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【ワイン質問箱】ワインにとっての自然って?〜自然派ワインの葡萄栽培〜

それでは、最初のお題、「自然派ワインの葡萄栽培」についてです。ワイン作りにおいて土台となるのが葡萄栽培です。原料が良くなければ加工されるものがよくなることはありません。ワインだけでなくありとあらゆるものに言えると思います。
皆様が耳にしたことがあるかもしれない栽培方法を、ちょっとだけ掘り下げてみようと思います。

減農薬農法

読んで字の如く・・・何ですが、それだけではないんです・・・
リュット・レゾネ農法と言われます。「リュット・レゾネ」はフランス語で直訳すると「合理的な対策」という意味です。英語圏では、サスティナブル農法とも言われます。今、流行りの「持続可能」という捉え方になるでしょうか。
これは、「化学肥料、農薬、除草剤などを極力、使わない」農法です。
極力」というのがポイントです。
例えば、害虫の発生、病害などでやむを得ない場合は、必要最低限の範囲で、農薬などを使います。一年に一度しかできない作物なので対策によって回避できるなら、回避したいですよね。
この農法に関しては認証制度などはありませんので、どの程度の減農薬なのか?また、名乗るのも生産者任せとなります。消費者を騙すことはないでしょうが、生産者を信じるのみとなります。

オーガニック農法

「有機農法」「ビオロジック農法」とも言われます。ナチュールらしいキーワードが出てきましたね!
こちらは、「化学肥料、農薬、除草剤などを使わない」農法で、収穫も手積みで行います。ただし「ボルドー液」という薬は許可されています。
「ベト病」という病気があります。葡萄の実や葉に白いカビがつく病気で、発生した時に使う薬が「ボルドー液」となります。成分は硫酸銅と生石灰が混合されたものです。
この病気が発生しなければ、前述の通り、「化学肥料、農薬、除草剤などを使わない」ということで、だいぶ健康的な印象になります。

ビオディナミ農法

英語圏では、「バイオダイナミック農法」と言われます。
オーストリアのルドルフ・シュタイナーによって提唱され、土壌と植物、動物の相互作用だけでなく、宇宙の力を土壌に呼び込み、様々な天体の作用を農作物の生育に生かすというものです。ポイントは2つあります。
【農業暦】
月やその他の天体の動きが植物に与える作用を重視した「農業暦」に合わせて作業をします。この「農業暦」で重視しているのは重力や放射線などの実際の力学的な作用ではなく、占星術などを元にした秘教的・非科学的なもので、太陰暦だけでなく、黄道十二宮や惑星の位置と関連させて決定されるとのことです。
【調合剤】
ホメオパシー=同質療法というものがあります。簡単にいうと病気の元を希釈して投与する、「毒をもって毒を制す」ような発想と言いますか...このホメオパシーが499番まであるようなのですが(詳しくは調べても出てきませんでした)、その延長として500〜508番までの調合剤=プレパラシオンを考案しました。

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果たして、これらにどのような効果があるのか・・・それ以外にもいろいろな疑問を感じるのは私だけでしょうか?「材料をどうやって手に入れるか?」「これだけの手間が価格に乗っかるの?」「そもそもいい葡萄になるの?」などなどです。
実際、批判的な意見もありますが、そもそも「生産効率」を重視した考えではなく、「手作業の優越感や娯楽」を優先している印象です。

ここまでをまとめると・・・

代表的な自然派栽培を挙げてみました。葡萄に限らず、生産者は安心できるものを消費者へ届けるよう様々な努力をしてくれています。ワインに関して調べた中で感じたことをまとめます。
①生産者の責任感
リュット・レゾネにある通り、生産者の自己申告になります。ワインを販売する上で、「無農薬」「化学肥料不使用」はプラス要素になります。もちろん、リピートしてもらうには味わいが良くなければいけませんが、最初に手に取るきっかけにはなるので、正確な情報を消費者に伝えてほしいと思います。ソムリエも調べた上でお客様にご案内しなければいけませんね。
②ビオワイン問題
皆様ご存じのキーワード「ビオワイン」なんですが、それは、ビオロジックですか?ビオディナミですか??という疑問・・・私としては、美味しければどちらでもいいのですが、気になさる方のとっては大きな差だというのは前述の通りで明らかです。「ビオ」と略すには大きな差だと思います。
③価格問題
ワイン会に加いただいた方の意見にもあった通り「割高のイメージ」の原因として、一つは、「生産者の労力」です。機械で収穫できるところを手作業にしたり、病害を未然に防ぐ作業努力などが考えられます。もう一つは、「原材料価格」です。ビオディナミの場合、プレパラシオンを手に入れる必要があると思います。また、設備も必要になってくるでしょう。牛や馬を買ったり育てたりとなるとその価格も原価として乗ってしまうでしょう。

以上が、自然派ワインを「栽培」の観点から見てみました。続いては「醸造」の観点から見てみたいと思います。

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