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【保存版】衆議院解散の儀式(衆議院内)

youtubeにいい動画が上がっていたので紹介がてらちょっと解説を加えてみますね。これはわかりやすいです。

午前中
午前の閣議で衆議院の解散を決定します。これを受けて内閣総務官が解散詔書を持って宮中に向かい、天皇陛下の御名御璽をいただきます。持ち帰った解散詔書に内閣総理大臣が副署し、詔書の写しの伝達書(以下詔書)が国会へと向かいます。動画はこの先から始まります。

詔書を運ぶ内閣総務官
紫のふくさに包まれた詔書を捧げ持つ内閣総務官が、国会内の廊下を衛視に守られながら進む様子。

(詔書はこのふくさに包まれて衆議院議長のもとへ運ばれるのが通例であり、「紫のふくさ」は解散詔書を意味する隠喩となっています)
音声はたぶんTBSの後藤俊広政治部記者。いい人ですよ。

衆議院議長応接室にて内閣総務官は待機
内閣総務官が衆議院議長応接室に到着。本会議開会まで待機します。

議長応接室は平素は議院運営委員会の会議室として使われるほか、賓客を迎えるのに使われることもあります(説明が逆だけど使用頻度がそうなんですからしょうがない)。また稀に査問会みたいなものが開かれたりもします。
国会議事堂の建築において、天皇陛下が国会においでになった際に休憩室として使われる御休所に次ぐ予算が使われたと言われており、そう聞くとなんとなくそういう気もしてくるような、そんな部屋です。

衆議院開会直前 本鈴から議長出発まで
衆議院が開会される10分前に予鈴が鳴り、そして開会直前に1分間本鈴が鳴ります。本鈴が鳴ると衛視が議長室の扉の前に待機し、議長が出てくるのを待ちます。そして議長が事務総長を伴って議長室を出発、本会議場へ向かいます(直線距離10mくらい)。

議長応接室の隣にある議長室において議長がこの開会のベルを鳴らします。逆に言うと議長がベルを押さない限り本会議は開会されません。そんなに頻度は多くないですが、政府与党の国会対応が度を越していると判断した際に、この権限を以って議長は「ベルを押さない(=本会議を開かない=政府が出した法案を衆議院で可決してやらない)」と伝えて脅すことがあります。議長は最大会派(与党)から選出されますが、議長就任に際して会派を離脱、特定の政党の党利党略にとらわれず立法府の長として(院の独立、国権の最高機関、といった国会を代表する立場として)内閣総理大臣や自民党幹事長らと対峙していきます。議会人として、歴代議長はやはり尊敬できる方が多いです。まぁたまにそうじゃない議長もいるけどね。
(このベルですが、『議員の平均年齢と聴力を考慮してボリュームが決められている』という説明(冗談ですよ、たぶん)に納得しちゃうくらいにはめちゃくちゃうるさいです)

内閣官房長官登場が紫のふくさを受け取り、議場へと向かう
内閣総務官はあくまでも事務方であり、詔書の立法府への伝達は行政府を代表して国務大臣である内閣官房長官が行います。議長が本会議に入ると同時に議長応接室に入室した内閣官房長官が内閣総務官から詔書を受け取り、そのまま議長と同じ議長席の後方の扉から議場へと入場します。

内閣官房長官から衆議院事務総長に詔書が手渡される
詔書は内閣官房長官から直接議長に手渡されるのではなく、衆議院事務総長(衆議院の事務方トップ。議員ではありません)に手渡されます。紫のふくさから詔書を取り出した事務総長が内容を確認します。官房長官はログアウトしました。

衆議院事務総長から衆議院議長へと詔書が手渡される
事務総長によって確認された詔書が、そのまま隣の議長へと手渡されます。この流れはいつものことで、議事進行にあわせて事務総長からその都度議長へと文書を手渡します。

衆議院議長が解散を宣言
「ただいま内閣総理大臣から、詔書が発せられた旨、伝えられましたから、朗読いたします」(議長起立。議場内を見渡し、全議員が起立していることを確認する)

スクリーンショット (22)

「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」


議場より万歳と呼ぶ者あり
慣例ですが、衆議院議長が解散を宣言すると万歳三唱が起きます。これにて衆議院解散の一連の儀式はすべて終了となります。これから日本列島は短くも熱い選挙戦へと突入していくことになります。

解散によって一斉に失職する(リストラされる)議員たちがなんで万歳するのかよくわからんという質問をよく受けます。諸説あるんですが「天皇の国事行為だから」とか「景気づけ」とか「やけくそ」なんて説もあります。個人的には諸説にすらないんですが、『衆議院の存在意義は解散にこそある(任期満了による単なる議席の選び直しではなく、主権者たる国民に対して民意を問いにいくという積極的な民主主義の実現であるから)』と思うので、院の誇りと民主主義の実現を祝しての「万歳」だと考えてます。いや、誰も賛同してくれなくてもいいんですけどね。個人の見解なんで。賛同してくれたら嬉しいですけど。

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