「枯れ沢」

落ち葉の積もる枯れ沢を
あてどなく登っていた
このまま道に迷ってしまえばいいと
思っていた
わたしには、ある覚悟があった

突然現れた人影に驚いた
よく見ると、それは鹿だった
昨日の夜、山小屋の裏で

悲しそうに鳴いていた鹿だろうか
きっと仲間とはぐれてしまったのだろう

落ち葉と赤土の枯沢はまるで死の世界だった
生きているものの気配がまったくない

わたしにはお似合いの場所だと思った

倒木を踏み越えようとして
躓いて手を着くと 

そこには苔が生えていた
とても温かい

水分を含み緑色に輝いている

朽ち果てた倒木がその命を支えているのだ
そこは死の世界などではなく
生と死が共存する完璧な世界だった

自然と涙が溢れた
わたしは来た道を引き返していた
もう一度、生きてみようと思った


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