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文通欄[2019九月]

今回:2019年9月
他回:お返事ができる場合は『おしらせ』マガジンに追加します。

いただいた順番で並んでいます。
サポートに添えられていたメッセージへのお返事です。

※お名前は仮名や頭文字、頭文字でアカウント特定が容易になってしまうお名前の方には異なるイニシャルや類似した文字等をあてている場合があります。本文のメッセージ内容でご自身宛てかどうかをご判断ください。
※伏せてある文字数は実際のお名前通りの文字数とは限りません。


は*****さんからメッセージがとどいています。
自身の言葉に自己嫌悪を感じてしまった万寿美さんへ珈琲1杯分だけで申し訳ないけど差し入れを。
私は万寿美さんの人への気遣いに毎回尊敬の意を感じているし、思いやりのある性格、思想、大好きです。きっと今回みたいに1つ1つ向き合ってご自身の思想を育てていらしたんでしょうね。素敵です。

 マスミさんは(マスミさんに限らずですが、今はマスミさんの話をしているのでマスミさんにだけスポットを当ててお話ししています。)とにかく一人の時、自分の言動を振り返っては自省を繰り返し…というのを呼吸のように繰り返す性分です。が、社会の中でやりくりしている時は、大抵のことは笑って許す・笑顔で流す・耐えて収めるみたいな素振りの多い人なので、周りからは、“あんまり何も気にしない人”に見られている節もあったりして、損する性格だな〜…というのを感じてしまいます。同席した彼女たちも「あの子はきっと損を買ってしまう性格の子だね」という話をしつつ、マスミさんの性格に信頼を寄せていました。
 頂戴したサポートは、せっかく珈琲1杯と言って頂いたので私から現金で渡すのも味気ないなと思ったので(とは言え「その日、何を飲みたいか」は本人にしか分からないので現物で渡すことはせず)某コーヒー店で好きなドリンクに替えられるチケットとして、同額分を渡しておきますね。


c********さんからメッセージがとどいています。
いつも素晴らしい作品をありがとうございます。「やさしい」ってことは何なのか、それを考え続けることをしなきゃなと思います。
似顔絵オーダーの再開のご予定はありますでしょうか?戌年の間に犬との絵をご依頼したかったのですが再開されてなかったようでしたので…

