「雪山の友情」

雪山に入る
前日に降った雪は深く
登頂を諦めた人が次々と
引き返してくる

樹林帯を抜け
稜線に出てから先は
進めないという

行ってみると
そこから先に足跡はない
振り返ると
雪をかぶった灰色の山々が
遠くまでつらなっている

山頂はもうすぐ
手の届くところにある

腰まである
深くて柔らかい雪に膝をつき
四つんばいになって
膝で雪を踏み固めながら進んでいく

汗まみれになり
体力は限界に近づく

これ以上は無理と諦めかけて
山頂を見上げると
逆光のなかに人影が見えた

ロープで繋がった数名がいる
反対側から山を越えてきた人たちだった

雪を掻き分けていくと
やがて道はひとつになった

見知らぬらぬ者同士に友情が芽生えた
数少ない言葉を交わし
互いに礼を言いあって別れた

山頂への迷いはもうなかった


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