り出した。
またしても、してやられた格好である。しかし、公開のテレビ番組の場で恥をかかされてはたまらない。政木は反論した。「体にはいくらか静電気があります。それで物体が動いたのです」
番組の放送後、講師として招かれたある学会で、そのテレビでの出来事を話した。すると、ある高名な教授2人から「政木さんの言っていることは苦しい。そういう現象は静電気では起こり得ない。まだしも、何からの精神的な力、“念”によって動いたと考えるほうが説明がつく」と言われた。
いくらか意固地になりすぎている自分に気付かされた。力学もエネルギー保存則も、いったんすべて消し去って、現代科学の範囲を超えた未知のエネルギーの存在を認めるべきかもしれない。
その後、超能力の科学的検証(念による物体の移動、空中から物質を取り出す、幽体離脱、ダウジングなど)は、政木のライフワークとなり、死ぬまで研究を続けた。
http://psi-science.sakura.ne.jp/kokoro/data/text/masaki.html

政木はたまたまある縁で、鏑射寺(神戸市北区)の住職中村公隆和尚の知遇を得た。中村和尚は、密教の厳しい修行を何度も繰り返した大阿闍梨である。修行の末に、“この世ならざる力”を得たことは公然の秘密であり、政財界から内々の相談を受けることもある。
中村和尚は現在94歳。今も毎月22日には鏑射寺を訪れる人々の前で、法話を披露する。僕も以前、聞きに行ったことがある。

画像1

中村和尚の“この世ならざる力”がどのようなものか、端的に示すエピソードは、「ベレンコ中尉亡命事件」と関係している(和尚自身は法話のなかでこれを「ミグを捕まえた話」と言っていた)。
ベトナム戦争当時、米軍は北ベトナムを連日爆撃していた。当時の米軍の最新鋭戦闘機はF4ファントムⅡという高性能なジェット戦闘機だった。ある日、北ベトナム上空を飛行していたF4戦闘機が、ソ連の最新戦闘機ミグ25が飛んでいるのを発見した。戦闘空域だったためにF4はすぐに追撃したが、最高速度マッハ2のF4戦闘機を、ミグは軽々と振り払った。そこで射程距離の長いレーダー誘導型の空対空ミサイル「スパロー」を発射した。しかし、マッハ2以上の速さで飛行するこのミサイルも、ミグを捕捉するには至らなかった。
ミサイルでさえ追いつけないほど高速で飛ぶ戦闘機の存在を報告された米軍首脳部には、激震が走った。当時ソ連と米国は核戦争の一触即発の状態であり、かろうじて軍事バランスの均衡が戦争勃発への抑止になっていた。そこに、これほど戦闘機の性能レベルの違いを見せつけられては、米軍が平静でいられないのは当然のことだった。
米軍はソ連の最新鋭戦闘機ミグ25の性能の秘密を研究するため、実際に運用されている機体を1機、なんとしても捕まえたいと考えていた。しかし、自国の最速の戦闘機を上回る速さのミグを捕獲することは、到底不可能なことだった。
そこで、ニクソン大統領は、1945年8月、昭和天皇がB29を消した話を思い出した
https://note.com/nakamuraclinic/n/n3f49755c9fb0
大型の戦略爆撃機を消せたのだから、ソ連の戦闘機を1機捕獲するぐらいは簡単だろうと思い、昭和天皇のところに特使を派遣し、ミグを捕まえるように命じた。
しかし昭和天皇はこの要求を断った。「あれは自分自身が神だと信じていたからこそ、可能でした。しかし終戦後人間宣言をし一人の人間にすぎなくなった自分には、もはやできません」
しかしニクソン大統領の特使、簡単には引き下がらない。「それでも何か別の方法があるだろう」と食い下がったところ、昭和天皇は助手をひとり所望した。
その助手が、自分を現人神だともう一度思い込ませてくれたなら、可能かもしれない。その助手として指名されたのが、真言密教の法力を修めた中村公隆和尚だった。
高松宮殿下が皇宮警察を引き連れて高野山まで赴いた。皇居に連れていかれた阿闍梨は、真言密教の呪術を使い、昭和天皇を再び現人神にした。その後すぐ二人で、ちょうどシベリア上空を演習飛行中のミグ25のパイロット(ヴィクトル・ベレンコ中尉)をめがけて、不動金縛りの術をかけた
ベレンコ中尉は飛行時間3000時間を超える経験豊富なパイロットである。心身ともに健康で、戦闘機に乗り込む前には入念な機体チェックを怠らない。非常に優秀なパイロットだった。しかしシベリア上空を飛行中、突如、体に違和感が走った。操縦桿が思うように動かせない。体の異常だろうか?機体の故障だろうか?いずれにせよ、異常事態に違いない。すぐさまソ連の空軍基地に戻ろうとしたが、自由に動かせないばかりか、操縦桿は機体が北海道のほうに向かって行くようにだけ動く。高度を上げてはレーダーに捕捉されて撃墜される可能性がある。仕方なく、海面すれすれの低空を飛び、北海道の函館空港に強行着陸した。
これがベレンコ中尉亡命事件(1976年)の真相である。マスメディアでは亡命とされたが、実際には亡命でも何でもなかった。阿闍梨と昭和天皇の呪術によるものだった。
こうして米軍は、まんまとミグを得ることができた。茨城の百里基地に移送されたミグは、機体とエンジンを分解され、マッハ3で飛行できるメカニズムも突き止められた。