 こちらこそ、ありがとうございます。
 やさしいってなんなんでしょうね。これ、「やさしい」っていう言葉から私が勝手に連想した、頂戴したメッセージの本筋とは全然関係ない話なので、c****さん個人に対して何か意見があるとかじゃない、ただのおしゃべりなんですが、「やさしい」って、しかし随分と子供の頃から触れる言葉・概念ですよね。「あの人はやさしい」とか「この人はやさしくない」とか、結構みんな早い年齢から人を審判する項目だなーとか思っています。子供の解像度だと「お菓子くれた!優しい!」「遊んでくれた!優しい!」みたいな(笑)無邪気なものも多いでしょうから、あんまり審判って感じはしないですけど。
 でも、ある意味とっても身勝手に、子供のうちからその人(その子)なりの“査定水準”の中で相手について決めちゃう評価項目で、そんなことこっちで決めちゃっていいのかな?って疑う余地もないほど『幼児の頃から持っている人を選り分けるリトマス紙みたいなもの』ということに気付いて、恣意的にそれを行使できちゃう仕組みに、たまにびっくりします。
 育った環境・生きている環境・生きてきた状況などによって判断基準の違うものだと思うので、人によっては、これまで見たこともない(その人にとってはやさしさとして査定したことすらない)「やさしい」が存在することもあると思います。たとえば、「子供にとっては何がなんでも両親が揃っているほうがいい!それが親の優しさ!」みたいに心に決めている人からしたら「子供のためにも離婚する」という“やさしさ”の意味はチンプンカンプンで「離婚を子供のせいにするなんて児童虐待だ!」という解釈をされてしまった…なんていうやりとりを聞いていたことがあります。「あの人は、やさしいか、どうか」というのを『自分が関わる相手を選ぶ時』の選考基準にする分には差し支えない場合がほとんどだと思いますが、『誰かがそれをやさしさと感じるかの審判』は外から下しちゃうのは、どんなもんだろうな…と、「やさしい」という言葉からちょっと想起した独り言です(笑)すみません、聞かせてしまって。
 漫画描いてる時に、「これ、このシーンに登場する二者間では“やさしさ”の表明のシーンだけど、パッと見ではやさしくないようにも見えるから、ちゃんと伝わるかな?」なんて考え事を私自身もしょっちゅうしています。
 なんにしても、「このキャラクターが今の段階で考えてるやさしさはこういうものだけど、これが誰にとってもやさしいっていうわけではないと思います」とか「多くの人にとってこれはやさしさだと思いますが、この人にはこれが暴力的なほど凄まじい威力でヒットして心に大怪我してしまいました」みたいな、『やさしさの定義』ではなく『特定の誰かにとってこの出来事はこう感じた』というのの伝え方を模索していければ…と思っております。
 似顔絵、お問い合わせありがとうございます!
 犬も描ける機会で楽しかったので、再開したいなぁと思いつつ…12年に1度の犬イヤーは終えてしまったのですが、どこかのタイミングでまたできたら…とは思っています。そんなことを考えていたんですが、感染症の諸々で娯楽系の広告案件などなど自粛の対象になるタイプのものは決まっていた仕事をほぼ全て失ってしまった(笑)ので、しばらくは安価で個人のお客様に細かく対応するお仕事は難しそう…というのが、目先の正直なところです。一体いつ収束するやらという局面に当たってしまった以上、当面は慣れた世界の中でスピードをもってこなせる仕事を生活のためにこなしていかないと…と思っています。この事態が落ち着いて余裕が戻ってきたら再開も検討し直したいです。
 今、『犬の一生』っていう、文字通り犬に関する企画をやっていまして、…と言っても月に1ページ程度しか描かないので単行本(漫画の場合は1冊150ページ以上になるのが一般的だと思います)になるかどうか微妙なんですけど、それを一冊にまとめるようなことがあればまた犬関係のキャンペーンをしたいなぁ…なんて考え中です!
 いずれにしても再開した場合には告知しますね。


む******さんからメッセージがとどいています。
中村先生の漫画を読みまくってます。既刊は全て購入しました。レズ7の更新も楽しみにしております!

 既刊、…す、す…、すす、全て!!!!!恐れ入ります…!
 今は個人で自由にやっていますが、既刊の中には掲載された雑誌の色が濃いものや、様々な関係者の意志が混ざり込んだ末に私が隅々まではコントロールしきれなくなってしまったものもあるので、なかなか、手放しに明るく「是非みなさんも私の既刊全てを読んでくださいね!」とは言えず「もし好みのものがあったらよろしくお願いします…」という弱気な姿勢になってしまいがちなのですが(笑)読んで頂けること自体はとっても嬉しいです。本を手に取って頂けたことも、結構長い時間がかかったと思いますが、読んでくださったお時間も、本当にありがとうございます。
 ちなみに公式な略称は『七カノ』だったりします!
(理由があるので、書いておきますね。気が向いたら読んでみて頂けると嬉しいです。私個人の好みの問題だったら特にお伝えする必要のないことなんですが、私の気持ちだけではどうにもならない、社会に居るいろんな人に関わる事柄でもあるので、この場を借りて説明しますね。
 これまで女性同性愛者には「レズ」「レズ」と呼ばれ差別されてきた歴史があります。またアダルトのジャンルとして『レズ(レズもの)』というのが存在すること等からも「レズ」という呼び方には議論が多く、「差別用語だから“レズ”という呼称そのものをNGにすべき」という論調の方も少なくありません。代替とする言葉は色々あるようですが、「ビアン」などが有名です。が、私の世代…或いは偶然私が過ごした環境?では、既に当事者以外にも「ビアン」という言葉が広まりつつあったので、私個人の経験では「ビアン」という呼称で差別やハラスメントを受けてきた回数のほうが「レズ」という呼称でそれらを受けた回数を圧倒します。
 個人的には「何が差別語か」よりも「差別として使われたらどんな呼び方だって差別になってしまう」というところを重視しているので、私自身は、選択的に自分のことを「ビアン」等ではなく、誤解を受けずに済みそうな場所では極力「レズ」と自称しています。ただ、これは私個人の選択でしかないので、私以外の「レズ」と呼ばれたくない人、「ビアン」等と呼ばれるほうが落ち着く当事者がそれを拒絶することに反対する理由を私は持ちません。しかし、本作を『レズ』から始まる言葉で略してしまうと、字面として誰かの心に衝撃を与えてしまうこともあるかもしれませんから、公式の略称は『七カノ』として、「レズ」という言葉を含む際には極力『レズと七人の彼女たち』『レズと七人の〜』と、せめてどこにフォーカスした用法か、誰の一人称かが想像つくように、「“レズ”はあなたではなく特定の人物(=私)である」という文の構造がなるべく伝わるよう、タイトル全文・或いはタイトル全文が存在することを想起できる状態で書ける時だけにしています。
 なので、もしむ******さんにも私のように「レズ」という言葉を選択的に使いたい意図があるようでしたら無理にとは思っていませんが、特に意図がないようでしたら『七カノ』『7カノ』のほうをご利用頂ければ、穏やかなことが多いかもしれません!…あと単純に、『レズ』の部分を担っている私より『七カノ』のほうを担う七人の彼女たちのほうが本作では重要な存在という理由もありますけどね。笑)


