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いつかのあなたへの手紙 (その⑤1歳になりました)

ひろくんへ
いつの日か、ひろくんに産まれたときのことを伝えることがあるでしょう。その時にちゃんと伝えられるように手紙を書いておきますね。

この前のお手紙からすっかり時間があいてしまいましたね。
ひろくんはあっという間に1歳になり、4月からは保育園に通い始めました。
季節は冬が終わりすっかり春です。

ひろくんは、できることがたっくさん増えました。
産まれてからたった1年の間にこんなにできることが増えるのかと、ひろくんからたくさんのびっくりをもらっています。

はいはいをし始めたと思ったら、すっかりマスターしてすごい速さでお家の中を駆け回ったり、伝い歩きも完璧で少しでも触るところがあればどこまでも歩いてしまったり。
そして保育園に行くようになってから、1人で立っちすること、あんよすることができるようになりました。

ごはんはあまり食べなかった時期があったことを忘れるくらい、もりもりバクバク食べてくれて、大人顔負けの量をぺろりと平らげます。
おてても器用で、なんでもつかんで食べられます。
全然興味のなかったスプーンは、これまた保育園に行くようになってからちゃんと握ったり救ったりできるようになりました。

そして1歳になった日を最後に、大好きだったおっぱいも卒業しましたね。
1年間、しっかりたくさん飲んでくれて、とっても大きくなってくれてありがとう。
お母さんの腕の中…からはだいぶはみ出していたけれど、一生懸命にこくこくと飲む姿、飲みながら寝ちゃったのにお口からおっぱいを外すと慌ててお口をはぐはぐさせておっぱいを探す姿、とてもとても愛おしかったです。

4月からは保育園に通い始めました。
今まではお母さんと二人きりで過ごしていた平日が、先生やお友達と過ごす時間になり、きっと戸惑ったり緊張することもあるでしょう。
「お母さん行ってくるね」と言うと顔をくしゃくしゃに歪めてでも泣くまいと口を噛み締めて我慢している顔をみると、お母さんも寂しくてぎゅっと抱きしめたくなります。
やっぱり寂しいね。
もしかしたらお母さんの方が寂しいかもしれません。

お母さんが一番ひろくんのことを知っていると思っていたのに、離れる時間が長くなるにつれて知らないひろくんの姿が増えていきます。
保育園の先生から「今日のひろくんお昼寝のときに膝枕で寝ましたよ」とか「ごはんのおかわりが欲しいと”んー!!”と大きな声で教えてくれるんですよ」とか教えてもらうたびに、ちょっとした寂しさがやってきます。
その寂しさは”こんな想いしてまで預けて働くの?”とささやいて、お母さんの心を揺さぶります。

でもね、お母さんは働くんだ。
お給料をもらうために働く、それももちろん理由の一つ。
でももしかしたらもっと大きな理由は、ひろくんに少しでも”世界は広いぞ”って言いたいからかもしれません。

ひろくんはこれからどんどん世界が広がっていきます。
小学校に入って、中学校に入って、高校に入って、習い事をしたり。
その中でお友達ができて、気が合う人もいれば合わない人もいるでしょう。
そんな時、自分の見える範囲だけが自分の世界になってしまったら、それはきっと息苦しくて逃げ出したくなるかもしれない。
でもね、ひろくんにひろくんの世界が広がっているように、お母さんにもお母さんの世界があるって知ったら、お父さんにもお父さんの世界があるって知ったら、ひろくんの世界はひとつじゃないって思えるんじゃないかなって、そんな風に思うんだ。

この1年間、お母さんの世界はひろくんでできていました。
でもこれからの1年間は、お母さんはひろくんだけじゃないお仕事の世界もあるお母さんの世界を作っていくよ。
そのために、ひろくんも保育園という新しい世界に飛び込んだんだ。

これから、どんどん世界を広げていこうね。
どんなことが好きかな、どんなことが苦手かな、
どうしてだろう、やってみたい、そんな気持ちがあふれだす世界をたくさん見つけていこう。


ひろくん、今日まで元気に大きく育ってくれてありがとう。
あの日お母さんのところに産まれてくれて、ありがとう。
お母さんをお母さんにしてくれて、ありがとう。

ひろくんはお母さんにとって、とてもとても大切な存在で、
お母さんに頑張る力をくれる希望です。

5通目のお手紙は、産まれて1年たったひろくんのお話でした。
また、手紙を書きますね。

お母さんより

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