クスリはリスク

こんなメッセージが届いた。
「中村先生。いつもnoteを拝見しており貴重な情報ありがたく思っています。突然のお問合せですいませんが、3月25日に79歳の母(コロナワクチン未接種、コレステロール降下薬、胃薬など服用中)が脳出血で倒れ、現在要介護1、認知症自立度2になりました。2週間熱が上がったり下がったり、点滴の栄養摂取が4月14日から経管栄養に切り替わったり、といったことも我々家族には知らされませんでした。熱の原因は「分からない」と言われ、薬は、セフトリアキソン(抗生剤)、インデラル(高血圧/不整脈治療薬)、プラバスタチン(コレステロール降下薬)、パリエット(胃薬)、ネオファーゲン(肝疾患治療薬)、マグミット(便秘薬)、グルコン酸カリウム(カリウム補充)、メコバラミン(Vit B12補充)、アルファカルシドール(Vit D補充)を投与されていました。「抗生剤はやめて欲しい」とお願いしたところ、「炎症の数値が高いため必要」だと言われました。けいれんを抑える薬を飲んでいるとしか聞いていなかったので、こんなにたくさん飲んでいて驚きました。薬を調べると副作用が目につき、治療どころか別の病気の原因になるとしか思えません。リハビリを中断しているとのことで、認知症の進行も気になるし、LINE動画で母が日に日に衰弱しているのが分かります。4月19日に主治医と面会し今後の治療方針や減薬をお願いするつもりですが、中村先生から何かアドバイスがあればよろしくお願いします」

まず、文面は丁寧だけれども、noteの『クリエイターへのお問合せ』フォームからこういう医療相談的なメッセージを送ることについて、「失礼に当たらないか」ということは考えなかったですか?どういうつもりでメッセージしてこられたのでしょう?「返事くれればラッキー」ってところでしょうか?丁寧な文面なら何を言ってもいいとでも?送信者の年齢も名前も不明で、恐らく僕よりも年上の方だと思いますが、年齢は関係ありません。失礼です。医者を軽く見ています。
本来、こういうのは当院に受診して相談するべき類いの話です。みなさんそうされています。予約し相応の診察料を支払うことで、初めて僕の助言が得られます。それを、こんなふうに一足飛びにメッセージを送って「答えてくれればいいな」なんて、虫がよすぎると思いませんか?
ただ、送信者の気持ちも分からないではありません。お母さんのことで必死なんだろうなと想像します。予約しようにも2か月先まで埋まっている。しかし主治医との面談は4月19日とすぐ迫っている。失礼を承知しながらも、こういうメールを送らずにはいられなかったということかもしれません。
今回は特別にお答えしましょう。でも今回だけですよ。他の方も「悲壮感の漂う文面で泣き落とせば中村は答えてくれる」なんて思わないでくださいね(笑)


脳出血で倒れ、2週間熱が上がったり下がったりして、その間に経管栄養になり、認知機能も含め体調がどんどん悪化している。気の毒なことです。
服薬内容を聞いてみると、多剤大量投与。「これでは薬で病気になってしまう!」と不安になられた。僕もそう思います。
恐らく抗生剤(セフトリアキソン)以外の薬は、長年飲み続けてきたものだと思う。「胸焼けがある?じゃ胃薬出しておきますね」「血圧が高いですね。しっかり下げましょう」「コレステロールが高いと脳卒中が起きますよ」という具合に薬を処方され、10年20年律儀に飲み続けてきたんでしょうね。でも、「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉をご存知か?かかりつけ医は当然、患者の健康のために薬を出している。ガイドラインで「この症状にはこの薬」というのがだいたい決まっているんです。しかしそんなふうに薬を飲み続けて本当に健康になれるのか?僕は疑わしく思っています。
たとえば胃薬。単なる「胃酸を抑える薬」だと思われるだろうけど、胃酸を抑えるとどういうことが起こるか、少し想像してみよう。胃酸は、その名の通り「酸」で(しかもpH1の強酸)、タンパク質の消化に重要です。また、胃酸は食物中に含まれている病原菌を殺菌したり、ミネラル(Fe、Ca、Mgなど)をイオン化して吸収しやすくしたり、ビタミン(B12、Dなど)の吸収にも関わっている。ここで、胃酸分泌を抑制するとどうなりますか?タンパク質を分解、吸収できない。また、ミネラルやビタミンの吸収も落ちる。食物中の細菌を殺菌することができないので、腸内細菌叢にも影響する。そもそも健康な人の腸内は本来弱酸性に保たれているが、胃酸分泌を抑えると、腸内のpHがアルカリに傾き、腸内細菌叢のバランスも崩れることになる。
「単なる胃薬」じゃないんです。胃という上流で胃酸の流れを止めるだけで、下流の腸で様々な不調が起こり、その影響は全身に及びます。