t******さんからメッセージがとどいています。
Amazonで拝読しました。続きが読みたく購入します。

 ありがとうございます。
 やはりAmazonさん、凄いですね…。単行本を読んでくださる方がとにかく多い書店さんの一つです。
 ただ、それだけの規模を誇るAmazonさんですから他にもご興味ある本が多々あったかと思います。(私はAmazonに行くと読みたい本を選びきれなくて短時間では帰ってこれません。笑)
 その中で選んで頂けたこと、とても嬉しく思っております。


な***さんからメッセージがとどいています。
誰の人生にも幸せがあるように、と、読後思いました。
先生ががんばってくださっているので、私も私の小さなフィールドでがんばろうと思います。
元気が出て、力が沸く作品を、ありがとうございました。

 自分のことを話す時って、どうしても「私の小さなフィールド」みたいになってしまいますよね。私も自分のことを話す時は「私のやっていることは小さいけど、自分なりに小さい世界で少しずつ頑張っていこうと…」みたいな感じの言葉選びになるほうです(笑)
 しかしこうやってメッセージを頂く側になってみると「いやいやいやいや、小さなフィールドとかないですから!な***さんはな***さんの人生のフィールドを世界一大きく持っている存在ですから!」みたいな気持ちになるもんですね。でも自分のこと話そうとするとすぐ「でも、私は私のささやかな人生を頑張りたいです。」みたいになっちゃうんですけど…(笑)
 フィールドに立ってる時間がどこまで続くのか、試合がいつまであるのか、分からないまま何かしなきゃいけない果てしなさと、それに付随する不安や疲労を少なくない数の人が同じように持っているのかもな…と感じます。私自身「果たして私はどこまでがんばれるやら…」という薄暗い感想しか(自分に対しては)持っていないのが正直なところですが、なるべく諦めずに、フィールドを見守ってくれている人をなるべく裏切らずに、がんばれたらいいなと思う次第です。


ぷ****さんからメッセージがとどいています。
すきです。

 ふふふ、私も私を好きって言ってくれる人好きですよ。
 いつもありがとうございます。


ス*****さんからメッセージがとどいています。
すでに次回も待ち遠しいです…!
サキさんもだけど、中村さんの彼女さん達の気の利いた会話ほんとにかっこいいですね。普段の自分の話し方の薄さを思い知る…。想像力が深いのかな?心の機微とか気の回し方とか、とにかく勉強になることがすごく多いです。

