「ウイルスとの闘い」

高熱にやられ
節々は痛く
頭痛も激しかった
体がウイルスと闘っているのだ
もうそれほど若くない彼は
そんな自分の体が頼もしかった

胸の病気を患ったことのある妻が
ウイルスに感染したとき
自分の命にかえてでも妻を救いたい
思った

彼は神に祈った
明確な宗教は持ってはいなかったが
彼は誰よりも深く神を信じていた
だから祈ったところで、彼女の運命が
かわるとは思っていなかった
しかし、祈らざるをえなかったのである

看病のかいもあって妻が快方に向かって
いるところに、こんどは彼が感染したのだ

この順番、このタイミングで感染したことに
彼は感謝した
神がいつでも人間のそばにいることを感じた

医者には普通の風邪と変わらないといわれていたが、
このウイルスで友人を失っていた彼には、死に対する恐怖がまったくないとはいえなかつた。むしろ恐かった。
しかし、負ける気はしなかった

彼は手で塩をつかみ氷にふりかけ、溶けにくくくして、氷のうに入れた。水は入れなかった。
それを頭の下には入れず、左の脇の下にはさんだ。そして水につけたあと、よく絞って冷蔵庫で凍らせておいたタオルを首にあてた

ウイルスと闘う準備はできていた。あとは蒲団にもぐって、ひたすら大人しくしていればいいのである
熱は40度を超えていた。

(これはフィクションです)

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