インデラルという薬を飲んでるけど、どういう思惑で処方されてるのか。これはβブロッカーというタイプの薬で、交感神経の働きを落として心臓の働きをセーブする。降圧目的か、あるいは不整脈があるなら抗不整脈薬として出されているのかもしれない。こればかりは主治医先生に聞いてみないと分からない。恐らく降圧だけが目的なら、アムロジピンとか定番の降圧薬が出ると思うから、あえてインデラルが出ているということは、不整脈の既往があるのかも。
しかし、おかしな話だけど、抗不整脈薬の最大の副作用は不整脈です。添付文書を見れば分かるけど、使用禁忌の疾患も多い。以下の論文に、特段の必要性がない限り「60歳以上の高血圧患者に使うな」とある。それぐらい慎重に使わないといけない薬なんだよ。

僕はそもそも、薬でむやみやたらと血圧を下げることに反対なんです。人間の体は状況に対して常に最善の反応をする。これが僕の基本的な信念であり、ここからものを考えていきます。血圧が高いということは、体は血圧を上げる必要があるから頑張って上げている。末梢に血を届けるために血圧を高めているのか、あるいは、交感神経が緊張しているせいでやむにやまれず血圧が上がっているのか。とにかく、必ず何らかの原因があるはずです。そういう原因を一切考えず、血圧測定の結果だけを見て「150。高いね。お薬出しておきますねー」みたいな医者が世間の大半です。そして、降圧薬を飲み始めるとどうなるか?たとえば脳に血が行かなければ認知症になるし、性器に血が行かなければ勃起不全になります。

【結論】「降圧薬を服用している女性は服用していない女性に比べて認知機能低下のリスクが高かった。なおナトリウムの摂取量はこのリスクと無関係だった」いい塩をとりましょうね。

コレステロール降下薬(特にスタチン系)について、僕はこれを薬だと思っていない。純然たる毒物だと思っています。これについては過去に何度も書いてきました。
https://clnakamura.com/blog/3721/
https://clnakamura.com/blog/803/
https://clnakamura.com/blog/6223/
https://clnakamura.com/blog/6101/
https://note.com/nakamuraclinic/n/n449541f6d933

スタチンはカビ毒そのものです。ある日本人が開発しノーベル賞受賞も近いと噂されていますが、ノーベル賞をもらうのであれ何であれ、毒である事実に変わりはありません。このカビ毒で筋肉が溶けると横紋筋融解症になりますし、脳が溶けるとうつ病や認知症になります。膵臓がダメになると糖尿病になります。薬という名の毒ですから、お薬手帳を見てこの薬を処方されている人を見れば、僕はまず条件反射的に「この薬やめといたら?」と提案するようにしています。
上記の相談の例でいうと、スタチンは、ズバリ、脳出血の原因です。

この論文の結論に注目すべきです。
【結論】脳出血発作はアトルバスタチン服用者に高頻度で見られた。特に男性に多く、加齢とともに頻度も増加した。脳出血リスクとLDLコレステロール値との間に関連は見られなかった。
スタチンを飲んでる人にこそ脳出血が多かったし、そもそも脳出血とコレステロールには相関がない、ということです。

上記の相談のような、多剤大量の薬を処方されている高齢患者は珍しくありません。というか、そういう患者ばかりです。薬漬けの状態からどのようにして減薬し日常生活が快適に送れる状態にまで軟着陸させるかが僕の仕事です。10年とか20年薬を飲んでいる人だから、減薬は慎重に行います。たとえば降圧薬を飲むと、体は薬に負けまいとして受容体の発現量を増やすなどして血圧を何とか上げようとします。薬という毒に対して体は適応しようとするわけです。こういう状況で一気に薬を抜くと血圧が上がり過ぎる可能性がある。拙速な減薬は危険です。

上記相談者のお母さんについて、長らく飲み続けた薬のせいで今の状態があるとすれば、治療としては、やはり時間をかけて栄養を補って減薬して、というのが本筋です。「このサプリ飲んどきゃオッケー」みたいな話ではないんですね。だから僕のほうからしてあげられることって、正直あまりありません。

今さら言っては何だけど、本当は相談者氏がもっと早くに「こんなにたくさん薬飲んでるけど、お母さん大丈夫?」と疑問を持って、減薬に取り組むべきだった。いざ事が起こってから、主治医に「抗生剤使うな」だの「もっと薬を減らせ」だの、無茶というか、かなり失礼な話だからね。
西洋医学の医者に通うということは、西洋医学の流儀に任せるということなんです。それを、医者に向かって「薬が多すぎる」とか難癖つけるのは、医者が気の毒です。そういうことを言うのなら、そもそもの最初から西洋医学に頼っちゃいけなかった。漢方、アーユルヴェーダ、栄養療法など、他のところに行くべきだった。今さらだけどね。
またお母さんの状況がひと段落したら、当院にお越しください。
それと、今回のお母さんの経験を生かしてくださいね。ご自身がお母さんの年齢になったとき、同じ状況にならないために、今のうちから医療の何たるかについて考えておくのも無駄ではないと思います。