「ウイルスとの闘い(三)」

  このウイルスが蔓延しはじめたころ、多くの人が亡くなった。
しかし、 感染した人間が直ぐに死んでしまってはウイルスも生き延びることができない。そこで弱毒化するらしい。その間にワクチンが開発されたり、集団免疫を獲得したりして、致死率は下がっていく。
   だか、あまりにも多くの命が失われてしまった。過去のパンデミックの教訓がいかされなかったこと、国家間の連係がスムーズにいかなかったこと、政府の対応の悪さなど原因をあげたら枚挙にいとまがない。
  しかし私は、犬死にした人間は一人もいないと信じたい。一人ひとりの人間の生に意味があるように、一人ひとりの人間の死にも意味がある。
   このウイルスが流行りはじめたとき、私はひとりの友人を亡くした。
そのことにより、周囲の者たちは、感染予防に気を付けるようになった、彼は、彼が愛した多くの友人の命を救ったのだ。
そして私もまた、彼によって生かされている人間の一人なのだ。

(これはフィクションです)

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