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【書評】コンビニ外国人(新潮文庫) 芦沢健介著

おすすめ度 ★★★☆☆
読んでほしい層 20代半ば~30代
ジャンル 社会


コンビニで働いている外国人について、彼らがどういった目的で日本に来て、なぜコンビニで働いているのか。その裏にある法の不備、黒いビジネス、我が国日本を脅かす深刻な労働力不足について、簡潔ながらも分りやすくまとめられている。

日本国は国連の定義に のっとるならば世界第四位の移民受け入れ国家である。この事実は意外と知られていないのではないか。それもそのはずで、自民党は一貫して移民政策を現在まで認めていない。なぜならドイツでメルケル氏が党首辞任に追い込まれた最大の理由が移民政策であったように安倍内閣、自民党にとっても「取扱注意」な議題でもあるためだ。

それでも外国人労働力なしで日本社会は成り立たない程に超高齢化社会へと突入している。つまり、外国人労働者は必要だが移民とは認められない、という二枚舌とも取れる状況が長きに渡り続いているのである。そうした矛盾点をつくようにブラックビジネスが横行し、法の歪から外国人留学生の人権が侵害されていると著者は説く。

著者はこうしたギャップに潜む問題点に地道な外国人留学生へのインタビューで一つ一つ丁寧に紐解いていく。丁寧に綴られる文章は著者自身も何が正しいのか、自問自答しながら見えない答えを一歩々々追い求めているようにも映る。

入管法は現在開かれている臨時国会でも大きな争点の一つ。改革は待ったなしだ。外国人労働者の権利と保障、そして国民が安心して生活できる社会を確立するためにも、私達日本人一人一人が現実を理解し建設的な議論を進めていく必要がある。本書はそうした問題を考えるきっかけとなりえる良書である。すべての世代に幅広く読んでいただきたい。本書を読んでから現在行われている臨時国会に目を向け耳を傾ければまた違った見方ができるはずだ。

一方でコンビニで働く外国人は外国人労働者全体の数%とマイノリティであることは理解しておく必要がある。つまり外国人労働者に纏わる問題を包括的に理解するには本書だけでは不十分であるということだ。私を含め読者は本書を出発点としてさらなる理解を深めていく必要がある。

最後に、本著は外国人受け入れに積極的な自治体の取り組みとそこで生活する住民のインタビューで締めくくられる。既得権を主張し合うのではなく、前向きに新たな道を探していくことこそが共存に向けた第一歩なのかもしれない。

なかむ

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