 いや本当に、そうなんですよ。今はサキちゃんにスポットが当たるチャプターが続いているので、公式のイチオシがサキちゃんみたいになっている時期ですが、そもそも皆さん全員、周りの人が何を考えてるか(それを開陳する相手として自分〈なんか〉を選んでもらえるなら)出来る限り解ろうとするタイプ、それでいて自分自身の人格のことは一切信頼していない・自分を過大評価することは先ず無い性格の方達なので、私も近くで聞いていて、まさにス*****さんの仰る「普段の自分の話し方の薄さを思い知る…」という気分です…(笑)
 …というわけで、実はここのところの『レズと七人の彼女たち』で私の登場するコマ・私の発言の少なさのヒミツは(単に登場人数の多いイベントが起きているから、ごちゃごちゃしすぎないように人員削減しているというのもありますが、それ以上に真の理由は)他でもない、“私が混ざると薄っぺらくなるから”!!!!!!です!!!!


m**********さんからメッセージがとどいています。
先生には関係ないですし、これは愚痴です。500円で愚痴書いちゃってごめんなさい。ビアンだけど頑張って男性と結婚しました。でも浮気され、子供産めない女は出て行けと言われ離婚しました。でもなんとか中村先生の作品に救われています。許されている気持ちになるので。ありがとうございます。

