「丹頂鶴」
丹頂鶴を探してあなたと列車に乗った
列車は雪の湿原を走った
列車の中は寒く
肩を寄せ合いながら窓の外を眺めていた
鹿の親子が
深い雪に足を取られながら走ってゆく
自然の中で生きる動物の逞しさを知った
わたしたちは逞しさとは程遠く
繊細で傷つきやすかった
二人でいなければ
いまにも壊れてしまいそうなくらいに
誰もいない駅で降り
あてもなく丹頂鶴を探し歩いた
コートのポケットの中で
かじかんだ手と手を握りあっていた
雪の湿原を夕日が赤く染めはじめたころ
遠くから丹頂鶴の声が聞こえた
わたしたちは雪の中を走った
丹頂鶴が二羽、湿原の中で羽を休めていた
まるで愛を語り合うように鳴いていた
やがて丹頂鶴は翼を広げて飛び立ち
夕日の中に消えていった
あのころ
あなたと見るものすべてが美しかった
それはいまも変わらない
変わったことがあるとすれば
あのころと比べ
二人とも少しは逞しくなったことだろうか
親鹿の愛を知ることができたから
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