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【裏話】中村がゴネた箇所【100日後】

どうも、毎月0のつく日までに
メンバーシップ限定記事を1つ書くことを目標にしている、
漫画描きの中村環です。
30日はテキストでの記事の更新です。

当方はツイッターにて先日まで100日間漫画連載をしておりました。

ちなみに、その漫画は
こちらのツイートからツリーで読めますので
ぜひご覧ください▼

今回は裏話ということで、
中村が一番こだわって描いていた箇所のお話や、
連載を振り返ってどう思ったかのお話をしていこうと思います。

中村がゴネた箇所

今回の漫画制作は、山崎さんという方が企画をしてくださって、
私はネームと作画を担当し、共同で制作しました。

基本的な当方のスタンスとしては、求められた修正は
全て対応していくスタンスですが、
その中で2回ほど修正を求められましたが、
中村が修正をしたくないとゴネた部分があります。

どこでしょうか?
関係がギスギスしていたエンジニアとのやりとりでしょうか?
最後の、社長からクビを言い渡されるところでしょうか?

いいえ、正解は「アジのくだり」です▼

ええ~!?アジ!?くだらねえところにこだわってんな!!
と思われた方も多いかもしれません。

そして、エンジニアとのやりとりや
社長からクビを言い渡されるシーンに
注力すべきと思った方も多いかもしれません。

もちろん、エンジニアとのやりとりや
社長からクビを言い渡されるシーンを
手を抜いて考えたというわけでもありません。

厳密に言うとアジを取り落とす事実には
重要性はなかったのですが、
物語全体を見てつじつまを合わせる際に、
ここに重要なポイントが集まったので、
ゴネる選択をせざるを得なかったということです。

山崎さんから
・アジのくだりは本編と関係がないので無しにしてください
・ランチに連れていくのは社長でなくメンターにしてください

という修正のご要望がありましたが、
「特にこだわりがないのであれば、このままでいかせてもらいたいです」と
お願いしました。

理由は2点です。
①社長の登場回数問題
②インターンの好感度問題

まず、①社長の登場回数問題について。
この漫画は入れなければならない情報量がパンパンで、
インターン以外のキャラクターを登場させるにも、
登場できるスキがわずかしかありません。

実は、もともと社長の出番は「クビを言い渡すシーン」以外には
必ず必要な役どころというものはありませんでした。

しかし、インターンにクビを言い渡すという、
この物語で最も重要な役割を背負った人間である社長が、
今まで1回も出てきたことのない人間だとどうでしょうか?

読者「は!?誰!?このおっさん!!突然出てきて!!
いきなりクビを言い渡すとか!!」と
納得いかないのが目に見えることでしょう。

また、社長が主人公と一回も喋るシーンがないまま
インターンにクビを言い渡したとしたらどうでしょう?
読者「今までのインターンの働きっぷりをちゃんと見てたのかよ
このおっさん!!」と、
これもまた、納得いかないですよね。

つまり、重要な役割を背負った人間は、
・登場回数がそれなりにあり
・主人公と絡みがあり
・人間性をあらかじめ読者に周知しておく
必要があるということです。

ということで、ご飯に連れていくのは、
現実世界ならメンターの役割でありますが、
ご飯に連れて行くパートしかインターンが
他者と踏み込んで会話する機会がなかったため、
社長が連れていく必要がありました。

次に、②インターンの好感度問題について。

前提からのお話になるのですが、
この漫画の主人公を考えるときに
「100話の間、最後までついていけるような愛嬌のある主人公」である必要があると
私は考えていました。
つまり、あまり人間的に問題がある人間として
描くと、読者が主人公を嫌いになる可能性が
あることを懸念していたということです。

この話で、インターン君は、同僚のエンジニアさんの
悪口を言ってしまいます。

これは山崎さんのほうで入れたい教訓を表現する出来事であるため、
その悪口を言うという出来事…これは動かせない事実なのですが、
いくらインターン君でも、特に仲良くもない会社の上司に
同僚の悪口を言うということが、
すんなりできてしまう人間にはしたくなかったのです。

だからこそ、社長の粋な心遣いで先にインターンの心を和ませ、
ついうっかり(重要!)悪口をこぼしてしまうということにしました。

(飲食店で表現できる社長の粋な心遣いであれば
取り落とすものはミートボールでもオムライスでも
なんでも良かったのですが、
派手に丸ごと落としやすそうという観点でアジになりました。)

主人公の好感度を調整するのは非常に難しく、
私もアジのくだりが適切であったかには自信がありませんが
100話の中でどんどんインターンくんというキャラクターを
好きになってくれるように工夫していったつもりです。

(そして実は、この「好感度の操作」。
漫画を描かない人にはあんまり
聞きなじみがないかもしれませんが
めちゃくちゃ重要なスキルです。
少女漫画でキュンとくるヒーローの行動、
少年漫画で、主人公を「かっこいい…!」と思わせる行動、
すべて計算されて漫画は作られています。
今度漫画を読むとき、ぜひ好感度の操作を観点に読むと
勉強になるかもしれませんね。)

「100日後」の中でできなかったな~という部分

連載を振り返ってみて、残念だなと思ったのは、
メンターさんの評判がすこぶる悪いことです。

「仕事が手一杯なのにインターンの面倒を見る仕事を受けるなよ」
「インターンをほったらかしてるメンターが悪い」なんていうリプや
引用ツイートをよく見かけました。
さらには「こんなメンターがいるこの会社はやばい」というツイートも。

メンターさんには可哀想なことをしたなという思いはありつつも
自分としては100pの中で出来る限りの
教訓の情報を入れるという使命があったため、
メンターさんには犠牲になってもらうしかありませんでした。

メンターさんは、基本的には善人であり、有能であり、
(描いてはいないが本人もインターンくんの面倒を見たいとは思っている)ので、
「悪」ではありません。
ただ、読者には「悪」に見えてしまう。
なぜそう見えてしまうのかわかりますか?

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漫画を描くって、 今世じゃ無理ぽ…( ;∀;) …と定期的に凹むほど、 様々な壁があるよね! 漫画…

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