 いえいえいえ…そんな…。500円も頂戴して、これは、一般に約20〜30分の間アルバイトさんを雇えるような額面ですから、お金の問題ではないかもしれないんですけど、「じゃあいくらならごめんなさいじゃないんだろう?」って考えると、なんか、すごい何時間もかかるお返事を“強制”される業務とかなら話は変わってくるでしょうけど、ここの場合、返信は私の任意ですし、どう考えてもやっぱり500円って、一般に約20〜30分の間アルバイトさんを雇えるような額面ですから、拝読するにあたって「ごめんなさい」と言われるようなことは起きていないはずだ…と思いつつ、500円、頂戴致します。
 セクシャリティに抗った結婚、大変なことかとお察しします。
 ちょうど昨夏公開したマンガにこれまでより詳しく描いたところですが、私の後妻も男性との家庭を営んでいるので、セクシャリティの違う者同士の家庭運営って、本当に(同性愛者側だけでなく異性愛者側も双方で)気遣いが必要だなと身近で痛感して過ごしました。なので、異性と家庭を営むことに挑戦した同性愛者の方に対しても、相手を同性愛者と知った上で家庭づくりを模索する異性愛者の方に対しても、つくづく尊敬の念があります。
 もちろんこれは、何らかの合意に基づいた挑戦であることが大前提なので、何らかの合意というのはたとえば、「そもそも相手の異性愛者が恋愛感情を求めず、家庭運営のパートナーとして共存できる異性(セクシャリティ不問で、とにかく異性)をお見合いで探していたので、同性愛者だけど結婚した」みたいな『利害が一致している場合』や、相手の異性愛者にはこちらが同性愛者であることを伝えて、つまり、「あなたを異性として愛しているわけではないけれど、人間的には愛しているから、友人としてあなたと家庭を築きたい。あなたが、あなたのことを異性の男性として性愛的に愛してくれる異性愛者の女性と結婚する機会を奪うものだけど、それでも良ければ」という相談をして、『両者事情が分かった上で「結婚してみよう」となった場合』とか、お互いに「私、全然好きな人と付き合える気配ないんだよね」「俺も全然モテないんだよね」「セクシャリティ違うけどお互い妥協して結婚しちゃう!?」っていう『ポジティブな妥協としての友情結婚』とか、相手の異性愛者が自分に恋をしていて、プロポーズされたので同性愛者だって教えたんだけど、「だったら友情結婚でもいい」って言うから挑戦したみたいな『お互い友情結婚だと認識している場合』とか、合意の仕方はなんでもいいと思うんですけど、とにかく何らかの合意が取れている場合だからこそ、それを維持することについて「(双方に相応の人格的成熟や譲歩が必要と思われることから)尊敬する」というシンプルな感想で終えられる話です。
 だから、同じ『同性愛者×異性愛者の結婚の話』だとしても(m******さんのケースについて「きっとこういう事だろう」と憶測しているわけではなく、社会を見る限り生じる可能性がある『異セクシャリティ婚』の一例として)『異性愛者社会・結婚至上主義社会に溶け込むためのカモフラージュ』のために、セクシャリティの事実に触れることなく、異性愛者と結婚して、その上で更に、伴侶の幸福を維持するために必要な努力がうまくいかなかった(※)結果、破綻した…みたいな条件だった場合にはシンプルな感想で言葉少なにまとめられない事ですが…。
(※努力が続くなら嘘をついてもいいという話ではないかもしれませんが「双方の幸福を維持する努力さえしてくれれば小さな嘘は気にしない」という人が居ないとも限らないですし、表向きは愛情だけで結婚したように見える場合も、相手の体に性的な意味で魅力を感じたとか経済力に惹かれたとか本当にこの人でいいか迷ったが年齢的な焦りがあった場合など、異性愛者同士が「恋愛結婚」と称した婚姻の事例が、1つ残らず100%すべて全員…という純度で真実の愛情のみに基づくものだという保証がついているわけではないですから、べつに100%の愛情じゃないと結婚しちゃいけないなんてことはないだろ、と、私は思うので、ここで“嘘”について深追いして断じる必要は感じていません。嘘をつかれた側が償うことを求めた場合には別ですが、カモフラージュの結婚だったとして結果的に嘘をつかれた側が「それでもいいよ」「頑張ってもらって幸せだよ」になるなら、そこは外からどうこうするところではないので。)
 お互いがお互いのセクシャリティを知らずに結婚するのであれば、相手の一度しかない人生の、(恐らく大抵の人にとっては)みだりには回数を増やしたくないはずの結婚や離婚の機会を、カモフラージュのために使ってしまうわけですから、相手の人生から『合致したセクシャリティの人と愛し合って結婚する機会』を奪うことになる可能性もあります。これは『社会から“ノーマル”な性以外を押し付けられて悩んだ末に、セクシャルマイノリティが我慢して違うセクシャリティの相手と付き合う』ような経験を、よりによってセクシャルマイノリティ自身が、相手が無自覚な状態で誰かに押し付ける側になってしまうかもしれない出来事です。(“かもしれない”の理由は様々です。結果的に「それでも幸せだったから気にしない」という人が居る可能性や、相手が結婚によって自分の本当のセクシャリティを自覚した結果、同性愛者×異性愛者の結婚だと思っていたものが、実は同性愛者同士の異性婚だったことが判明して、禍根が残らなかったとか、相手がセクシャリティとか特に気にしてなくて「とにかく親の手前、結婚だけできればいいから!子供も欲しくない!恋愛は外でしておいでよ!」みたいな関係とか、どう転ぶか分からない部分に対する“かもしれない”です。)