政木は当然、この呪術の存在を信じていた。というか、どのようにしてこのような呪術が可能なのか、それはそのまま政木の研究テーマだった。彼が着目したのは、脳波である。
人間の脳波には、ベータ波、アルファ波、シータ波、デルタ波の4つがある。普通に生活しているときの脳波は18ヘルツくらいで、これをベータ波という。心がリラックスして平静な状態だと15ヘルツほどまで下がる。これがさらに下がって13ヘルツ以下になるとアルファ波となり、肉体的な感覚が薄れ、精神的な感覚が主体になる。さらに11ヘルツ以下になると超能力と呼ばれるような力が現れ、たとえば誰でもスプーンが曲げられる状態になる。脳波がさらに下がり、8ヘルツ以下になった状態がシータ波である。この状態では、心も体も超えた、ただ、魂だけがある感覚で、瞑想の極致に達したときに見られる。さらに脳波が下がり、4ヘルツ以下のデルタ波になると、完全な無意識状態で、仮死状態に近い。
政木は、中村和尚のいわば「超能力」は、シータ波の精神状態のなせるわざだと考えた。シータ波のときには、まったく無欲の状態になっている。逆も真で、無欲の状態でないとシータ波にならない。人生において願いを叶える人は、常に無欲であり、かつ、シータ波になっている。時給換算すれば1時間に何万ドルと稼ぐスティーブ・ジョブズが、貴重な時間を割いて禅に傾倒したことには、十分な理由がある。人はシータ波の状態になって初めて、世界を変えるような奇跡を起こすことができる。
無論、こういうことができる人は多くない。選ばれた素質なり、厳しい修行なりの末に、人はこの力を得る。
実は、中村和尚は長きにわたり、念の力で東京の地震を止めているのだが、この点については詳述しない。ただ、高齢の和尚が遷化された後が心配だ。

人を生かすこともできれば殺すこともできるのが、密教呪術である。フランクリン・ルーズベルトは密教の秘儀により呪い殺されたという話がある。当然、原爆開発に対する牽制の意味合いである。もう少し小さな話では、これは中村和尚の本にも書いているが、瞑想する和尚の体には、蚊が近寄らない。もちろん、蚊取り線香を焚いているわけではない(笑)

政木は自身の発明のほとんどすべての特許を放棄したが、ただ二つ、自分の手元に置いておいた特許がある。
そのうちのひとつは、神経波磁力線発生器(現在の商品名は『セルパワー』)である。政木は「これを発明したのは中村和尚の病気を治すためだ」とはっきり公言している。和尚の病は2週間で治癒した。
これは人間の神経波(今や神経内科の教科書にも出ている言葉だが、もともとは政木が作った言葉である)と同じ波形の磁力線を自然発生させる装置だ。これを使うと、水の水素分子が活性化し、細胞の若返りが起こり、病気が自然に治癒すると政木は考えた。
たとえば岡山大学病院で子宮筋腫の患者にこれを試したところ、この装置により、筋腫の径が2分の1から4分の1の大きさに縮小した。6週間平均で10分の1になり、手術待ちの患者が手術を免れることさえあったという。
最近、油屋さん(世界一チャーガに詳しい男)がセルパワーの社長(佐々木さん)を僕に紹介してくれた。そんな縁で、今、当院にはセルパワーが置いてあります。

画像2

体験してみたい人は当院へどうぞ(笑)

参考
「祈りが護る國」(保江邦夫著)