【綿町ダイアリー】#66 街の風
2022年10月。
「看板倒れてるよー!」
朝、厨房で賞味期限切れの牛乳の入れ替えをしてたら、隣りの店主が慌てて入ってきた。
強風でよく倒れる綿町カフェの看板。
東からの風で西側に倒れる事はよくあるんだけど、今朝は東側に倒れていた。
それで隣りの店主が気付いたのだろう。
綿町カフェの東隣りには「すず」という食堂がある。ボリュームがあって美味しい!と人気のお店だ。
「最近、お昼に行列できてるやん!」
「今この辺、建設工事多いやろ。それでやわ」
「ええなぁ。うちは建設工事関係ないわ(笑)」
そんな他愛もない会話を交わす。
何でもないお隣さんとの朝の会話なんだけど、お互いに朝から笑顔で明るく向き合えてる事が何かこう、嬉しい。
今朝、自転車通勤の時はアウターを着なくていいくらいあったかく感じたけど、今は風があって少し肌寒い。
倒れた看板を直したあと玄関先の掃き掃除をしていたら、大きな段ボールを抱えた女性に声をかけられた。
「この辺て、郵便局ありました?」
「あの次の信号機のとこですよ!」
僕は北を指差して、そう答えた。
すると東側からヨチヨチ小ちゃな男の子が歩いてきた。後ろからお母さんが追っかけてきている。
「はーい。ここでシュトップちてねー」
僕はそう言って男の子をとめる。
僕に礼をするお母さんと男の子の後ろ姿を見送って、カフェに戻った。
綿町に吹いた風のおかげかな。
人の温もりを少し感じた朝だった。
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