 相手にセクシャリティについて説明していないケースについては、同性愛者である方に対しては、『誰かを騙さなければならないほど思い詰めたこと』について本当に胸が痛みますし、異性愛者である方に対しては、何も知らずに愛し合えていると信じていたなら「その後の人生で伴侶になるかもしれない人を信じることを諦めないでほしい」と願います…。
 性愛を組み込んだ結婚生活を幸せに送るならば合致したセクシャリティの相手と一緒になれることが一番だと思うのですが、それが簡単にできれば誰も苦労しないわけで、セクシャルマイノリティがそのままのセクシャリティでは“普通”に生きづらい社会構造だったり、周囲の人やメディアからの「結婚“できない”人」というレッテル貼りが多発したり、「結婚=幸せ・独身=不幸」という価値観の押し付けがあったり、追い討ちをかけるように「まだ結婚できないの?」というプレッシャーを掛けてくる逆風の中にあっては、簡単ではないな…と感じます。
 この種の苦難の根源は「ちゃんと異性に認められる魅力を持って、異性に選ばれる努力をして、(男女で)結婚して子供を作って元気に産め」というプレッシャーを発している構造にもあると思うので、その意味では、異性と結婚するしかなかった同性愛者も、そうとは知らずに同性愛者と結婚してしまった異性愛者も、二人とも、無配慮と非多様性によって作られたマジョリティ用の構造による不利益をそれぞれ違った形で受けてしまった、二人ともが構造の被害者だと感じます。(二人が受ける苦痛の大きさが同じとか、どっちもどっちという話ではなく。)
 m******さんのケースが『前者(お互いセクシャリティを知っていたケース)』か『後者(相手にどうしても話せなかったケース)』かは存じませんが、いずれにしても本当に大変な時期を過ごされたのだろうと拝察します。
 仮に後者だったとしても「子供産めない女は出て行け」というのは酷い言葉ですし、浮気するほどお互いの関係が破綻しているのであれば離婚してから恋愛をすれば浮気ではないんですから、離婚を切り出してから新しい恋愛に本腰を入れれば浮気せずに済んだのに何故わざわざ浮気なんかするんだ…と思いました。
 生活の変化は心身ともに摩耗する一大事と存じます。ゆっくり心を持ち直せますように。
 話題の割には手短な文章なので、感じの悪い語り口に見えないか不安に思っていますが…、どういう経緯での結婚だったかによって辿る言葉こそ違ってくるものの、「これに関するほとんどのことが多様性に対する不備さえなければ起きなかったかもしれないことなのに」と思うと、無念を感じます。
 現在の我が国における結婚(戸籍とイエを取り巻く法律に絡めとられるしかない婚姻制度)や、家族形成・家族運営・家族解散に関連する制度あり方について、私はちょっと懐疑的になっている立場なので(大昔に作った結婚に関する法律ですから、性別・セクシャリティ関係なく時代に合わせ、多様な生活・意志・人生選択に合う形にカスタマイズしないと、取りこぼされる人の種類が増えて格差が固定されるんじゃないかなと考えている立場なので)『(現行法下の異性婚をコピーする形の)同性婚』について、諸手を挙げて賛成を表明することは控えており、気軽に「みんなが好きな人と(今の法律をベースに)結婚さえできれば全部なにもかも解決するのに!」みたいなことを現行法の下で言うことはできない(「多様性に対する不備さえなければ」という言い方しかできない)のですが、それはさておき、私は『根拠とする法を問わない状態で答えた場合の、あらゆる性による結婚』には大賛成している立場ですし、恋愛を強く望む人に関しては良い恋愛のパートナーと巡り合うことは人生のとって良いことですから、とても辛いご経験をされたことと思いますが、次の恋愛を望んでいらっしゃるか既に新しいパートナーさんがいらっしゃるようであれば、ここからは長きに渡って大切な相手同士で居られる、素敵な方と一緒に過ごす時間がたくさんあるよう、願っております。
 私自身は一人分の未熟な人間でしかありませんから、限られた人の意見・思想しかカバーできませんが、漫画には私とは異なる人格のキャラクターも出てきますし、日常の私だったら選ばない・選べない言葉を使うキャラクターも出てきます。「許されている気持ちになるので。」とのご感想、ありがとうございました。拙作に登場する誰かが寄り添うことをしたのであれば、著者としてはこの上ない事です。


