『IPPON!』脱稿まで打ち合わせあと何本!?(12)|原作付きマンガ一緒につくろう計画
(今回の範囲の原作)
◯北関東大学医学部・グラウンド
人だかりの中で、振り返るうた。背が低く、埋もれそうになっている。
うた、近藤を見つけて、屈託のない明るい表情になる。
うた「あっ、近藤くーん! こっちこっち」
近藤「うた先輩、すみません」
うた「野口先輩、見つかった?」
近藤「は、はい。あのスピードだと、もうすぐ着くかなと……」
野口、ぜいぜいと息を切らして到着。
うた「な、なにがあったんですか……?」
野口「コイツがな、汚えんだよ。インハイ入賞者だからってさ」
近藤「汚くないっすよ! むしろ後から出てあげたじゃないですか!」
うた、ニコニコと2人を見つめる。
うた「いい練習になりましたね!」
野口「(孫を慈しむように)うたは本当に、陸上脳だねえ……。(今年はどうだ、何枚もらった?:※セリフ後半は次回解説分のページに収録)」
*第0話の原作全体をおさらいしたい方は『(1)第0本(プロローグ)原作テキスト』で再読できます。
◆原作担当:朽木 誠一郎
◆ネーム/解説:中村珍
※この企画は、2018年までに原作者・朽木誠一郎さんが執筆した原作テキストを頂いて、作画担当・中村が、2019〜2020年にかけて、制作と並行しながら解説しています。
通しネーム(掲載済みの分)
今回追加されたネーム
ここからネーム解説
◯北関東大学医学部・グラウンド
人だかりの中で、振り返るうた。背が低く、埋もれそうになっている。
うた、近藤を見つけて、屈託のない明るい表情になる。
うた「あっ、近藤くーん! こっちこっち」
難解な(複数の解釈が存在しそうな)セリフも一切なく、状況的にも、どう見てもこの人だかりは“競り”の会場だな、と一瞬で理解できる…非常に分かりやすいシーンです。
場所が変わったことを示すために風景のコマを挟み、ちょっと混み合っている程度ではなく“人だかり”と呼ぶほどの状況だと分かるような人だかりの遠景は必須だと思います。
こういう場面はネームの段階では某人間みたいなものや丸ばっかり描いておけばいいので楽ですが、いざしっかり作画する段となるとモブ(主要キャラ以外の名も無き人たち。通行人みたいなエキストラみたいな役割の人たち)を大勢描くのが結構大変だったりするので、作画の都合的にはあまり存在して欲しくないシーンですが(笑)大学という舞台設定の宿命として避けられないと割り切って頑張ります…!!!
3コマ目と4コマ目は、このシーンが誰と誰のものか分かりやすくなるようにほとんど同じウェイトでうたさんと近藤くん。
人だかりの奥に見つける感じで描くと混んでいる場所だというのがよく分かるように画面を作れます。
うたさんも近藤くんと同じく主要キャラクターだと思うので初登場シーンは極力目立つように大きく描いてあげたいのですが、“競り”という超重要イベントの初登場シーンと被ってしまったので、どちらに重きを置くか悩みどころですね…。
大きく目立たせて描くと人波に揉まれている感じも演出し難くなってしまうので、ぐっとこらえて、ここは場面の雰囲気を重視したネームにしました。
読み切り(短編)作品の主要キャラクターだったら、さっさと“この人大事ですよ!”感を出すために目立つ登場をさせてしまうかもしれませんが、本作は続き物なので。
読んでいくうちにうたさんのポジションがしっかり示せると思いますし、ここから先も結構うたさんと野口くん・うたさんと近藤くんの掛け合いが続くので、うたさんの重要度アピールの機能は登場シーンの長さ・多さに預けようと思います。
近藤「うた先輩、すみません」
うた「野口先輩、見つかった?」
近藤「は、はい。あのスピードだと、もうすぐ着くかなと……」
野口、ぜいぜいと息を切らして到着。
うた「な、なにがあったんですか……?」
ここも野口くんが息を切らして走り込んでくるので目的(部員たちの合流)が分かりやすい、とてもシンプルなシーンですね。
野口くんの息の切らし方、原作では「ぜいぜい」と書いてあるんですが、平仮名の
ぜ ぜ
い い
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