b*****さんからメッセージがとどいています。
電子書籍で新刊を読みました。これからも応援しています。

 嬉しいです。私が漫画家になった頃はまだ電子書籍が普及しておらず、端末の性能にもかなりバラ付きがあったので(まだ画面の小さい、画質の荒い、パカパカ開く携帯だった頃ですからね。笑)当時は「電子書籍、どうしたものか…」と悩んだりもしましたが、その時代から10年ほど経って、すっかり電子書籍も様変わりしましたね。
 もともと何かに挑戦するのが怖くて仕方ない保守的な性分なところに「紙の原稿・紙の本のほうが好き」っていうのが加わったせいで、なかなか電子書籍市場に踏み出せなかったのですが、こうして電子書籍で読んでくださった方からのお便りが届くと、新しいことへの不安とか個人的なこだわりとか、そういう余計なものをさっさと捨てて、電子でも漫画を届けられる状態に踏み出せてよかったな…と感じます。
 こういう声を聞かせて頂くことで、選択に後悔が必要なかった、という安堵を心に持つことができるので。ありがとうございました。


s*****さんからメッセージがとどいています。
最近、著書をいっぱい読みました。著者へメッセージを送るのは初めてなので、新鮮です。娘たちにも著書を勧めたいと思います。今後もよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございます。以前は雑誌で描いていたこともあって、(雑誌の場合は雑誌の方針も踏まえた上で、編集部の偉い人を交えた会議だったり、担当編集者と呼ばれる編集さんと二人三脚の打ち合わせだったりを重ねて漫画を作ることがほとんどなので)求められる物語を描かなければいけない…という業務上のやりくりもあって、著作によっては現在と違った作風のものもありますが、今こうして出版社を離れ、自分の思う『自分が描いておきたいもの』だけを作れる生活になって、じゃあ何が描きたいかって考えると、『誰かには勧め難いけど独りで読めるもの』か『世代の違う誰かと読めるもの(親が子供に、子供が親にその漫画に描いてあった事の話をしたくなる瞬間があるような)』がいいなという気持ちがとても強いので、娘さんに勧めたいと思って頂けること、とても嬉しいです。
 でも、お勧め頂くって、実際は緊張しますね(笑)娘さんの好みに合うといいのですが…!


M*********さんからメッセージがとどいています。
今回のDBRのサキさんが本当に素敵でした。
とても腹落ちして、なんだかスッキリしたので少額ですが…。
これからも楽しみにしています!

 そうなんですよ、サキちゃん、そうなんですよ…いつも素敵なんですが、DBRに描いた時のサキちゃんも本当に素敵でした。
 登場するサキちゃんのお友達夫婦(新郎くん新婦さん)についてはあまり触れるページがなかったんですが、新郎くんはサキちゃんとの関係が実の姉弟かってぐらい長年に渡って慕っているし、新婦さんもサキちゃんに対して「お義姉さん!あなたの弟のことは私が頑張って幸せにしますので、今後ともよろしくお願いします!(キラキラ)」という感じで(笑)本当に素敵な子たちで、なるほどなぁ〜、サキちゃんの人格を形成する傍にはこういう人たちが居たのかー(そしてまた素敵な友達くんの人格を形成した傍にはサキちゃんが居たのかー)と思うと、もうなるほどしか出てこないほど納得…という感じで。
 結婚式は私たちも撮影・録画されたものを後日観せてもらいに行ったんですが、おじいちゃんおばあちゃんより若い世代の新郎新婦の親族は今回の件を多方面から理解してくれて、その上で、おじいちゃんおばあちゃんたちは孫の結婚式を泣いて喜ぶ最高の一日だったようなので、この選択の社会に対する正しさとは別のところですが、結果的には何もかも良かったかなと思っています。
 ありがとうございました。 


以上、
2019年9月1日〜9月30日までに
頂いたメッセージへの
お返事です。

以後も、お返事ができる場合は『おしらせ』マガジンに追加します。

 この企画は2018年の終わる頃、「病欠していて限られた範囲のことしかできないから(何かしよう)」という思い立ちで始めたものです。元気な時は普通に仕事や私生活に時間を投じてしまうし、恒例の記事にできるかは分からないです…が…暮らしの折々で「今日は寝込むほど具合が悪い」という日や「家事も仕事もやりきって疲れてしまったから文字を打つ以外は無理」みたいなタイミングは訪れるものなので、時間と余力のある時はお返事したいなと思ってはいます…、が…、少し先の私がどんな過ごし方をしているのか見当もつかないものなので、お約束はしないままにしておきます。
 2017年度までにメッセージをくださった方、頂いたメッセージ全部読みました。無言でサポートをくださった方、どなたがいくらくださったか全件確認しています。ありがとうございました。